イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

特殊関係

2010-04-18 20:12:48 | 夜ドラマ

昨年の『外事警察』と再放送の『再生の町』以来すっかり期待枠になっているNHK土曜900ですが、17日スタートの『チェイス~国税査察官』はいまいちでした。

ひとことで言って、ばらけ過ぎ。脱税の辣腕一匹狼プロ村雲(ARATAさん)と、元敏腕デイトレーダーの歌織(麻生久美子さん)が8年前からのわけありで、レンタカー会社の脱税案件のダミーに使われたことから復縁…という設定はまるごと要らなかった。

せっかく国税庁春馬(江口洋介さん)ら8階内偵組と“嫁入り”先9階実施(=ガサ入れ)組の刮目の大活躍を冒頭に持って来ているのだから、春馬VS.村雲の男の頭脳戦で一貫すれば良かったのに、仕事にかまけ家庭を顧みなかった春馬が、やむなく単身で送り出した海外旅行で愛妻(木村多江さん)を失って、その事故機が村雲の顧客である資産家ドラ息子(斉藤工さん)に節税商品として売りつけたレバレッジドリース物件で…という結びつけ方も牽強付会、余計そのもの。

主人公である査察官の、妻だ子だの私生活の部分を、仕事上の宿敵たるべき相手と接点持たせてしまったら、摘発のために何やってくれても“結果私怨”の匂いを帯びてしまう。

現代日本のTVの、シリアスなドラマのプロデュースや脚本を担当する人たちの念頭のどこかに「“家族”“家庭”をどげんかせんといかん」という引っかかりが常にあるだろうことは想像できます。しかし“もののついで”みたいに本題と結びつけるのはどうかと思います。

「脱税摘発に心身を投じている春馬は、家庭がなおざりで健気に尽くす奥さんもひそかに不満、それを見ている娘も父親不信になりかけているのでした、はい議事進行」ではダメなのかな。

村雲にしても、歌織と過去の経緯なんか無しにして「余命僅かな旧友のディーラー仲間を仕事に利用かたがた巻き込んだら、その奥さんが稀に見るマネーセンスの人で一発で惹かれました」「奥さんのほうも、かつて嘱望された証券トレーダーだけど病気で零落した夫の看取りが終わったら、夫の昔なじみらしい勝ち残り組の男と知り合い、裏で動いていたと知って、別の夢を見つけました、はい議事進行」でいいんじゃないのかな。そのほうが情熱恋愛としてピュアで胸を打ちます。“勝利を渇望する者”の匂いを、初対面で嗅ぎつけ合う同士。

とにかく人物のリアリティや厚みを出すため、あるいは状況の切実さを担保するための補強材に“家族”や“(過去の)恋愛沙汰”を使うのはやめてごしない。安来入ってしまった。

村雲が、それこそ水木しげるさんばりに左手義手になった経緯が明かされるところまでは追尾するつもりですが、ストライクゾーンにすこーんと来るドラマって、贔屓枠でも滅多にないものなのですね。

コメント
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