イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ガイなチカラ

2010-04-03 19:43:49 | 朝ドラマ

『ゲゲゲの女房』、略して呼ぶときは“ゲゲゲ”か、“ゲゲ”になるのかなんて先日ここで心配してみましたが、ウチでは早くも「だらず」で定着していますね。安来地方独特の言い回しなのか、出雲が舞台だった『だんだん』ではあまり聞いた覚えがないけれど、大杉漣さんがツバ飛ばしながら言い放つ「だらず!」が結構キますよ。

ひたすら家父長的に、スキなく暴君なんじゃなくて、彼なりに女性軍にさりげなくリスペクトもあり気をつかっているらしい気配の混ぜ方が大杉さんうまいですね。5話で布団をかぶってハンスト中のユキエ(←実は身代わりを頼まれた布美枝)に、一転おだやかに、見合いに応じるよう諭すうち、だんだん花嫁の父の気分が出てしまい、ホロッときそうになって苦しまぎれに「起きんか!」と布団をはいだり、今日(3日)放送の6話で、ユキエが帰宅して家出の詫びを言っても、叱りつけるではなく妻ミヤコ(古手川祐子さん)の看病を続ける場面も良かった。

何としてもお姉ちゃんが帰って平和な家に戻ってほしいあまり、横山(石田法嗣さん)に無理なお願いをした布美枝の、子供ながらの精一杯の奔走もさることながら、“お父さんとお母さんが思いやりあって幸せな家族”の姿が、ユキエさんの心をやわらかくしたに違いありません。

自分の母親のことを“お父さんに叱られてばかりで、台所にしか居場所のない人生”と思ったのは一面的な見かたで、母が父を頼りと思い父も母を大切にいたわっているとわかれば、その両親が勧める縁談をきらう大きな理由がひとつ消滅します。

非婚化・晩婚化が言われて久しい現代の日本ですが、若い人たちに結婚意欲を持たせるためには、お上の政策や媒体を使った洗脳なんかより、“両親の、夫婦としての幸福さを見せる”以上の活性剤はないと思います。特に女の子は、幼時~思春期に母親が“お父さんと連れ添ったことで辛い思いをしている”と感じたら、まず結婚したがらないでしょう。

1週の全6話で、布美枝主語でしっかり家族との関係を描いただけでなく、

12話で見知らぬ世界との触れ合い(=自分の感じたことを「見えんけど、おる」と肯定してくれる祖母、少年水木しげるとの会話)

3話と4話で自分との闘い(=盆踊りを楽しみにしていたけれど「電信柱」とからかわれるのはイヤ→祖母の励ましで「ノッポでもくよくよせん」と乗り越えて踊る)

5話で姉と父との板挟み(=外の世界にあこがれて父の言うなり結婚を拒むお姉ちゃんを、自分には無い強さでカッコいいと思うけれど、お父さんも怖いだけではなく大好きだし、何より家族みんなが仲良くいてほしい)

6話で家族ではない第三者への気づかい(=自分の懇願をいれて見合いを断り、理由は言わずにおいてくれた横山さんは、卵を譲ってくれたり往診の医師をおぶって連れてきてくれるほどのやさしい人なのに、破談のせいで悪者にされて申し訳ない)

……と、幼いなりの人間力の成長がちゃんとステップを踏んで描かれていましたね。自分を包む外の世界、芽生えはじめた自意識、家族、家族以外の人。しかも布美枝とかかわる人たちが、徹頭徹尾拒否シカトでもなく、さりとて甘々でもなく、それなりのイベントを経てから彼女の長所や個性を知り、リスペクトし愛でてくれるようになるという“ストーリー”があった。

比べては悪いけれど、振り返れば「世界につながる編集者になる!」なんてのは、唐突だわ、そこに持って行くまでの下地作りもスカスカだわでまったくお話になりませんでしたな。

7歳布美枝を“妖精見習い”のような菊池和澄さん、10歳を“娘になる前の蛹(さなぎ)”のような佐藤未来さんと、達者な子役さんを2人、贅沢にバトンタッチして紡いだだけのことはありました。特に未来さんは、「横山さんはいい人、ごめんなさい」と姉や祖母たちに打ち明けて謝る場面は“本泣き”ボロボロで本当に引き込んでくれましたね。自分が叱られているわけではない、自分の悔しさや自分の恥ずかしさではなく、ただただ人のために申し訳なくて泣けてくる純粋さがよく伝わってきました。

ユキエお姉ちゃん役・足立梨花さんの花嫁姿が美しかった。週中、お裁縫上手という設定で、たぶん手作りということなのであろうワンピースやブラウス、幅を絞っておシャレに工夫したモンペなど、衣裳がひとつひとつお似合いでした。若い頃の天海祐希さんに、りょうさんを微量混ぜたような日本風涼やか美人の足立さん、少女期の終わる今週でお別れは残念。『だんだん』のいけずの涼乃役・木村文乃さんでも思ったけれど、昼帯に来てくれないかな。

青年横山さんももう来週からは登場しないのかしら。I miss 横山。人徳というか、布美枝ちゃんがある意味彼に惚れ込んでくれたおかげで別嬪のユキエさんと縁結び成ったわけですから、布美枝の後半生にもいっぱいかかわってくれていいと思うのですが。「目が悪いもんで」と言っていたから、乙種か丙種合格といったところか、兵役には徴られずに済みそう。農家長男の嫁は重労働だし舅姑さんともうまくやっていけるか心配ですが、横山さんならユキエさんを大切にしてくれるでしょう。もし来週以降も登場なら、眼鏡くんが似合いそうな吹越満さんか、長谷川朝晴さんか、いっそ及川光博さんはどうかな。

……農業後継者が激しく似合わないな。

コメント
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