前編が「静」であれば、本作の後編は「動」という印象を受けた。セックスを気の向くままに受け入れていた前編から、後編はオーガズムの消失に始まり、再びそれを取り戻すための冒険に奔る。とても面白かった。前編でも確かに感じた、セックスから始まる男の愛が、主人公との結婚という形で結実する。「虎を買うには餌を与え続けねばならない」と、主人公への愛ゆえに、不貞を許す男。しかし、結局は愛よりも快楽にしか生きられない主人公は、日常の幸福を容易に破壊する。意志疎通のできない異人種とのセックス、暴力的マゾヒズムなど、未開の世界でオーガズムを取り戻し、それに溺れる日々を丹念に追っていく。前編の「重大な局面での性的反応」を後編で捉えたかったが、全く手がかりがなかった。で、中盤以降でようやく気付く。主人公のセクシュアリティは正当化、あるいは共感するものではなく、あくまで「異形」であるということだ。マゾヒズムを宗教と結びつけるなど、その筆致はかなり挑戦的。シャイア・ラブーフの抑えた演技や、ジェイミー・ベルの怪演を見て、いいキャリアを歩んでいるなーとしみじみ思う。ラストはフォントリアーのドSぶり(お決まり)が発動される。相変わらず後味の悪さ(笑)。「男ってそんなもの」という安い着地点に決まりそうで自分は嫌いだなー。
【65点】