好きな舞台があればひとりでどこまでも行ってしまう私ですが、美術館にひとりで行くのは初めてだと気づきました。
それでも行きたかったのは、このポスターの写真にある竹内栖鳳作「班猫」をどうしても見たかったからです。
数か月前、テレビでこの絵が紹介された時にビビっときたのは、やっぱりこの猫がチャメに似ていたからにほかならないのですけれど、まるで猫の気持ちまでも写し取ったようなこの絵にはすっかり魅入られてしまいました。
すぐ近くでまじまじと拝見すると、猫の毛の一本一本を色を微妙に変化させながら緻密に描写してあり、思わず息をのみました。まるで本物のビロードのように滑らかな猫の毛の質感が見事に再現され、触りたくなってしまうほどです。そして、その目の色は深くて吸い込まれそう。今にも絵の中から「にゃ~ん」と飛び出してきそうです。モデルになった猫は自筆の絵一枚と交換に八百屋のおかみさんから栖鳳のもとにもらわれたそうですが、こんな可愛い猫、私ならいくら積まれても絶対手放さないのになあと余計なこと考えてしまいました。
ほらあ・・かわいい!
竹内栖鳳という画家は横山大観と同じ時代に生まれて京都画壇で活躍し、太平洋戦争の時代に亡くなっています。なのに教科書の美術史などには必ず取り上げられる横山大観とは対照的に地味な評価だったようです。
私もその番組を見るまではこのお名前を見聞きした記憶がないように思います。でも、この作品の素晴らしいこと!
作品の中には犬や雀、栖鳳がヨーロッパに渡った時に動物園でスケッチしたという虎やライオンなどもありました。
どれも、どこか優しいまなざしが感じられて温かい気持ちになりました。ちょっと無理してでも行ってよかったです。
山種美術館は何度か場所を変え、現在は広尾にあります。渋谷からバスで行きましたが、帰りは国学院の脇を通って渋谷駅まで歩いてみました。
結構距離はありましたが、ヒカリエが見えていたので、こんなことでもなければ通りもしないだろうなあと思いつつ、広尾~渋谷の散歩を楽しんだ晩秋の一日でした。