絶賛放送中『仮面ライダーW(ダブル)』、変身ヒーローものであり昭和伝来の石ノ森章太郎さんブランド・“仮面ライダー”シリーズであると同時に、今作は“探偵モノ”でもあるという仕立てになっているので、音楽も探偵モノ風、あるいは探偵モノのパロディ風にまとめられていて、シーンに応じ楽曲により、“ガチ”と“パロ”の境界線を自在に往復する、非常に愉快な作りになっています。
音楽が中川幸太郎さん。OPで毎回流れる主題歌のほうが、耳にする頻度からいっても印象が強いので(こちらは作曲鳴海シュウヘイさん)、最近まで看過していたのですが、2005年1月期の昼帯ドラマ『冬の輪舞』の音楽の中川幸太郎さんだったではありませんか。これはノーマークで、ちょっとびっくり。
調べてみると中川さん1969年生まれ41歳、劇伴方面では、実写ドラマよりもアニメ特撮のほうで担当・参加作品が多いのでした。
お父上、ご兄弟には日本を代表するホーン奏者がぞろぞろおられ、弟の中山英二郎さんがNHK朝ドラ『瞳』で、OP曲でもお馴染みになったあのトロンボーンをフィーチャーされている。『冬の輪舞』も『瞳』も月河の劇伴ライブラリーの愛聴盤です。世の中狭いもんだというべきか、DNAが強力と言うべきか。
『冬の輪舞』はドラマ本編は終盤バタバタしてしまいましたが、伊豆の海岸ロケのイメージからか(毎話、OP映像と、本編&次回予告後の提供スポンサーベースが伊豆の海浜風景だったからかも)、音楽も海あり波あり崖ありな曲調で、フルオーケストラ、特にストリングスを強調してメロドラマティックなしつらえになっていました。
一方こなた『W』は痛快なくらいジャズィーな、紫煙ただよう都会の地下室的なピアノやビブラフォンのソロを要所で前面に出して、“カッコよくて当たり前”なヒーローアクションにふさわしい。上にも書いたように、探偵モノという“元ネタ”があるので、作曲家さんとしても作ってて楽しかったことでしょう。
昼帯ドラマの音楽でお名前を知った作曲家さんたちも、他の映像作品の劇伴でクレジットを見ないうちにすぐ「あ、この音はあの人っぽい」と気がついて、クレジット見たら案の定だったということもあり、逆に今作の中川さんのように、半年聴いてて(クレジットも見てて)気がつかずにいて、ある日突然「そっそう言えばあの…」と遅ればせに驚くこともある。
2004年の『愛のソレア』や06年の『紅の紋章』を手がけたのは寺嶋民哉さんですが、昨年NHK土曜ドラマ『再生の町』を再放送で観たときは、誰のどんな場面でだったか忘れたけどいきなり、コレもう『ソレア』のアノ人以外の曲なわけがない!と思ったものです。別に色っぽい場面やお涙なシーンではなくても、惜しみなくたたみかけるノスタルジックで切迫感を秘めた旋律また旋律。最終話、めでたしめでたしの盆踊りの曲も氏の作らしい。おかげで観ているほうも、終わる頃にはなみはや市が故郷のような錯覚に陥りました。
一方、最近、NHKのスポーツSP『ミラクルボディー』のEDを、先月のバンクーバー五輪関連の連続放送で初めて聴いたときには、ん゛ん゛ん゛ーーこのエッジの立ち方は…とはなったけど、『孤独の賭け ~愛しき人よ~』の澤野弘之さんの曲とは、ブライアン・ジュベール篇でクレジット見るまでわからなかった。知ってから改めて聴くと、上昇感と速度感の表出のハンパなさにおいて澤野ミュージック以外の何ものでもなく、そうとしか聴こえなくなっている自分に気がつく。そもそも音楽には音階があり、テンポというものもあるのだから、“上昇”感や“速度”感があるのは当たり前じゃねぇかと言われそうですが、そこがこの人の作品、どこか違うんだなあ。当たり前、だけではない。聴いてるだけで助走一番、トリプルアクセルとか跳べそうな気になってくるもの(←無理)。
アクセルで思い出しましたが『仮面ライダーW(ダブル)』、OP主題歌のほうも、近々カラオケで挑戦すべく現在特訓中だったりします。わはは、誰だ引いてるのは。ドン引かれても歌うときは歌うかんね。
♪ また誰かが 突然ドアを叩く 事件の予感 ウェルカムなんちゃら~この街には 涙は似合わないぜ のAメロは、『特捜戦隊デカレンジャー』の『デカマスターNEVER STOP』の ♪ ひとかけらの情けもない むごさの果て 尽くす者よ そのむごさが命取りだ オレの牙に火をつけたら もう火傷じゃ済まない…のくだりと似ている、と言うより、歌ってて勝手に混じることがある。♪ …闇に潜むキーワード見つけ出そう まで来ればもう混じらないんですが。
W(ダブル)だけに、混じるんじゃなくダブるのかな(………フィリップ風に倒)。