４月１日

千尋（神戸大学１年）が昨日塾にやって来たとか。あいにく俺は教科書改訂にあたって新しい問題集の買出しに走っていた。千尋には・・・会いたかった。
愛（東京大学１年）も昨日、上京しているはずだ。
龍神（慶応大学１年）だけがこっちに駐屯してはブラリと姿を見せる。
「妹にはきつく言っておきましたから、またシゴいてやってください」　さすがにそろそろ入学式も近い、これがこ奴の最後の捨て台詞になるやもしれぬ。

午前１時に塾を出発。おんぼろエスティマ、重量オーバーであえいでいる。
奥さんと娘たち３人が大阪の奥さんの実家へ帰るのだ。そしてもう一人、アキラが千里山の下宿へ一時戻る。
運転手の俺と計６人が乗り込んだエスティマ、163号をひたすらに西へ西へ・・・。

千里山へ向かう途中、レイコ姉の家の前に停車・・・午前４時過ぎ。明日の２日に出る広告をポストに投函する。ミスター・ポストマンはアキラ。そして関大前の喫茶店『ベン・シャーン』前でも投函、再びアキラの出番だ。
『ベン・シャーン』のママ・マチコさんはこれからも有加里（関西大学１年）が世話になるはず。
そしてアキラを降ろす。
今ではオシャレな名前に変わってしまったが、昔は千里荘・・・前田さんも住んでいた、星合さんも住んでいた、余頃も住んでいた、懐かしい懐かしいマンション。そして前を走る緩急線の反対側にはユタカの壊れかけた文化住宅があった。それが今も壊れかけたままで建っている・・・俺は自分の下宿を逃げ出し、ユタカの部屋で居候してたっけ。

長柄橋から天神橋筋へ。さらに松屋町筋を南下して通天閣近くの奥さんの実家へ・・・午前４時40分。

午前５時、再び三重を目指して奥さんの実家を出発。
ユタカの未亡人・・・俺にとっては旧姓・前田さんの住む今津北のマンションに寄って広告を投函。当然、今回は俺がミスター・ポストマン。

20年前、初めて出す塾の広告を携えて俺は前田さんの住む東京へと向かった。俺がつくった広告を一瞥、「今イチ、パワー不足やな。こんなんがオマエの理想か」「こんなんではアカンか」「ああ、もっともっとや。パア～ッといけや」
大学の１年先輩。酒がやたら好きな割には酒癖が悪く、マージャンがヘタなくせに大好きで、口が悪いけど切なくなるほど優しい・・・そんな前田さんと知り合った時には、彼女はすでに婚約していた。

前田さんのことは奥さんもよく知っている。今回の広告を持っていく話をすると、「やはり逃した魚は大きかったわね」とチクリ。「いやいや、それから大きな魚を捕獲することができて・・・」　フォローしたつもりが、空気は冷やりとしたまま・・・。

午前５時30分、薄暗いなかでマンションの郵便ポストを探す。・・・１４０６号・・・山本・・・あった。
俺は久しぶりの広告をそっと投函した。

午前８時30分に塾に戻る。
午前10時、さつきと最近入ったさつきの妹が登場。俺は冬眠明けの熊のようにベッドから起き上がる。そして健斗も登場・・・４月１日、新しい学年の第一日目が始まった。

甚ちゃんが登場、続いて森下。甚ちゃんには珍しく？小奇麗な服装（アンタには言われたくなってか）、今日は仲良し３人組で愛知県の篠島のホテルで一泊の旅。もう一人の同行者は30分遅刻の舞。
甚ちゃんが一番の年長、２歳年下の森下、さらに森下より３歳年下の舞・・・考えてみれば奇妙な取り合わせ。しかし、こんな旅行ができるのが羨ましいね。

「みんな行っちゃうよな。大学生は下宿へ。そして甚ちゃんたちは篠島へ一泊旅行や。健斗と啓介はディズニーランドやし、瞭は金沢の親父さんとこやで。結局は俺だけが塾に残されるねん」
そう俺が情けなさそうに言うと、さつきの妹が声をあげて笑った。絶好のタイミングで笑う、この妹は勉強ができるやろな。

午後からは夜からのディズニーランド行きの免罪符にと啓介が平方根を勉強している。遅れて雄一がやって来て、高校の因数分解といきたいところだが、まずは中学の因数分解から復習。

朝の睡眠が１時間強のこともあり、午後６時から仮眠。由梨花に起こされる。手に持っているのは大きなユニバーサル・スタジオ・ジャパンのお土産。明日にあさってあたりは健斗と啓介のデｘズニーランド土産も期待できるし、明日は森下・甚ちゃん・舞コンビの・・・やっぱ、干物を中心とする酒のアテで生徒にはフィードバックできへんかな。

新中２で１学期の数学の残った範囲をまさぐっていく。寝起きもあってか、真奈に計算のミスをつっこまれたりする。
新中２は来週から英語に突入する予定だ。

４期生の横山がやって来る。
「先生、今日から新学期の祝いですわ」と焼酎の吉兆・宝山を机の上に置く。
「弟の結婚が決まっておめでとう」「本当に一時はどうなるかと思たわ」
４月22日、弟の朋希が松阪肉の老舗・海津のお嬢ちゃんと結婚する。
「前に弟、彼女連れて挨拶に来てくれたで」「そうか、でも性格のいい子やろ」「ホンマやな。俺のおもしろくもないジョークにころころ笑ってくれたよ」

龍神が姿を見せる。
「今夜、出発します。いろいろお世話になりました」と言っては敬礼のポーズ。「あとで妹が来ると思うんで、新高１といっしょに英語をやったってください」
最後の龍神が出発・・・。