弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【著作権_記事】「文化的所産の公正な利用」のためには、まずその文化の浸透からでしょ…?

2017年02月03日 08時32分25秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日も空気が乾燥、肌がカサカサ気味…
まあでも、心地よい日差しの湘南地方です。

さて、一昨日くらいから?JAS○ACがお騒がせしている下記のニュース

(以下「@S by静岡新聞」より引用)
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音楽教室から著作権料 JASRACが徴収方針

日本音楽著作権協会(JASRAC)がピアノなどの音楽教室での演奏について、2018年1月の著作権使用料徴収開始に向けて準備を進めていることが2日、関係者への取材で分かった。これを受け、全国で教室を運営するヤマハ音楽振興会(東京都目黒区)や河合楽器製作所(浜松市中区)などは同日、業界としての対応を考えるための連絡協議会を設置し、具体的な対応策の検討に入った。

(以下略)
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(引用終わり)

さて、一個ずつ説明。

[「演奏権」について]
JASRACの主張の根拠は、「演奏権」と呼ばれるもの。

著作権法上、「演奏権」について以下のように規定されています。

(上演権及び演奏権)
第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。


なお「公衆」については定義規定があります。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
5  この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。



[生徒は、「公衆」なの?]
「音楽教室での演奏」が、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的と」しているのか、という点、
疑問に思うでしょう。
普通の音楽レッスンの場合、マンツーマン、或いは少人数での指導でしょうし。
「特定かつ少数」は「公衆」にはあたらないでしょ、と。

この点についてのJASRACの主張の根拠は、
“誰でも申し込めば生徒になれること、また生徒数は全体としてはたくさんいるのだから
 「不特定」であり「多数」である”という解釈との話です(この辺りはちゃんと整理したいところですけど)。

[過去の事例]
実は、過去に同様の事案があり、そのときはJASRACの主張が認められています(名高判H16.3.4。JASRACのプレスリリースがこちら)。
この名古屋の事例は、購入したCDをダンス教室で使う場合にも使用料を払わなければならないのか、という点が争われました。

推測だけど考え方としては、カラオケ法理なんかも考え方としては下敷きになっているのかな。
(「カラオケ法理」=スナック店が客に有料でカラオケ機器を利用させる行為は“客による演奏”だが、これを“店の経営者による演奏”と同視できる、とした法理(説明が雑でごめん。「カラオケ法理」でググると色々でます。))

[私見]
上の引用した記事でも、音楽教室側は「教室は教育目的で、聞かせることが目的とはいえない。」として反発、争う構えを示しているとのことです。
争うポイントとしては、
1)生徒は「公衆」にあたらない
2)「直接見せ又は聞かせること」とは“鑑賞”の意味であり、演奏を学ぶ客体として用いることはあたらない
3)「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り」という法目的に照らして権利の濫用にあたり許されない
といったあたりでしょうか…?
「著作者等」は、自分の楽曲を音楽教室で学ぶ人からお金を欲しいんですかね?
そのあたりの意図をJASRACは汲み取って欲しいと、心情的には思います。



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