イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

笑は笑顔

2009-03-04 17:05:22 | 特撮・ヒーロー

ヒーローの造形と言えば、今期は何と言っても『侍戦隊シンケンジャー』でしょう。いやー、年明け、公式プレサイトで初めて見たときは、「こっ、こんな、へのへのもへじみたいなヤツをどうやって“カッコいい”と思えというんだ」と一瞬脱力。次の瞬間、失笑でも冷笑でもなく、純粋にただ笑ったものです。

だって顔面“”ですよ。両サイドのチョンチョンが目で、タテに一本真っ直ぐな部分が鼻筋で、フタマタに分かれてるのがクチと思って見れ、ってことでしょ?

”は上の横棒が眉で、下の横棒は一本で二つの目。で、フタマタがやっぱりクチ。“”“”なんかは真ん中タテ一本がアゴまで届いてますから、その両サイドのフタマタは名探偵エルキュール・ポワロかサルバドール・ダリ画伯ばりのヒゲに見えるんですよ。で、“”だけなぜかクチが横一文字。

こういう造形が企画として通った背景には、携帯コミュニケーションにおける顔文字の普及、百花繚乱があると思って間違いない。無機的な記号や符号を並べて、人間の顔及び顔面での意思感情表出に見立てるということに、若い諸君を中心に抵抗がなくなっています。

まぁ、気を取り直してよく見直すと、黒い文字を白で縁取ったり、画ごとの太さを変え角度を工夫するなどして、“”が眼光鋭い若侍の顔に、“”が凛々しいボーイッシュガールの顔に、“”がけなげな頑張り娘の顔、“”がキュッとクチ結んだ一本気できかん気の少年の顔、“”が乙に澄ました“俺おシャレ”野郎の顔に見えなくもないよう、デザイン担当さんがかなり涙ぐましい試行錯誤、知恵を絞ったあとがある。

そうこうするうちに先輩『炎神戦隊ゴーオンジャー』の本編後に予告が流れるようになり、♪チャンバラ チャンチャンバラ のテーマをバックに動いてちゃっちゃと斬りむすんでいるのを見ると、「アレ?全然ギャグ戦隊っぽくないし」「笑い抜きで観られるかも」と思うようになってきたんですね。

12幕は、おもに“水”の流ノ介(相葉弘樹さん)の頑張りと言うかナイス空回りで「おもしろいしかわいいし、結構カッコいいわ」にガツンと振れ、3幕で“木”の千明(鈴木勝吾さん)と、変身後走り跳びまくったスーツアクターさんのおかげで、ほぼ「これだけカッコよければ、顔が少々アレでも気にならない」に漕ぎつけたのみならず、アヤカシ・ロクロネリの腕攻撃をアンティシペートするため“火”マスクの下で目を閉じる丈瑠(松坂桃李さん)の場面に至って、「おぉこの仮面、いい!強そう!」と180°感じ方が変わってしまいました。

プレサイトのスチール一枚→アクション→台詞と人間性→劇中演出と、ドラマとしての描写が一枚また一枚と重なるにつれ、静止画ではどうかと思われた造形でも魅力が増して行く。なんだか製作側の意図にまるごとホイホイ乗せられている気がしないでもありませんが、ドラマや小説味読の醍醐味は、心地よく“乗せられる”“騙される”ことでもありますからね。

但し、ドラマ本編のほうは、3話終了時点で各メンバーの持ち武器と持ちワザ、協働での連続ワザ(=螺旋の舞)などを紹介しましたが、“文字”“言葉”の力を戦闘パワーに変えるという基本設定の本格的な展開にはいまだ至っていません。ここがどんな解釈、バリエを見せるかにいちばん期待しているのですがね。いままでいちばん痛快だった場面は、1話で丈瑠が“馬”と書いて馬が出てきたところでしたね。

その代わり2幕でことは(森田涼花さん)、3幕で千明に焦点をあてて、“シンケンジャーであることの意味、本分”“キャラによるその理解度の深浅”など、おもにメンバーごとの性格の違いや、そこから生じる人間関係を描出するほうに力が入れられていましたね。お話のおもしろさに“嵌まって”、十二分に堪能してもらうためには、やはり主要人物に興味を持って、好きになってもらうのがいちばんの王道ですから、ここまでのやり方は間違っていないと思います。

ただ、比べてはいけないけれども、前作『ゴーオンジャー』よりは、“好きになるために理由が必要”な描写法をとっているなという気はする。ゴーオンメンバーは、3話までは走輔(古原靖久さん)たちスカウトされた3人と、押しかけ自薦で加わった軍平(海老澤健次さん)範人(碓井将大さん)との間に、意識上の距離感や摩擦はあったけれど、“動いてしゃべっているのを見ていれば自然と全員好きになれた”。

シンケンのメンバーの場合、たとえば“ピュアで努力家だから”ことはを好きになった、“反抗的だけど友人には義理堅く、向上心を持ったから”千明が好きになった、という人が多いのではないでしょうか。

もちろん、“最初からいきなり好き”より、“最初はどうかと思ったけど、或るきっかけやいきさつから好きになった”ほうが“好き”度が深くなることは現実の異性関係などでも以下同文ですから、マスクの造形同様、製作陣ワザありと言っていいのかもしれない。

ところで、恒例のシーズン途中から参戦する追加戦士は“何顔”になるんでしょうね。「火水木がいて土がいるなら、金がいなきゃおかしい」という意見は当然あるでしょうね。丈瑠についているじい(伊吹吾郎さん)が“日”下部彦馬ですから、あとは“金”と“月”がいれば一週間のカレンダー成立ですよ。

しかし、顔に“金”ってつけたキャラが刀振り回してるってのも正義のヒーロードラマとしてちょっとねぇ。なんだか、振り込め詐欺とかグレーゾーン金融に気をつけましょうの啓発VTRみたいじゃないですか。画数も、“顔1コ”の面積に入れ込むには多過ぎる。

月河としては顔面“月”のヒーローが出て来てくれると嬉しいけど、左右対象にならないか。麻生太郎さんみたいに、明らかに左右対称でない顔の人でも国のトップにはなれるわけだが。関係ないか。

いっそ、“”“”の兄弟2人追加ってのはどうでしょう。『忍風戦隊ハリケンジャー』のゴウライジャーみたいに。シンケンベージュとシンケンアクア。地味か。

なんだかシンケンジャーの仮面のおかげで、漢字を見るたび「人の顔だったら…」と思うようになってしまった。本当に乗せられやすいなあ。

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