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預言者伝55

2013年12月12日 | 預言者伝関連
マッカ征服
ヒジュラ暦8年ラマダーン月

171.マッカ征服のための下準備:
  イスラームの教えの確立と信徒たちの教育におけるアッラーの御命令が完遂されると、アッラーは信徒たちの心に畏敬における試みを課し給いました。代わってクライシュの心の杯は不正、敵対、真実の否定と、アッラーの道の遮断、イスラームとその民との争いで溢れていました。アッラーはその使徒と信徒たちをマッカに勝利者として入れさせ、偶像崇拝と多神崇拝と嘘の言葉の穢れからマッカを清めさせ、マッカに戻すことを望み給いました。そのすることで、マッカが人々が不断に集まる場所となり、そして安全な場所となり、かつてそうであったように祝福された、あらゆるもののための導きとなるようになるためです。

172.バヌー・バクルとクライシュが協定を破る:
  アッラーはその実現のために原因をいろいろと準備し給いましたが、クライシュも気付かないうちにそれに貢献することになります。じつはそれに導くことになるある事件が起きるのですが、まさに諸天と大地の軍はアッラーに属するとしか言えません。
  かつて、フダイビーヤの協定ではアッラーの使徒(祝福と平安あれ)側に入り彼の庇護を受けたい者は者は入ることができ、クライシュ側に入り彼らの庇護に入りたい者は入ることが出来ました。そこでバヌー・バクルはクライシュ側に入り、フザーアはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)側に入りました。
  実はバヌー・バクルとフザーアの間には古いいざこざと、歴代から続く争いがありました。その歴史はイスラーム誕生前に遡ります。イスラームの到来が両者の間を隔てたことで、人々はイスラーム没頭しました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)とクライシュが休戦状態に入ると、両者は争う者同士に戻ってしまいました。昔からの復讐を達成できるこの機会を逃すまいと躍起になったバヌー・バクルの一団は、水場にいたフザーアの人たちを待ち伏せして襲いかかり、殺し合いが起きてしまいます。
  そこでクライシュは武器によってバヌー・バクルを援助し、クライシュの貴族たちは夜には隠れて彼らと共に戦いました。彼らはフザーアを聖域まで追いやったところでバヌー・バクルが次のように言いました:聖域にわれわれは入ったぞ。クライシュは言いました:今日、神はいない!バヌー・バクルよ、さあ仇をとるのだ。今後、こんなチャンスなど巡ってこないだろうから。

173.アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に助けを求める:
  フザーアの人間、アムル・イブン・サーリムはマディーナにいるアッラーの使徒(祝福と平安あれ)のところへ赴いて、詩を読みあげました。彼はその詩の中で協定について語り、彼に援助を求め、クライシュが約束を破り、確定していた協定に反したこと、水場に自分たちを待ち伏せして襲って来て、祈りに没している人たちを殺したことを知らせました。それを聞いたアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言いました:アムル・イブン・サーリムよ、援助しよう!

174.証拠の確立:
  アッラーの使徒は知らされた出来事が事実であるかの確認のため、またクライシュに言い訳の余地を残さないようにするために、彼らの許に男を使いとして送り、彼らに、1.亡くなったフザーアの人たちの血の代償を払うこと、2.協定に反するという大きな罪を引き受けて人々(バヌー・バクルの中のバヌー・ナファーサの人たち)をフザーアに送り込んだ者を協定から外すこと、3.バヌー・クライザに攻め入ることの受け入れ、の3つから罰を選ぶよう迫りました。そこでクライシュの指導者のある者たちは、彼ら(バヌー・バクル)に攻め入ることを受け入れると答えました。以上によりクライシュは責任を免れたように見えたつまり、彼らに対する証拠が確立されたことになりました。

175.クライシュ、協定の更新を試みる:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はかの知らせを受け取った際、人々に言われました:《アブー・スフヤーンが契約を結ぶためにそして期間を延ばすためにやってくる》。そしてそれが実際に起きました。クライシュは自身が犯してしまったことを恐れ、自分らの一部の愚かな者たちが言ってしまった厳しい返答を後悔しました。そこでクライシュは契約を結び期間を延ばすためにアブー・スフヤーンをアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に送りました。

 176.親、子よりも預言者を優先する:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)のいるマディーナに到着したアブー・スフヤーンは、その娘であり預言者(祝福と平安あれ)の妻でもあるウンム・ハビーバを訪ねました。彼がアッラーの使徒(祝福と平安あれ)のマットレスの上に座ろうとすると彼女はそれを畳んでしまいました。アブー・スフヤーンは言いました:娘よ!マットレスよりわしを優先したのか、それともマットレスをわたしより優先したのかわからないのだが?ウンム・ハビーバは言いました:いいえ、それはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)様のマットレスです。あなたは多神教徒でよごれていますのでアッラーの使徒(祝福と平安あれ)様のマットレスの上に座ることを私は好みません。彼は言った:アッラーにかけて、おまえはわしのもとを去ってから悪さにやられてしまったようだ。

177.アブー・スフヤーンの当惑と失敗:
  アブー・スフヤーンはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に会いに行って話しかけましたが何の返事も彼はされませんでした。続いてアブー・バクルのところに行ってアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に話してもらえるようにお願いしましたが、私はしない、と断られてしまいました。続いてウマル、アリー、ファーティマにも同じことをしましたが、誰も答えてくれず、「事はそれよりも重大だ」と皆が言いました。アブー・スフヤーンはする術なく途方に暮れて、ファーティマに言いました:ムハンマドの娘よ!おまえのその息子-指を指した先にいたのはまだ幼いハサン・イブン・アリー-に人々から庇護してもらえるよう命ずることはできないか。そうすれば彼は死ぬまでアラブの長でいることだろう。ファーティマは言いました:アッラーに誓って、この私の息子は人々から庇護するほどに成長していませんし、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に対して誰かを庇護することもありません。アブー・スフヤーンのこの当惑ぶりと途方にくれた様子を見たアリーは彼に言いました:あなたが必要とするものは何もないと思うが。あなたはバヌー・キナーナの長であるが、立って、人々からの庇護を求めて、自分の土地へ帰りなさい。アブー・スフヤーンは言いました:それは私には不要であると思うか?アリーは言いました:アッラーに誓って、そうは思わないが、それしかあなたに見つけられないのだ。アブー・スフヤーンはマスジドの中に立って、言いました:人々よ!わしは本当に、人々からの庇護を求めた!そしてラクダに乗って帰って行きました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P329~332)

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