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今日はなにいろ?

朗読者 ベルンハルト・シュリンク

2009-06-24 09:56:32 | 読書感想文
いやはや、前回記事をアップしてからまる一ヶ月以上経っている。
放置ブログだよ、まったく…。
本を読んでないわけじゃない。
前から気になっていた「深海のYrr」を読んでいるのだが、これ、長編。しかもかなり読み辛い。劇的な内容なのに、ダラダラと書かれているので、読んでいて飽きてきて(汗)

6月19日に「愛を読むひと」を観て来た。
この映画「涙した~」とか「感動した~」とか宣伝文句が踊っていたので、さぞや感動する映画なのだろうと思ったのだが、観終わった後、微妙。
よく分からないところがあって、これは原作を読まなくては、と速攻で本屋に向かい、その日のうちに読了(そんなに長くないし)

映画を観て疑問に思った部分。
なぜハンナは自殺したのか…。
映画ではマイケル(原作はミヒャエルと言ういかにもドイツ人っぽい名前)が冷酷に接したから、と、見えたのだ。
マイケルは彼女のために朗読して、テープを送った→これ、感動(カセットテープのラベル、数字とあわせて、●印で順番を表していると言うところも、心に響いた)
ハンナは彼のテープを聴いて、文字を覚えて、手紙を出した→これ、感動。
確かにこれは泣けるし、感動した。
が、ここからちょっと「あら?」
ハンナから届いた手紙に何の感情も表さない、無表情のレイフ・ファインズがアップになる。
さらには、引き出しに詰まった彼女からの手紙。これをぞんざいに扱うマイケルのシーン。明らかに迷惑しているような表情。
うーん、マイケルは彼女に立腹している?
確かに彼女は戦犯。彼にそれを隠していた。彼の前から黙って消えた。それによって、マイケルは心に大きな傷を負い、その後も同年代の人と上手に付き合えない。
だったら、なぜ彼女にテープを送ったんだろう。
これじゃまるで、自己満足のためにやったとしか思えない。

で、釈放が決まったハンナにようやく面会に行くわけだけど、その時の態度がこれまた冷たい。
ハンナが出した手を社交辞令上握った程度でさっと重ねるだけだし。
しかも彼女の犯した罪に言及するようなことを口にするし。
そして、その直後、ハンナは自ら命を絶つ。
映画はそう言う描き方。マイケルの冷たい態度に絶望したんだろうと私は思ったのだが。

原作はどうかと言うと。
確かに久しぶりに会ったハンナに犯罪のことを言及している言葉がある。が、これは、いろいろ話し合ったあと、口にした言葉で、映画のようにそれだけを口にしたわけではない。
しかも、ミヒャエルは心からハンナの出所を喜び、出所後住む場所やら、仕事やら心配してあげている。
さらに、ハンナの自殺はミヒャエルには全然関係ないことだった、と言うことが読み取れる。
これには、ほっ。
で、これが重要だと思うのだが、彼女は字を覚えてから、ナチ関係の本を読んでいたということ。
「刑務所に入ってから、死者がやってきた。裁判の前なら、それを追い払うことは出来たのに~」と言うハンナの言葉。これが大きい。
ハンナは自分がしたことの大きさに、命をもって償ったのだ。

映画はマイケルの怒りを通して、ナチの犯した罪を裁いている。そして原作はハンナの絶望で、罪を描いている、ってことなんだろう。

原作がある映画は、「原作が良かった」とか「映画が良かった」とか、一方的な感想になるのだけど、この「朗読者」は映画でも本でも、どちらもそれぞれの良さがあったと思う。