地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

唐辛子

2009-11-05 00:00:00 | 日本語

唐辛子

近年、全国のスーパーでも販売されるようになった大分の特産品(発祥は福岡という説も)柚子胡椒。地元では鍋料理の汁や味噌汁に加えて使用されるが、広く出回るにつれ、他にも様々な使われ方をするようになってきた。私自身もサラダのドレッシングや牛肉のアスパラ巻きなどで少量用いている。柚子の薫りもさることながら、ピリッとした辛味とたっぷりの塩分で、とても美味しいソースが出来る。
その辛味の成分についてだが、「柚子胡椒の原材料にコショウは含まれないのに、なぜ『胡椒』という名称なの?」と、疑問に思われた方がいらっしゃるのではないだろうか。
柚子胡椒で言う「胡椒」とは、実際には唐辛子のことである。実のところ、私の出身地である九州北部では、日常的に唐辛子のことを「コショウ」と呼んでいる。但し、それは「一味唐辛子」や「七味唐辛子」のような、製品化されたものについてだと限定した方が良いかもしれない。
久しぶりに地元に戻り、家族に「コショウ取って!」などと言われると、思わず「黒(あるいは白)胡椒」のパウダーを渡してしまいそうになる。実に紛らわしい。では、この地域で「塩・コショウ」の胡椒をなんと呼んでいるかというと、「洋胡椒」と呼んで唐辛子と区別している。

なぜ九州北部に限ってこのような呼称の差異が生まれたのだろうか。
以下のような説がある。
江戸時代、中国船が出入りし、中国人相手の貿易・商売が活発であった長崎の地。
当時、「トウガラシ」という音から、長崎の人々は「唐枯らし」という言葉を連想した。商売相手である中国の商人に対し「唐枯らし」では印象が良くない。そこで、「トウガラシ」という代わりに、同じ辛味付けのスパイスである「コショウ」の名称で代用したのが、「コショウ=トウガラシ」の始まり。
このエピソードには、語呂合わせと気遣いという、日本人らしい感性が多分に現われていて、非常に面白い。
そして、歴史を通して早くから大陸との交流によって栄えた九州北部ならではの外交術の名残りが、外来の香辛料の名称に残っているのだとも言えるかもしれない。

ちなみに、「唐辛子」と呼ぶくらいだから、日本にトウガラシが伝わったのは中国からかと思いきや、定説ではヨーロッパ(ポルトガル)からとのこと。先日の碧の記事に書いたとおりである。しかし、ポルトガル伝来だとするならば、なぜ「南蛮辛子」にしなかったのだろうと、素朴な疑問を持ったところ、唐辛子の別名には「南蛮辛子」というものもあるのだそうだ。しかし、なぜ「唐」辛子の方が一般的な名称になったのか、結局疑問は残るのであった。(m)

*余談ですが、九州地方では「辛い」の意味だけでなく、「しょっぱい(塩辛い)」ことも「からい」と表現します。方言って不思議です。へ~!と思った方は応援クリックお願いしますね~。

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6 コメント

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わぁ、納得! (yokocan21)
2009-11-06 04:20:31
柚子胡椒の「コショウ」、何とも不思議だったので、これでスッキリしましたぁ。辛いもの大好きな私にとって、唐辛子の歴史はとっても興味深いものです。「唐」の謎も、益々深まるばかり。
関西でも、「しょっぱい」を「からい」と言いますよ。
そうそう、柚子胡椒といえば、以前拙ブログで紹介しました、博多の「ゆずとんからし」というものがあって、これがとっても美味しいのです。こちら→http://yokocan21.exblog.jp/3794662/で載せてます。お薦め!
ところで、この布、イスファハーンの更紗ですよね?私も1枚持ってま~す。いつか、本場の更紗に触れてみたいです!

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yokocan21さん (mitra)
2009-11-08 21:25:53
あ、そうそう!関西でも「からい」って言うんですよね!以前、関西出身の友人が使っていたのを聞いて、親近感を覚えました。
「ゆずとんがらし」の記事、今から拝見しに伺います。そうなんですよ。「とんがらし」とも言うのですよね。(ということをyokocanさんのコメントによって思い出しました)
「唐」の謎にも今後迫れるといいんですけれど。単に外来のものに、気軽に「唐」の言葉を用いてしまっただけかもしれませんよね。
ところで・・・。これ、実は更紗ではないんです!なんと、ペルシャ絨緞柄マウスパット(笑)。
ペルシャ絨緞の柄もそうですが、さらには更紗の柄にも通じますよね。(もともとはモスクの文様がモチーフですけれど)
このマウスパッド(かなり大判です)、約300円で売られています(笑)。
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Unknown (タヌ子)
2009-11-10 07:50:30
『唐枯らし』は中国の人に失礼にあたるって、日本人ってやっぱり気配りの民族ですね。
柚子胡椒は数年前から急にメジャーになったけれど、九州ではずっと前から食されていたものなんですね。
香り高い柚子とトウガラシの組み合わせがこんなに素晴らしいハーモニーを奏でてくれるって誰が発見したのでしょう。
因みに両親の出身地佐渡でも『しょっぱい』は『からい』です。
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タヌ子さん (mitra)
2009-11-10 20:09:26
本当に。つくづく気配りの民族だと思わされるエピソードです。
柚子胡椒が、急激に全国のスーパーで売られるようになった背景が知りたいです。柚子自体は大分でたくさん採れるんですけど。
タヌ子さんのご両親は、佐渡の方なのですね。佐渡もいいところだな~!
九州~関西~北陸・・・「からい」文化圏は、日本列島西側なのかしら?方言っておもしろいな~と思います。
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方言の不思議 (yuu)
2009-11-15 16:15:39
面白いですね~!
コショウが唐辛子!
しょっぱいがからい!

ウチはしょっぱいはしょっぱいだなぁ。
「しおからい」、ともいいますが、
「からい」には繋がらないですね。面白~い^^
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yuuさん (mitra)
2009-11-16 15:20:31
yuuさんがおっしゃる「うち」とは、今お住まいの場所?同じあの地方の「雪国」でも、場所によって「からい」と「しょっぱい」の地域差があるのかな?
「からい」は明らかに「塩辛い」の省略形でしょうが、九州弁って、省略言葉がとても多いんですよ!ずぼらな地域性が現われてるのかしら??(笑)
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