弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】「人間将棋」

2019年08月20日 08時25分20秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
今日は幾分暑さがやわらいでいる@湘南地方です。

本日はほぼ終日外出…お天気が持てばよいのですが。

さて、今日はこんな記事

(山形新聞Onlineより引用)
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「人間将棋」商標に待った 天童市出願も特許庁認めず

天童市が出願していた春の風物詩「人間将棋」の名称の商標登録について、特許庁から認められなかったことが17日、市への取材で分かった。同名イベントが他県でも広がりをみせていることが主な理由で、対応が後手に回った形だ。市は別名称かロゴでの再出願を検討している。

市によると、「人間将棋」と銘打ったイベントは、天童のほか全国3カ所で行われている。兵庫県姫路市は2015年から、岐阜県関ケ原町は17年から毎年開き、岡山県倉敷市も去年秋に初めて催した。1956(昭和31)年から64回の歴史を誇る天童とは比べようもないが、「第三者に登録され名称を使用できなくなっては…」との危機感から商標登録に踏み出した。

去年6月に出願。既に登録されている類似名称がないなどの報告を弁理士から受けていた。しかし、本年度に入り、特許庁から送付されたのは「拒絶理由通知」。同名イベントが他自治体で開かれ「天童に限った名称ではない」と指摘されたという。

(以下略)
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(引用終わり)

現状のステータスをJ-Platpatでみてみると、記事で書かれている「拒絶理由通知書」が発せられたのが最後の記録(発送日:2019年4月5日)。
記事内容も踏まえると、意見書での反論も試みることもしていないものと思われる(延長しない限り、対応期限は40日。サイト反映へのタイムラグを考慮しても、対応していれば何らか記録が残っていると思われる)。

昔と違って今は(今年の出願からでしたっけ?)、拒絶理由の内容もWeb上で閲覧できる。
なので見てみると、理由は大きく2つ。

1)3条1項柱書(1区分内で多岐に亘る指定商品/役務を指定)➡これは、補正なり事業計画書なりで容易に解消可能
2)3条1項3号(品質等表示)
  “人を駒に見立てた将棋”ほどの意味合いを理解させるところ、指定役務「興行の企画・運営又は開催」に使用しても自他役務識別標識としての機能を発揮し得ない


記事によれば「ロゴマークで出し直す」など次善の策を検討中とのこと。
種々考えがあってのことだとは思うのですが…

そもそも3条懸念があることは最初から想定されていたと思われる。
であればなぜ反論を試みないのか? は、かなり疑問。

記事では“「天童に限った名称ではない」と指摘された”としているがこれは正確ではない。
仮に他の地域で同様の名称を銘打ったイベントをまだ行っていなかった時期に出願していたとしても、同様に3条拒絶は発せられていた可能性が高い。
3条1項3号は、“既に他人も使っているから”ではなく、“取引者/需要者が品質表示と認識するから商標として機能しないから”という拒絶理由。
「64回の歴史を誇る」ならば、その点を強く主張して3条2項適用を求めればよい。
他の地域との協議を取りまとめることだって(容易ではないとは想像されるが)可能性はある。
“他自治体から『本家は天童』とリスペクトしてもらっている事情”があるのなら、この点を証拠と共に主張することだって考えられる。
(※もちろんことの順序としては、イベントの進め方のノウハウも含めてパッケージとしてライセンスするなど、
  出願より前にここの部分の調整を取付けておくべきだった、とは思うけど)

なんというか、もったいない気がするんですよねぇ…まだリカバー可能な状態ではないかな、と。
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