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舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

シェイクスピア歴史劇の魅力を探る~叙事詩としてのヘンリー五世@清泉女子大学

2018-06-30 22:05:32 | シェイクスピア

シェイクスピア作品に深い造詣を持つ、うさぎ先輩とともに清泉女子大学の一日講座「ヘンリー五世」に参加してきました。講師は同大学の准教授である米谷郁子先生です。

ここはかつての学び舎と近いにもかかわらず、一度も足を踏み入れたことがありませんでしたが、かつては旧仙台藩の藩邸、大正時代には島津公爵邸としてジョサイア・コンドル(鹿鳴館とか旧岩崎邸などの設計者)が設計、「旧島津公爵家袖ヶ崎本邸洋館」として東京都指定有形文化財に指定されているんだそうです。

    

素敵なキャンパスなんか得した気分~と、浮かれながら入った1号館は、トイレの内部までも至れり尽くせりの設備次女は女子大でしたが、やっぱり共学とは違った趣があります

さて講義。講師の米谷先生はかなりな演劇通と見た。パワーポイントのスライドに出てくるヘンリー五世役者を「このイケメンは。。。」と解説したり、新国立の鵜山仁氏の「ヘンリー五世」の写真に「みなさんお待ちかねの浦井くん」を持ってきたり

・・・と、サービスしながらも、講義もきっちり。こういう楽しい講義なら若い学生もついて来ますね。

今年春の「ヘンリー五世」に続き、来年早々にはさいたまで松坂桃李くん主演の「ヘンリー五世」が上演されますが、こんなに立て続けにこの作品が上演されるのは、ただならぬこととなのだそうです。

あらすじをざっくり説明すれば「イングランドの王ヘンリー5世がフランスの王位を継承する権利を主張し、フランスへ侵攻。2つの戦いで大勝利をおさめ、両国の間に和平が成立してヘンリーはフランス王女キャサリンを妃に迎える」これだけ。そこなんですよ。私もこの前の新国立のヘンリー五世を観た時、「え?なんかこのスジ?」と思ったの。そして、この作品を埼玉芸術劇場の蜷川チルドレンが上演するとき、吉田剛太郎さんはいったいどの役?まさか、あのニラ?いやいや、ほかに吉田さんが演じるような配役あった?と心配してしまったんですね。

だがしかし。あのニラを頭にのせた横田さんのフルーエリン(正確にはニラではなく、リーキというポロネギ、深谷ネギみたいな植物だそうです)、あの人物こそが重大な役だったということなのです。

フルーエリンやガワー、ピストルなど、なまりの強いステレオタイプの田舎者たちが、ストーリーとは一見かけ離れたようなどうでもいい話をして観客を笑わせたりしながら、そのバカ話の中で支配者たちの不安をえぐりだしてみせたり、ものすごく真面目に真実を言い当てたりしているということなのです。なるほど~英雄物語の腰を折る下層階級の人たちの登場によって、物語を立体的にしているということなのですね。深い。

だいたい、この作品が上演される時というのは、国家が危機的状況にあったり、緊張状態にあるタイミングが多いとか。

1944年のローレンス・オリヴィエ版は第2次世界大戦末期、連合軍によるノルマンディ上陸作戦直前、1989年のケネス・ブラナー版はフォークランド紛争、2005年のナショナル・シアター版はイラク戦争と開始時に上演だったとか。スクリーンでケネス・ブラナー版の一部を見せてもらいましたが、「戦争の大儀」「戦争責任」「戦争の悲惨」が強調され、フランスに圧勝したヘンリー五世が華々しく凱旋するのではなく、犠牲となった血だらけの少年兵を担いで複雑な表情で歩いたり、戦死した兵士のポケットを漁る人物の描写があったり、パノラマで死体の散らばる光景を映し出したりと、「勝利の喜び」よりも「戦いの空しさ」を感じる作りになっているように感じました。

ローレンス・オリヴィエ版は、とにかくヘンリー五世が暴言を吐いたり印象の悪い部分はカットして、ひたすら英雄的な作品になっていたようです。この作品が帝劇で上映された際のプログラムもみせていただきました。

 ほら、かっこいいでしょ

今日の講義で、埼玉の「ヘンリー五世」が、ますます楽しみになってきましたチケットとれますように。 13:30~15:00までの1時間半。睡魔に襲われることなく楽しい時間をすごせました。またこういう機会があれば、ぜひ参加したいです!

 

 

 

コメント (2)
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