ロメリアーナ


 ロメール映画の思い出を、思い出すままに(だから勘違いも多いかもしれないです)。

 『獅子座』。一文なしで無愛想なパリをしんどそうにえっちらおっちら歩いていたあのアメリカの人、かなり前に亡くなったという記事が出てました。あとで結局本人も一文なしになったんじゃないかなあ・・・と思わせるところが妙。でもかなりの作品に出てるんですね。がんばって、たくさん脇役やって。

 『海辺のポーリーヌ』。パスカル・グレゴリーがサーフボードもって嫉妬の目をぎらっ!とさせたのはこの映画だったっけ。アリエル・ドンバルがいちばんライオンみたいだったころ。

 『緑の光線』。フランス人がバカンスにひとりで放り出されたときの所在無さがひしひしと感じられて可笑しい。
 映画館で見て、ほんとに「緑の光線」が見えたときは感激しました。

 『冬物語』。むかし金沢大でフランス映画を見る会というのをやってましたが、これを見た学生がひとこと、「この女の人、バカじゃない?」と言うのを聞いて、うーん確かにそうだと納得。でもこういうマヌケはフランス人ならやりかねないんじゃないかなあ。社会保障も行き届いてるから、これでもなんとかのほほんと生きれてしまう。「こういうのこそ人生なんだろう」と妙に納得してしまうわたし。

 『レネットとミラベル四つの冒険』。四つの短いシークエンスに分かれてるし、性的にきわどいところもないので、フランス語の教材としてよく使われます。シナリオが教科書になって出版されてました。第一話の最後の方で二人が踊るときにラジカセで流すあの珍妙な音楽はいったいなんなんだろう?

 『クレールの膝』。主役のクレールさんは、ちょっと体つきが固いと思った。そこが単なるすけべえオヤジの視線の物語になるのを防いでいるのかも。

 『友だちの恋人』。自分はmocheだと劣等感もってたブランシュさんが、ラストシーンで愛する人とひしと抱き合うところがほんと幸せそうでハッピー。

 『満月の夜』。パスカル・オジェって素質ありそうだったのにね。この映画で彼女を知ったときには、すでに死んでしまっていた。

 『聖杯伝説』。これの主役をファブリス・ルキーニがやっているというのは、『悪魔の陽の下に』の主役がジェラール・ドパルデューだというのと双璧の趣き深さ。

 『美しき結婚』。冒頭であっけらかんと不倫セックスしているヒロインが真剣に理性的に結婚を追及するところが面白い。ベアトリス・ロマンはアルジェリア生まれだけど、この映画の主役はインドのポンディシェリ出身という設定だったと思う。これも面白い。

 ・・・こう思い出してみると、ロメールってわたしにいろんなこと教えてくれてますね・・・



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エリック・ロメール逝去


 Eric Rohmerが亡くなりました。
 ヌーヴェルヴァーグの映画監督のなかでわたしがいちばん親しみやすさを感じていた人です。
 彼の映画はエロくて、おしゃべりで、いかにもフランスという感じでした。

 心からご冥福をお祈りします。

 たしかに彼はヌーヴェル・ヴァーグの監督たちの中でも年長でしたけど、早死にしたトリュフォーは別として、そろそろヌーヴェル・ヴァーグも完全に歴史上の存在になっていく時期なんですね。

 
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懐かしい雪 新潟(2)


このエントリーから続きます)

 新潟国際情報大学でアルジェリアの民衆音楽と現代史についてお話しさせていただいたのはもう昨年のことですが、ご報告がまだでした。続けますね。

 みずき野キャンパスはかなり郊外にあるのですが、しっかりした建物で、IT設備も申し分ないように見受けられました。学生さんたちは余裕がある感じで、楽しそうでした。

 階段教室横の窓からは、今冬初の雪が見えました(↑)。なんとなく懐かしさを覚える雪景色でしょう?
 お話をした日に新潟を離れましたが、翌日の夕方に金沢でも雪が降り始めました。

 わたしを呼んでくださった小山田紀子先生は、ハレドの最初の日本公演を聞きに行かれたという歴史的ライ・ファンです! マグレブ研究の権威で、マグレブ研究会や『マグリブへの招待』などでご一緒したご縁から、新潟でお話をさせていただくことになりました。

 びっくりしたのは、平山征夫学長がわざわざわたしのお話を聞きに来られたことです(学長は元の新潟県知事です。すごいですね)。
 学長さんはエンリコ・マシアスがお好きだということで、アラボ=アンダルス音楽に触れたついでに少し彼の声を聞いていただくことができてよかったです。彼はシャンソンの人気歌手であると同時に、アンダルスの一派マァルフの伝統を継ぐ人なのです。

 帰りに新潟駅までわたしを送ってくれた学生さんは、卒論でライをやりたいということでした。やりがいのある、いいテーマです。頑張ってください。

 ライを扱うということはイスラム、アラブ、植民地主義、ポスト植民地主義、第三世界、失業、原理主義テロ、フェミニスム、移民、統合などなど、現代世界のほとんどすべての主要問題に目を配ることになるのです。

 ライで卒論を書くというので、わざわざ金沢のわたしのところまで話を聞きに来た東大生がおりました。彼女はその後、朝日新聞に入社して活躍しています。

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知の多様性

(前のエントリーのコメントから続きます)

 フランス極東学院 Ecole francaise d'Extreme-Orientは、東洋各地ですごい重量感のある研究を地道に、長年にわたって続けている機関です。そこに蓄積されている知の質と量は、ものすごいものです。
 ただ、基本的にフランス語によるものです。

 上記のサイトにも当然ながら英語バージョンがあります。
 そのうち、蓄積されている知の本体も英語化されていくことになるのではないでしょうか。
 その方が世界の人にとってアクセスしやすいものだから、どうしてもいつかはそうなると思います。
 そしてそうなると、フランス語を苦労して学ぼうというモチベーションはまた薄れることになるはずです。単純に考えれば。

 しかし、わたしはどうしてもワールドミュージックの現状から考えてしまうので、こういう「知の多様性」に関係する領域では、フランス語がなんらかの形で存在感を残すような気がするのです。

 なぜそういう気がするか、その理由を簡単に言うとどうなるか、考えました。

 こんな言い方ではどうかと思います:

 英語の親玉国といっていいアメリカ合衆国が、本当の意味で多様性を追求してしまうとバラバラになる国だから。そしておそらくそういう方向性を持つことはない国だから。



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来月カンボジア行きます

 金沢大学のプロジェクトの関係で、来月駆け足ですがカンボジアに行って参ります。
 
 旧仏領の国カンボジアも、一般社会レベルではもう圧倒的に英語の需要が大きいのですが、学会のレベルまでいくとまだフランス語の方が幅をきかせているそうです。まあ世代の交代が進めばアカデミックなレベルでもすべて英語という時代が来ると思いますが。
 ただフランス語は文化の領域になると独特の存在感を発揮します。つまり米英の性格的弱点と繋がった英語の弱点をついてある程度の存在価値を確保するすべを知っていると思います。
 現地のフランス語教員連合の会長さんにも会えることになりましたから、そのへんどのように考えるかお聞きしてきたいと思います。

 とにかくわたしにとって未知の国(タイは行ったことありますが)。フランス語事情だけでなく、新しい音楽の息吹も探ってきたいところです。

 あんまり時間ないですけど。

 
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フォーデルが、やっと!


 もう、出すのやめちゃったんじゃないかと思い始めていたFaudelのニューアルバムBled Memoryが、やっと彼の公式サイトFNACのサイトに載りました。1月18日発表予定だそうです。

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No man's land


NO MAN'S LAND 創造と破壊@フランス大使館行ってまいりました(一月末まで。そのあとは存在しなくなります)。

 解体する大使館でアートをやってしまうとは、さすがフランス。
 でもこの建物、ずいぶん古くなってましたね。
 フランス式の T 型穴の電話差し込み口なんかあったりして。

 入口のところで、放射能レベルを検出するガイガーカウンターを貸し出す、という「やつ」(インスタレーション?)をやってましたが、看板に「『カ』イガーカウンター貸出中」とあるので、横にいた係のお兄さんに、これでいいの?と問いただしてみました。

 すると彼は「あっ、間違いでした。すみません」とすぐマジックペンで「゛」を書き入れてくれてしまいました(↑)。

 でもわたしとしては「絵画ーカウンター」というシャレかなと一瞬思ったので、ちょっとがっかりしたのです。

 このあと来る人は、もうあの「カイガーカウンター」という文字が発してわたしが受け止めた独特の雰囲気を味わうことがないんですね。わたしまでです。

 なんかこの一連の流れ自体が、一回限りのアートのような気もします。
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あけましておめでとうございます


 金沢は大雪のお正月でした。

 これは実は昨年のクリスマスの写真です。晴れた空の端から端まで、一直線に伸びる飛行機雲。こんな見事なのは見たことありませんでした。

 こんなふうに大空をまっすぐ進む人生を歩みたいものですね。

 新春の言祝ぎを申し上げます。
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