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今日はなにいろ?

最近読んだ本 「武器よさらば」

2008-06-27 13:25:43 | 読書感想文
「武器よさらば」ヘミングウェイ
今、話題の新訳シリーズ。
ヘミングウェイは初めて。
こんなにも読みやすい文章を書く作家だとは思わなかった。
文豪って簡単な文章でもわざと回りくどい表現をして、素人を煙にまく…と言うイメージがあったのだ。
ヘミングウェイは新聞記者だったそう。その時「余計な修飾語は使うな、特にオーバーな形容詞を使わないように」と指示されていたらしい。

私の好きな作家たちはみな、上手な修飾語を使い、素敵な形容詞で文を表現し、「たとえば~」という言葉を使って、その時の様子や状態を見事に表現する。
そう言う作家が上手い文章を書く作家だと思っていたのだが、ヘミングウェイは極端に言えば、それらの一切を省いた最小限度の言葉で、表現している。
考えたら、そう言う文章を書く人が本当に文の上手い人、ってことになるのかも知れない。

タイトルからして、バリバリ戦争小説だと思っていた。
もちろん、戦争が舞台。第一次世界大戦下、志願兵としてやって来たアメリカ人の青年が主人公だ。
が、戦争の悲惨さやら逼迫した状況は感じられない。
むしろ、これが戦争?と言う感じすら受ける滑り出し。
飲んで、女と遊んで、お喋りして。そんな毎日。
そこにキャサリンと言う女性が現れる。看護士見習い。主人公の青年は最初、それほど、彼女を真剣に愛しているようには思えない。遊びみたい。
休暇後、戦況は一気に悪化する。
主人公も大けがを負い、入院する。そこにキャサリンがやって来て二人の愛は一気に燃え上がる。
戦争はますます悪化し、二人は逃亡する。スイスでひっそりと逃亡生活を送る二人。つつましいながらも幸せな日々を送るのだが…。
思いも寄らぬ出来事で、さっと幕を下ろす。
最後も余計な修飾語も形容詞もない。
だからこそ、こみ上げる悲しみは大きい。
戦争小説と言うより、恋愛小説だった。