おはようございます!
だんだんと朝晩が肌寒くなってきた湘南地方です。
さて、あっという間に月末。
やることやらねば、なのですが、気になった記事があったのでコメント。
(朝日新聞デジタルより引用)
==============================
タダ読み誘導サイト運営者ら、著作権法違反容疑で逮捕へ
インターネットで海賊版漫画をタダ読みできるリンク先を集めた国内最大級のリーチサイト(誘導サイト)の運営に関わるなどしたとして、大阪など9府県警の合同捜査本部が31日にも、堺市の元大学院生の男(22)ら数人を著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いで逮捕することが捜査関係者への取材でわかった。
このサイトは2008年に開設された「はるか夢の址(あと)」。今年7月に関係先が家宅捜索を受け、閉鎖された。「名探偵コナン」や「ワンピース」などの人気漫画の海賊版リンクが多数掲載され、知られた存在だった。
捜査関係者によると、サイトを運営していた元院生らは、漫画を違法にアップロードしたファイルのリンク先を海賊版の投稿者に掲載させるなどし、不特定多数の人が無料で読めるようにして著作権を侵害した疑いがもたれている。
(以下略)
==============================
(引用終わり)
記事中の「公衆送信権」について、著作権法上の規定は以下の通り。
(公衆送信権等)
第23条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
著作権は、“第三者に勝手に○○されない権利”という観点で捉えれば良い。
なので「公衆送信権」=“第三者に勝手に公衆送信されない権利”ということ。
ところで本件では、他人のHP等にリンクを貼る行為それ自体を侵害行為と判断している。
(サイトそのものを確認できていないが、形式としてはフレーム埋め込みやサムネイル等ではなくテキストのハイパーリンクと思われる。)
この点当職としては、これまでの規範に照らすとかなり踏み込んできたなぁ、という感覚を持っている。
例えば、大阪地裁 H23(ワ)15245 では、自己のサイト内で外部サイト(動画サイト)へのリンクを貼った行為につき
「アップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,
「****」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「****」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。」
とし、リンクを貼る行為自体の公衆送信、ないし送信可能化該当性を否定している。
(☆一部伏字にしてます。)
もっとも同判決では、著作権侵害の幇助の可能性について以下の通り言及している。
「ところで,原告の主張は,被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼ることで,公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。
しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。」
つまり裏を返せば、「著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らか」な場合には違法性を帯びることがある、という判断でもある。
EUでは、同様の事例について侵害を認定する判決が昨年出ており(例えば福井先生のこの記事は判りやすい。今回の事案にも言及している。)、同業者まわりでちょっと議論にはなった。
このブログでもしばしば多様しているように、リンクはWeb上の便利な表現技法のひとつでもある。
もちろん、今回の事案の「リーチサイト」のように、明らかに悪質なものも世の中にはある。
しかしその取り締まりのために規範の解釈を、文言を著しく超えて行うことは、社会を委縮させる副作用の側面の方が強い。
当職の理解では、どこまでいっても「リンクを貼る行為」=「送信可能化」とは読めない。上記判決も同じ立場だ。
“違法になるかもしれない”表現技法について、通常は謙抑的な姿勢で臨むことになる。
リンク先の適法性についてまで都度確認をする義務を負わされるのは、正直勘弁願いたい、というのが実感だ。
だんだんと朝晩が肌寒くなってきた湘南地方です。
さて、あっという間に月末。
やることやらねば、なのですが、気になった記事があったのでコメント。
(朝日新聞デジタルより引用)
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タダ読み誘導サイト運営者ら、著作権法違反容疑で逮捕へ
インターネットで海賊版漫画をタダ読みできるリンク先を集めた国内最大級のリーチサイト(誘導サイト)の運営に関わるなどしたとして、大阪など9府県警の合同捜査本部が31日にも、堺市の元大学院生の男(22)ら数人を著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いで逮捕することが捜査関係者への取材でわかった。
このサイトは2008年に開設された「はるか夢の址(あと)」。今年7月に関係先が家宅捜索を受け、閉鎖された。「名探偵コナン」や「ワンピース」などの人気漫画の海賊版リンクが多数掲載され、知られた存在だった。
捜査関係者によると、サイトを運営していた元院生らは、漫画を違法にアップロードしたファイルのリンク先を海賊版の投稿者に掲載させるなどし、不特定多数の人が無料で読めるようにして著作権を侵害した疑いがもたれている。
(以下略)
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(引用終わり)
記事中の「公衆送信権」について、著作権法上の規定は以下の通り。
(公衆送信権等)
第23条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
著作権は、“第三者に勝手に○○されない権利”という観点で捉えれば良い。
なので「公衆送信権」=“第三者に勝手に公衆送信されない権利”ということ。
ところで本件では、他人のHP等にリンクを貼る行為それ自体を侵害行為と判断している。
(サイトそのものを確認できていないが、形式としてはフレーム埋め込みやサムネイル等ではなくテキストのハイパーリンクと思われる。)
この点当職としては、これまでの規範に照らすとかなり踏み込んできたなぁ、という感覚を持っている。
例えば、大阪地裁 H23(ワ)15245 では、自己のサイト内で外部サイト(動画サイト)へのリンクを貼った行為につき
「アップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,
「****」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「****」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。」
とし、リンクを貼る行為自体の公衆送信、ないし送信可能化該当性を否定している。
(☆一部伏字にしてます。)
もっとも同判決では、著作権侵害の幇助の可能性について以下の通り言及している。
「ところで,原告の主張は,被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼ることで,公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。
しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。」
つまり裏を返せば、「著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らか」な場合には違法性を帯びることがある、という判断でもある。
EUでは、同様の事例について侵害を認定する判決が昨年出ており(例えば福井先生のこの記事は判りやすい。今回の事案にも言及している。)、同業者まわりでちょっと議論にはなった。
このブログでもしばしば多様しているように、リンクはWeb上の便利な表現技法のひとつでもある。
もちろん、今回の事案の「リーチサイト」のように、明らかに悪質なものも世の中にはある。
しかしその取り締まりのために規範の解釈を、文言を著しく超えて行うことは、社会を委縮させる副作用の側面の方が強い。
当職の理解では、どこまでいっても「リンクを貼る行為」=「送信可能化」とは読めない。上記判決も同じ立場だ。
“違法になるかもしれない”表現技法について、通常は謙抑的な姿勢で臨むことになる。
リンク先の適法性についてまで都度確認をする義務を負わされるのは、正直勘弁願いたい、というのが実感だ。