最も好きで最も愛した車。
この車のエンジンのフィーリングと分厚いドアーの質感に惚れこみ、男は勿論、彼女も
乗せずただ一人で乗り回すことに悦にいっていた「車が恋人」の様な車だったのに・・。
その数少ない同乗者
My Sweet佐恵子が伊豆スカのしもた屋になったレストランの駐車場で・・・。
凄い風雨の日だった。
彼女が無造作に車を降りようとした瞬間、ヤバイ!!っと思ったけど時既に遅く、
ドアーが暴風に煽られもの凄い勢いで全開して、一瞬でビンジを捥いでしまった。
もうドアーは閉らず、彼女は走行中半身びしょびしょりになりながら泣きそうな顔でドアーを必死に押さえて・・。
それでも未だデートの途中だったから行くべき所に行って、其処で部屋の空調器で濡れた服が中々乾く迄
延々と・・することはして一応服も彼女も回復したけど、彼女を送った帰り道は車はもっと大変。
何しろ半ドアーにもならない状態だから、雨の中、ガムテでは10分ともたず、
包帯で取っ手を椅子に括りつけての超徐行、なんと中伊豆から横浜迄6時間、真夜中というか朝に近い帰還に。
問題のドアー、後日修理に出したけどちゃんとは治らず、
あんなに恋人の様に愛した車だったのにドアーの具合が悪いというだけで次第に愛情も薄れて、
結局新車に乗り換えてしまったけれど、あのセリカGTが忘れられず、新らしい車も愛せなかった。
其れは殆ど失恋と同じ、否、一番愛した女に振られた時よりも後遺症が大きかった気がする。
「気に入っている車には気に入っている女でも乗せてはならない!!」
あの日の教訓は今でもセリカGTとの思い出と共に忘れられない。