作◇ウィリアム・シェイクスピア
翻訳◇小田島雄志
演出◇鵜山仁
出演◇岡本健一 中嶋朋子 浦井健治 今井朋彦 城全能成 他
あらすじ◆三十年にわたる薔薇戦争を勝ち抜き王位についたヨーク家のエドワード四世。その弟、グロスター公リチャードは王位を狙い、次々と優位な継承者を破滅させ、対立する貴族たちを処刑、ロンドン市民たちの支持を得、ついにリチャード三世として即位する。
が、絶頂期は長くは続かない。造反貴族たちがヘンリー五世の孫リッチモンド伯ヘンリー・チューダーの元に集結し反旗を翻す。反乱軍を率いたリッチモンドと王リチャードはボズワースの平原で激しく戦いを繰り広げ、リチャードは壮絶な最期を遂げる。(公式HP)
3年前の秋の『ヘンリー六世』三部作全三部9時間上演は、その長さに耐える自信がなく、タイトルロールが浦井くんだったにもかかわらずついに観に行きませんでした(もちろん、同じ理由で蜷川9時間コースト・オブ・ユートピアも)今回はその続編にあたるということで、ヘンリー六世以降この作品の上演を心待ちにしていた人々とはたぶん違うテンションでの観劇だったと思います。なぜって、岡本健一さん、中島朋子さんをはじめヘンリー・・に出演したキャストがほぼそのままご出演だったらしいですから。・・・が、そんなおいてきぼり感に負けず楽しんできました。
今回は、10列が最前列のため、前から2番目のほぼ最下手。舞台は赤茶色の荒野。目の前には傾いた椅子。この椅子の前に死んだ王の遺骸や、ヘスティング卿の生首などが最後まで置きっぱなし・・・正直かなりグロかったです。特に王の遺骸・・・2幕でリッチモンド伯ヘンリー(浦井くん)が目の前を何度も通るのは嬉しかったんですが、遺骸はかんべんしてほしかったです。。。
それはおいといて、男闘呼組時代はなんだか好きなタイプではなかった岡本健一さんが、リチャード三世の非道ぶり、小心ぶり、悪を悪と思わぬ怪人ぶりを存分に見せてくれるのに感動しました。醜く生まれ、母にも疎まれ、都合の悪い人物は子供といえども容赦なく潰し、挙句の果ては「絶望の中で死ね」と連呼される救いようのない王・・・前半は物凄い力でブルドーザーのように邪魔者を冷徹に排除しながらずんずんと前進し、王となってからは自分の存在をおびやかされるのではという怯えから狂気に走る。このへんの変質っぷりがすごい。
お目当てのリッチモンド伯(浦井くん)は最後の30分くらい(?)なとこで登場(本当は1幕終わりころに全く別の役でちょろっと出演してますので見つけてね)して、この舞台のいいとこ全部かっさらっていきます。フォーティンブラス@ハムレットよりもっと美味しい。なにせ、最後の戦い前夜、亡霊が次から次へと出現して、リチャード三世には「絶望の中で死ね!」リッチモンド伯には「生きて栄えよ!」と連呼ですから。出陣の演説も対照的。あんなの聴いたらみんなリッチモンドについて行きます。
今井朋彦さんは、エドワード四世と、その二人の幼い息子担当ですが、息子ちゃんたちはパペットで登場。今井さんの朗々とした声の強さに魅了されまくりでした。息子・エドワード五世とヨーク公の残酷な運命とその表現には胸がしめつけられました。
鵜山仁さんの演出はわかりやすかったのですが、登場人物の名前がやっぱりなーエドワードやエリザベスやジョージが複数でてきたりして・・・次回蜷川「ヘンリー四世」までにちょっと予習しとかなきゃと思ったりしました。
一幕なんと二時間。20分休憩のあと二幕は一時間二〇分。結構ハードな舞台でした。
終演後、おばさまたちが「最後の方にでてきたあの若い王子やった人、かっこいいいいわね!誰かしら!」と盛り上がっていました。
「歌って踊れてシェイクスピアもこなす浦井王子です」と教えてあげたかったかも。