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スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方 【感想】

2015-05-11 09:00:00 | 映画


今年の劇場未公開映画のベスト候補。作品の優劣よりも「好き」と言いたい映画。

弟の自殺未遂をきっかけに10年ぶりに再会した双子(姉弟)を描く。筆致はポップで軽快なのだが、中身は意外なほどシリアスなドラマだ。

「スケルトン」(骸骨)は、幼い頃に父が2人に贈った骸骨人形に由来する。それは不格好な人形だった。「決して離れてはならない」と父から言われた仲良しな2人は、その父の自殺後、いつしか音信不通で離れ離れになる。父親から多くの欠点の受け継いだ2人は、大人になっても器用に生きることができない。理解ある優しい夫と暮らしている姉は一見幸せそうだが、衝動的に男性と肉体関係をもってしまう「アバズレ」だ。その 病気を自覚する彼女は母親になることを恐れる。一方の弟は、筋金入りのゲイであり、精神的に打たれ弱い。2人とも不完全であり、壊れやすい人間だ。

そんな2人の再会は、それぞれの環境に大きな変化をもたらす。2人は血を分け合った双子であると共に、互いの本音を隠さず打ち明けることができる無二の親友だ。互いの性質を知ったる仲。そこには理解者こそが相手に影響を与えることができるという事実がある。2人の絆の形成は、幼少期から青年期までに遡る。直接的な過去の回想シーンは幼少期の断片的な記憶に留まり、その多くは2人のやりとりによって明らかになっていく。輝ける思い出と、悲しい思い出が鮮やかに浮かび上がってくる。劇中、2人が昔に良くやったであろう、スターシップの「愛は止まらない」の口パクごっこがとても楽しい。2人が仮装して出かけるハロウィーンのシーンも素敵だ。ノスタルジーが涙を誘う。

双子を演じるのは、SNL出身でコメディ映画の印象が強いクリステン・ウィグとビル・ヘイダーだ。本作の2人は今までに観たことのない繊細な演技をみせる。コメディアンが本気を出して演技をすると化けてしまう良い例だ。特にビル・ヘイダーのゲイ役はハマり役で、「モダンファミリー」のパパ役で御馴染みのタイ・バーレルとの秘められた情事がとてもリアルに見えてくる。

「大抵の人間はジタバタしながら、パッとしない人生を受け入れようとしている」
高校生のときに思い描いていた未来の自分はもっと違っていた。当時、運動バカのアメフトのスター選手だった同級生は挫折して悲惨な将来を送るに違いないと思ってたら、幸せになっている。悲惨な人生は自分のほうだった。。。映画で描かれる2人の境遇とはまったく違うのだけれど、思い描いていた過去と現在のギャップについては身に沁みて共感できるものだ。但し、それが不幸であるかといえばそうではない。自分含め、多くの人が現状を受け入れていると思うからだ。
「ベスト」ではなく「ベター」が本当の幸せなのかもしれない。結末の納まりの悪さも印象的で、観る人によってはバッドエンドに映るかもしれない。だけど、本作においてはこの締め方が正解なのだと思う。2人は幸せになったのだから。

【70点】

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