イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

結末は劇場版で(←嘘)

2010-03-05 23:53:55 | 夜ドラマ

先月17日リリースの『不毛地帯』オリジナルサウンドトラック、ネットショップで試聴もできるようになったので一応視野には入れていたのですが、ドラマ最終話終わってから買うか買わないか決めるつもりでした。やっぱり見せ場、BGMの聴かせ場って、最終話に集中しますからね。

ところが先日、店頭で偶然“呼ばれた”んですかねー。手にとって見てアレ?何か薄いぞ?と思ったら、これカーボンオフセットCDなのでした。

通常のフルサイズCDが通常入っている透明プラケースが無く、再生紙製のジャケ兼用紙ケースの扉が袋になっていて(←説明になっとるのか)、その中に三つ折りの本ジャケが入っている。もちろん扉を開けた見開きのディスク台もプラ製ではなく、何て名前かわからないけど再生素材の、ポケットに端を差し込む体裁になっています。

二酸化炭素排出カット、エコアーティストの先頭に立つ坂本龍一さんがメインテーマを手がけられた関係でしょうね。当地の原始林だかにも教授視察来訪の報道が12年前にあったし、とりあえずCD棚の中で厚みを取らないのは好ましい。…というわけで(『ゴセイジャー』関連の支出が右肩上がりの財政状態にもかかわらず!)即決購入帰宅。

その坂本龍一さん作曲のメインテーマ『FUMOCHITAI』は巻頭M1と、巻末M17には坂本さん自身のピアノヴァージョンで収録されています。毎話次回予告の冒頭で流れる木枯しのようなストリングスと、凍河にヒビが入るようなホーンの音がソレだった模様。

このメインテーマの主題を、音楽菅野祐悟さんが引き継ぎながら、10分半にわたり交響詩的に展開するM2『不毛地帯 ―生きて歴史の証人たれ』が白眉でしょうね。時の流れ、歴史の足音のもとひそやかに、したたかに脈動する“命”の凛烈さを感じさせる名曲です。

さらにEDで毎回流れているトム・ウェイツの『Tom Traubert’s BLUES』の良さも、フルコーラス聴いてみて再認識します。あの雪の収容所跡の光景に、なぜかブルース。オンエア始まった初期は、ミスマッチ…と思いましたが、ここはやはり透明な美声ヴォーカルではなく、清も濁もあれもこれも併せ呑み過ぎてこんなんなっちゃいましたみたいなウェイツ親父のしゃがれ声でなければいけないんだね。カーボンオフセットにしろ、せめて対訳つきの原歌詞は載せといてほしかったですね。

個人的にはM3『近畿商事』、M9『未知の世界』が好きです。試聴の時点でひと目ならぬ“ひと耳惚れ”。壹岐の過去や心情はちょっとコッチにおいといて、とにかく昭和の、高度成長期のビジネスサクセスストーリーにふさわしい爽快さ。何と言うか、ふわふわ、ほんわかと感覚的にではなく、具体性のある、マテリアルな、米のメシ食って上がるような上昇感があるんです。新築超高層ビルの鉄骨がにょきにょきと組み上がっていくような、とでもいいますか。M9の出だしは携帯の着信音にしたいですね。

最近、劇伴のアルバムを聴いていて、単体でもいいなと思える曲にはなぜか音色、アレンジなど昭和の匂いが濃厚なことが多い。『不毛』のような戦後から始まるお話が原作の作品ではなくても。

そういう曲でも作曲、制作は若い世代、菅野さんなどは1977年生まれ32歳で、キャリア的にも完全に平成、と言うより21世紀の音楽家さんだったりするのですけれど。

若い世代ほど、聴いて育った音楽の記憶の貯金は昭和の遺産。そして聴くほうにも、“昭和センサー”みたいなものが、耳の中にあるのかもしれませんね。

ドラマや映画の映像・ストーリーとともに、その音楽を味わうということ自体がすぐれて昭和的なエンタテインメントだからかもしれない。

『不毛』サントラについて話を戻すと、EDの歌詞の件も含めて、ライナーノーツぐらい添えろよと思わないでもない。愛想がないぞと。TVサントラってプロデューサーさん、作曲家さん演奏家さんにドラマ本編の監督さん、時には主演俳優さんまでこぞって、写真入りで丁寧なノーツを寄せている盤もあれば、演奏クレジットすらろくすっぽ入ってない手抜き盤もあって差が激しいのですが、いくら“不毛”地帯だからって、こんなトコまで荒涼とさせんでも。収録したらジャケが厚くなって、二酸化炭素排出量が増えると危惧したのか。

単純に値段が高くなるからか(税込2,800円)。

まあ演奏時間7336秒、中身の濃さに免じて見逃しますか。

蛇足ですが音楽をこれだけ重厚にしつらえたら、ドラマ本編のほうもいま少し腹応えが…という気もします。序盤から、さらっと行っていいところと、さらっとじゃいかんだろうと思うところのバランスが良くないきらいはあったし、サルベスタン鉱区落札後、とみに駆け足になってしまいました。4日放送の18話なんか壹岐、イランと東京の間でほとんど“どこでもドア”使ってましたから。あと残すところ11日放送の最終回のみ。本当に収拾つくのか。

壹岐がシベリアに戦友の遺骨拾いに行ったら、そこからどわーーーっと石油が噴き出して「異国の土となった仲間のおかげで大富豪だ」…………さすがに無理か。

コメント
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