『わるいやつら』第1話を録画視聴。冒頭から米倉涼子さんの腹上馬乗り心臓マッサージ、上川隆也さんの呼気顔面フゥ~、小島聖さん男の車に乗り込むなり貪るようにズボン前開放…と、客の生理的感覚にズンズン来るポイント満載。
月河は米倉さんの“クチに苺詰め込まれ顔”で、次回からも見ようと決めました。詰められた瞬間、苺の赤色以外全面モノクロに。もろ95年の『沙粧妙子・最後の事件』での薔薇詰め死体を思い出させます。インパクトありすぎなこのカット、先々への伏線でしょうか。
米倉涼子さん、今作は『黒革』『けもの』のヒロインのような“野心剥きムキ”ではなく、仕事はまじめだけれども恋愛には低体温、どこか他人に心を閉ざして生きている女が、色悪の院長に「しょうがないなぁ、この人」ノリで次第に嵌まって行くという、言わば“巻き込まれ型”悪女な点がなかなか新鮮です。他に幾らでも人生の選択肢ありそうな若いきれいな女性が、重労働や汚れ作業を、表に感情を出さず愚痴もこぼさず、てきぱき淡々とこなしている姿には、別にウラはなくても、一抹の殺気が漂うもの。「一生続けられる仕事と思って看護師を選んだ」というナレーションがありましたが、画面上で語られない過去の人生で、豊美には“一生続けられる仕事=報われない仕事”という悟りがあるのかもしれない。こういう“悪ではない暗部”をどう演じるか、向上著しい米倉さんも真価が問われるところです。
冒頭、急患搬入で戸谷院長を呼びに走った豊美が自宅玄関のガラスを掌でバンバン→中から戸谷の掌がバン!とか、戸谷(←情事明け)の車の窓越しのやりとりから「朝飯まだだろ、付き合ってくれないかなぁ」「眠くて倒れそうです」「あっそ、悪かったね、おやすみ」→閉めかかったウインドウを豊美の手がグッ!あるいは悪友・下見沢弁護士と戸谷の断層撮影室での会話など、ガラスを使って人物の心理的綱引きを表現する演出センスも小憎い。
上川さんが外科医姿でやる気無さそうに手術台に向かっているシーンでは、「…お久しぶりですね」と財前教授の亡霊が現われたらどうする!とか、朝市で魚食って「先生(お腹の)調子最近いいんですか?」の後は「ラクトミン」じゃなくて“キャ”の付くアレだろ!など、サービス過剰かと思うくらいわかりやすいツッコミどころもたっぷり。正月早々には一生信長でいいと思えた上川さん、エロエロむんむんではない、ゆるーく自堕落な、母性本能くすぐりタイプの女たらしも実にうまい。他の女たちと違って、豊美は金づるにはなり得ないだけに、彼女への関心が“悪事の幇助と隠蔽に利用するだけ”なのか、それとも…という展開になってくるとしたら、ますます楽しみです。
ただ今作、清張シリーズの過去2作とは違って、「ワルだけど敵がもっと巨悪だから、ヒロイン頑張れ、捕まるな」と視聴者が自然と思えるようなお話ではないのが若干心配。それにもう夜の街の話でも、日本海でもないのに画面が確信犯的に暗いのなんの。『けもの』の鬼頭寝床シーンで味をしめたのか、天井から俯瞰のショットも多用しすぎな気がします。