Color

今日はなにいろ?

最近読んだ本 「死神の精度」

2008-04-29 10:24:23 | 読書感想文
最近日本の作品と言えば伊坂幸太郎ばっかり読んでいるような。

「死神の精度」の死神はゾッとしない。
むしろ愉快だ。
とぼけているわけではない。天然。
だから余計愉快。
たとえば
「年貢の納め時」
と言われて
「年貢制度は今もあるのか」
と聞き直している。

高級なステーキを「うめぇ」と食べている男に
「死んだ牛はうまいか」と聞いたりしている。

「これは」「やばいくらいに」「うますぎる」
と、肉を食う男の真似をして
「これは」「やばいくらいに」「うますぎる」
と人参を食べる(この文章のところでは吹き出してしまった。電車の中だったというのに)

彼が現れてから人間は1週間後に死ぬ(彼が「不可」と言わない限り。おおよそにおいて、彼は「不可」と言わない)
死にゆく人間の1週間の物語。なのに悲しみはない。むしろからっとして明るさまで感じる。
どうせ死ぬなら彼のような死神と1週間過ごしてみたい、とさえ思えてくる。

なぜ死神が現れるか。病気とか寿命以外。いわゆる突発的に人が死ぬ時、彼らが現れる。それらは地球に増えてしまった人間を調整しているからで、選ばれた人間に理由はない、そうだ。
裁判員制度で選ばれるみたいなものか(ちょっと違うだろう)

最近映画になったが、死神を演じたのは金城武。かっこいい青年という設定なので、これは適役なのだろうが、本を読んでいて思ったのは死神のとぼけぶり(とぼけてない、天然なのだけど)これは阿部寛だなあ、と。
ただ20代の青年というのは無理があるかも(阿部ちゃんも40男になってしまいましたから)

最後の「死神対老女」
これにはちょっとした仕掛けがあって、驚かされる。
ミュージック好きの死神に音楽を聴かせるシーン。
「今時CDって言うのも凄いでしょ」と言うセリフ。
何度も読み返した(CDじゃなかったら、何で音楽を聴かせるって言うの?)

ふーむ、なるほど。
この6話からなる短編集。
実は同時代ではなく、時が移行している。
死神はいつ何時でも青年に化けられるのだ、と言うのがさりげなく主張されていることを知る。