弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【意外と】改正著作権法 part2【好評なので…】

2012年10月02日 08時51分45秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
昨日のエントリのせいか、pvが跳ね上がっていた。意外。

今日は、続き。
今日は、ちょっととっつきにくいところで、

「そもそも、改正条文にはどう書いてるの?」という点について。


世間的には「違法ダウンロードの刑罰化」なんて略して言われているけど、
条文の上ではもう少しややこしくて、

“著作権侵害にはもともと刑事罰があるんだけど、
 『私的使用のための複製』であれば著作権の制限がかかり「例外的に」侵害にならなかったんだけど、
 今回その「例外」に「例外」が設けられて、
 『私的使用の目的』であっても、所定の要件を満たす著作物について複製したらやっぱり刑罰の対象になる”

ということになっている。



……まだ、この段階でくじけないでくださいね(笑)



関係ある条文を拾い上げると、以下の通り。

(複製権)
第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。


これから説明することの基礎。
「専有する」とは、要は“勝手に複製されない権利”ということ。
著作権って、この“勝手に○○されない権利”というのが束になってある、というイメージ。
これが28条までつらつらと並んでいる。

とはいえ、いつ何時も著作権の効力が及ぶとすると、
極論すればコピー機も使えない、鼻歌も歌えない、
とても堅苦しい世の中になってしまう。
なので、場面場面に応じた効力の制限規定がある。
今回関係するのは、下記の「私的使用のための複製」。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。


→この規定により、“個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内”での「複製」は権利侵害にはあたらない、
 ことになっていた。


第八章 罰則

第百十九条  著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。


→こちらはもともとある「刑事罰」の規定。
 著作権侵害をすると、強制わいせつとか誘拐とか詐欺とかと同様の量刑が待っていることになる
 (と書くとちょっとミスリーディング?)。

 ☆☆今回新設☆☆
3 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。



→こちらが、今回改正でくわえられた項。
 正直、一読で理解できる人は少ないと思う。

 要件は、以下の通り。
 ① 「私的使用の目的」であること
  =その定義が30条に書かれている。
 ② 著作物は「有償著作物等」であること
  =だから、例えば“テレビ番組の録画”は、原則としてあたらない。
   スカパーとかだと、解釈によるのだろうか?
 ③ 「著作権等を侵害する自動公衆送信」を受信して行う録音又は録画であること
  =平たく言えば“違法アップロード”されたコンテンツをダウンロードすること。
   「録音又は録画」なので、単なる視聴はあたらない(昨日のエントリの通り)。
 ④ 「デジタル方式」の録音又は録画であること
  =だから、例えば“ディスプレイで再生している様子をVTRで撮影する行為”は
   あたらない。
 ⑤ 「自らその事実(=侵害にあたること)を知りながら」の録音又は録画であること
  =当然ながら法の不知は救われない。ここでいう「その事実」とは
   上記②、③について事実を認識していること(という理解で良いと思う)。


所感。

 我々のような商売は、こういう条文を読むのが仕事の前提なので特に違和感もないのだけれど、
 一般の人にひろーくかかわりがある法規制であるにもかかわらず、
 こんな判りにくい規定にしていることって、あまり問題視されないのだろうか??

 昨日、街角でインタビューされている若い人の様子がニュースで流れていたけれど、
 知らないうちに「前科者」になってしまうかもしれないリスクが生じた、という認識は
 残念ながらかけらもない、という印象だったなぁ。


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