バイオの故里から

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尿細管上皮細胞を利用したバイオ人工腎

2006年08月23日 | 医療 医薬 健康
Bioartificial Kidney Using Tubular Epithelial Cells

斎藤明(東海大学 医学部 腎・代謝内科 教授)

 腎臓代替治療である間欠的血液透析は濾過機能を不完全に代行するが,尿細管の代謝機能は全く代行していない。したがって,腎不全患者は多くの合併症に苦しんでいる。そこで,中空糸膜内面に尿細管上皮細胞の単層を形成して,腎不全患者血液濾過液をその内腔を通し,水分や有用物質を代謝,再吸収させ,より完全な腎臓代替え治療の確立を目指した。先ず,種々の尿細管上皮細胞と人工膜の接着能や増殖能を検討した。そして,porcineの近位尿細管上皮細胞を膜面積 0.4m2 のpolysulfone中空糸膜に生着させ,水,Na,グルコースなどの能動輸送能とその持続期間などを評価した。次に,物質の輸送能を向上させるために,LLC PK1細胞に水チャネルの1つであるaquaporin‐1遺伝子導入をして細胞膜へのタンパクの発現を亢進させ,水輸送能が2~3倍に増加することを確認した。ヒト近位尿細管上皮細胞HK‐2を用いてマトリックス非coatingのpolysulfone,polyimide,ethylene vinyl alcohol copolymer(EVAL)各膜への接着・増殖能を検討した結果,polyimide, EVAL膜では,collagenなどのcoatingなく,直接接着・増殖することが明らかとなった。現在,初代ヒト近位尿細管細胞を遺伝子技術を用いて可逆的な不死化をさせ,治療に必要な大量の細胞を得る技術を確立している。

【目次】
1. はじめに
2. バイオ人工腎臓システムの構築
3. 近位尿細管上皮細胞を中空糸内面にコンフルエントに生着させたバイオ人工尿細管の開発
3.1 人工膜への尿細管上皮細胞細胞形態の定量化の接着・増殖と細胞接着モジュールの能動輸送能の研究
4. ヒトの腎臓細胞を利用したバイオ人工腎臓の開発
4.1 ヒト近位尿細管上皮細胞利用の課題
5. バイオ人工腎の今後の展開
6. おわりに
月刊バイオインダストリー 2006年9月号

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