イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

それ以下ランチ

2009-03-16 17:25:10 | 特撮・ヒーロー

『仮面ライダーディケイド』8話、『剣(ブレイド)』世界篇前半は、なんだかおもしろい感じになっていましたな。BOARD(ボード)が国から予算もらってアンデッドを封印する会社になっていて、アンデッド出現!A(エース)出動!まではオリジナルのボードと一緒なんだけど、司令室社員が「アンデッド封印の件」てな稟議書持って社内アタフタ走り回って、経理、総務、社長とハンコ揃わないと仮面ライダーに変身しちゃいけないことになってるのね。出現してから稟議上げるって、どんだけ泥縄な会社なんだ。国から予算下りてるということは、さぞかし美味しい天下り先として、役員会なんかがめつい能なし官僚OBがはびこっていることでしょう。

それはともかく、オリジナル平成ライダー世界の中でも特徴的な“給料取りのサラリーマンライダー”という設定が、やはり『剣』世界篇を書く脚本家さん(米村正二さん)の琴線にいちばん鋭く触れたんでしょうな。確かに、オリジナル『剣』の、他作品と異色な点を、ムリヤリひとつだけに絞って挙げるとすれば、この点かもしれない。仮面ライダーに変身を許されたA級の社員同士、相手を蹴落として自分のランクを上げるために汲々としているというのはオリジナルとだいぶ違うけど、“懐疑と不信、裏切りが渦巻くギスギスした人間関係”とまるめて見れば、オリジナルの、特に前半のダークな空気感のカリカチュアライズとしてアリかなとも思う。

スペードAから最低ランクの2に降格されてしまったブレイド・剣立カズマを演じる鈴木拡樹さんが、撮り方でしょうが角度によってオリジナルのブレイド剣崎・椿隆之さんに驚くほどよく似ている。「元Aのプライドはないのか」とギャレン菱形サクヤ(成松慶彦さん)や黒葉ムツキ(川原一馬さん)に詰られて悔しさをかみ殺す表情など、演技プランもオリジナルを見てかなり盗んでそうです。ここらは監督さんが、オリジナルでメイン監督をつとめた石田秀範さんなので安心して見ていられる。

斜めに右手を上げてクルッとさせる、あの変身ポーズが見られただけでも、我ながらあきれるくらい、テンションがウナギのぼりしますな。改めて、平成ライダーの中でいちばん惚れ込んだ作品はやはり『剣』だったということを再度自己確認。カズマ鈴木さんには、できれば髪の色を整えてから撮影に臨んでほしかったけれど、“そこらのフリーター上がりの駆け出しが、あれよあれよと成り上がって、調子に乗ってる”感じを出すために、あえてあのままにしたのかもしれない。

ギャレン菱形サクヤの成松さんは、変身前の私服時のコーディネートとか、なんとなーく人がよさそうで、強いのか弱いのかわかんないところがオリジナルの、天野浩成さん版橘朔也に似てなくもない。せっかく“Aランチ”お食事シーン、厨房シーンもあったことだし、「これ、食ってもいいかな?」って言ってくれてもよかったのにね。

後半でA昇格、レンゲルバックルを与えられたアラレちゃんメガネのムツキくんは、先輩に叩くクチのでかさが、スパイダーアンデッドに支配されたブラック化期の、北条隆博さんのオリジナル睦月をちょっと髣髴させます。カズマ先輩が自分を気遣ってくれたために降格されたのに、ビタ一文感謝の言葉もない外道っぷりが上等。

ディケイドがアンデッドと戦ってるそばでブレイド、ギャレン、レンゲルが内輪揉め、そこへ伝説のライダー・カリスがうぉーーーっと走ってくるなんざぁ、ちょっとサービス過剰な気もしないでもありませんが、まあ歌舞伎の顔見世みたいなものと思えばいいのかな。

いままで士(井上正大さん)ディケイドたちが通ってきた世界、前半で“ライダーの力がこんな感心しない方向に使われています、使われそうです”を提示、後半でディケイド、ユウスケたちとライダー適合者らが意思疎通し協調してそれを是正、退治すべきものは退治して、鳴滝(奥田達士さん)「この世界もオマエに破壊されてしまった…」というのが流れでした。

TVの前の小さいお友達、「パパはリストラ攻勢に耐えて働くサラリーマン」という子が多いと思うのに、ヒーローに「サラリーマンになる気はない!」って断言させちゃいましたが、組織とか、雇い雇われ給料もらいという一見夢のない社会も、裏を返せば(表を返せば、かな)人と人との信頼、1人ではできないことを団結して可能にするチームワーク、上が下を教え導いたり、世のため人のために貢献したりという崇高な要素から成っている。アンデッド封印という職務より、目の前の人命を助けるほうを優先して降格された、不器用だけど真っ当な正義漢のカズマと士たちが協力して、最低の会社を最高の組織に変える話が、次週語られるのではないかな。

……オリジナル『剣』と言えばもうひとつ“組織崩壊”“組織トップが悪ラスボス”もキイワードだったので、若干イヤな予感…いやワクワクな予感もしますけど。

ボード社長(累央さん)に「協力してほしいなら予算を」と要求されて「なるほどねぇ~」と納得してしまうユウスケ(村井良大さん)が今話もいい味を出していました。厨房でカズマがサクヤたちに嘲られて「言われなくてもこんな会社出て行く」と癇癪を起こしかけたところへ「それじゃただの負け犬だろう!それでいいのか」とにょっきり現われたり。前のシーンで社長室で顔合わせただけなのに、どこの誰ともわからないはずなのに「……(考直)」とたじろいでしまうカズマもいいヤツだ。

ヒーローとして士のわかりにくいところ、ひとひねりふたひねりあるところを“真っ直ぐ”に翻訳して表現するのがユウスケの役目。給料上げてもらってご満悦の士に「染まりすぎだろ」って言うときの手は完璧にツッコミ型になってました。

どうなんだろう、カッコいいけど言動が極端で、直球で“いい人”“見習いたいヒーロー”タイプではない士と、カッコいい変身戦闘シーンは少ないけど気だての良さやポジティヴさにあふれているユウスケ、人気が半々ぐらいだとちょうどいいんじゃないでしょうか。やはり士派がちょっとは上回ってるぐらいのほうがおさまりがいいかしら。

K(キング)に特進して厨房のチーフを任されたけど、味見をお願いされても「なんだ、このコジャレた味は!」とケチャップとソースと醤油しか要求しない士くん、舌が完全にお子ちゃまなところが可愛い。要するに『ディケイド』は、少年(心が少年である者)の成長物語でもあるんですね。

アンデッド造形ファンとしては、バッファロー、エレファント、カプリコーンと“ツノキバ系”しか出てこなかったのがちょっと物足りなかった。オリジナルで画面に登場しなかったパラドキサの造形も、出されてみると“まあ、あんなもんかな”という感じでした。

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