弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【弁理士の日記念ブログ2024】知財業界での教育

2024年07月01日 05時00分00秒 | 名作シリーズ(笑)
※本日は予約投稿!
 弁理士の日を記念してドクガクさんこと内田浩輔先生が毎年してくださっているこの企画

今年のテーマは、「知財業界での教育」。

まあおよそ教育論をぶてるほどの知見もない身ですので、
自分が受けてきた教育の話からします。

私が知財業界に足を踏み入れたのは2001年のことです…すげー昔だな。
それまで銀行員をやっており、全くカルチャーの違う業界にやってきて色々ギャップを感じたのは事実。

「営業」という概念があまりないこと。”今月の数字をどうやって作るか?”の話を他の所員の方にして目を白黒されたのは良い思い出。
また、チームワークで仕事を進める、という考え方があまりないことにびっくりした。なんて個人主義だ、と。

一方で、法定期限に対する厳格さには驚いた…いや、勿論前職にも期限の概念はあったんですけどね。
書き言葉に対するエグいレベルの厳密さ。

まあ、その業界ごとに流儀はあり、これにフィットする人は生きていけるしそうでない人は無理せず退出した方が良い。
それはどの業界でもそうなのだけれど。
たぶん「教育」って、ある程度その業界の「ワク」に嵌める、という意味合いも少なからずあると思う。
一旦「常識」を受けいれ、それを自分のものとし、発展改善させて他の人に伝授していく。
守破離 の考え方。

その意味で、この業界入って間もない頃に当時の師匠に
机の横で立ちんぼ2時間で自分の作成した書面に赤入れしてもらったのは、
今となってはありがたいことだと思っている。
当時30歳前後。まあ客観的には「大人」なわけで。
「大人」になって教育をしていただける機会と言うのはそんなにない(ものだと当時は思っていた)。
一個一個考え方を身につけていかなければこの業界で生きていけないんだよな、と
半ば命綱に縋るように必死で指導に耳を傾けていた。

「コンテンツ(=中身、知識)」を教える、ということと、「フレーム(=考え方、居構え)」を教える、ということ。
教育というとつい前者に目が行きがちだけれど、実際のところ業界で永らえていくのに必要なのは後者。
前者は、ある意味自分がどん欲に知識を追い求めていけば手に入るけど、
後者は、頭で判っていてもできないこともある。「○○道」のような、生き方に通じるところもある。
で、前者の教えを通じて後者を学ぶ、というのがたぶん一番しっくりくる。
生きていくために必要なのは「パン」ではなく「パンの作り方」だ。

また特に「文章の書き方」は「その人の生き方」とリンクするところがある。
知財業界は、その意味で因果な商売だなと思う。
生き様が、生業に顕れる。

上で「師匠」という言葉を遣ったのは当時勤めていた事務所のボスの一人だけど、
私の場合あれこれある選択肢の中から師事したわけではなく、言うならばご縁と成り行きだ。
でもそれはとても幸運なことだったし、微塵も後悔は無い。
結局、人のご縁は選べるようで選べなくて、でもずっと歩んできた道が何かしら出会いに作用しているんだろうな、としか思えない。

その師匠に繰り返し言われていたのは、
「お前は素直だねぇ。その素直さは大事にしなさい。」
という言葉。
自分の内心としては結構ヒネくれている方だと思っていただけに当時はとても意外だったが、
今となっては何となくわかる。というか、気が付けば言われたようになっている。
思えばあの言葉が、私にとっての一番の「教育」の賜物だったのかもしれない。
師匠も、戦前生まれの、どっしり筋が通っている方だった。

教わったことに自分なりのプラスアルファを付加して後世に伝える。
知財業界への貢献の仕方も色々あるけど、たぶんこれが一番大事なことなんじゃないかな、と思っている。
それは、世間や時代や環境やツールが変わっても多分変わらないこと。
まだもう少し先のことではあるけど、ちゃんとバトンを渡せるように生きて仕事をしていたい、と思う次第である。


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