ずっと気になっていた「ツナグ」を朝イチで観てきました。近所の映画館なんで休日早い時間に映画みちゃうと午後ゆったりできますね
原作の最初のエピソード「アイドルの心得」はカットされていたものの、ほぼ辻村氏の原作に忠実でした。役者さんも、主人公の歩美・松坂桃李くんをはじめとして祖母の樹木希林さん、その兄の仲代達矢さん、3つのエピソードに出てくる八千草薫さん、遠藤憲一さん、などのベテラン勢がしっかりと脇を固めて見応えがありました。特に樹木希林さん。この方はすごいです。この一見ありえない物語を、もしかしたらありかも。。と思わせてしまう力を感じました。歩美くんとの食事のひとつひとつ、家の中の家具の配置までが丁寧に描かれていて、明日の朝食はあんな感じにしたいなあと思いました。歩美くんの亡きご両親とのシーン(別所哲也さんと本上まなみさん)に出てきた卵焼きおにぎりも食べてみたいです。エンドロールを見たらちゃんとフード・コーディネーターがついているんですね。この生業のためにかけがえのない優しい両親を失った歩美くんを祖母がどんなに大事に育てたかを感じさせました。松坂くんがまたそういう役にぴたりとはまっていました。清潔感と誠実さ。心の奥に持つ悲しみを強さに変え、きちんと成長していくさまがちゃんと描かれて秀逸でした。なんか、SPの岡田くんに通じるものを感じました。
ツナグが死者と依頼人を会わせる品川の高級ホテル「バンドホテル」は、見たことがあると思ったら、やはり横浜のニューグランドでした。マッカーサールームもある由緒あるホテルですね。家族で新館に泊まったことがありますが、この旧館の内装は本当に素晴らしいものでした。「横浜バンドホテル」というホテル(今はないかも)は実在して、五木ひろしさんの「横浜たそがれ」♪の曲の舞台になったらしいです。こちらは外観しかみていませんが「マドロスさん」が似合いそうなホテルでした。
さて、この映画、原作にはなかった「詩」が心に残りました。歩美くんと祖母が「ツナグ」の伝承に向かう山道で朗読します。
東京イグナチオ教会の主任を務めたイエズス会のヘルマン・ホイベルス神父が「人生の秋に(春秋社刊)」という書の中で紹介しているそうです。
最上のわざ
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架をになう。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても ねたまず、
人のために働くよりも、
謙虚に人の世話になり、
弱って、もはや人のために役たたずとも、
親切で柔和であること。
老いの重荷は神の賜物、
古びた心に、これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、
真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、
それを謙虚に承諾するのだ。
神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。
それは祈りだ。
手は何もできない。
けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために。
すべてをなし終えたら、
臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友よ、われなんじを見捨てじ」と。
ヘルマン・ホルベルスの「人生の秋より」
・・・・・・・そのように、生きたいものです。