شاي(シャーイ)
アラブ世界はまずお茶である。どこへ行っても「まあ、一杯」である。
買い物しようと店を覗き込むと。
バスを待っていると靴磨きのおじさんに。
宿屋の前で、鍵を待っていると、番人が。
「まあ、一杯やらないか?」
ありとあらゆる場所で聞かれる。社交辞令ではない。心からすすめているのだ。断るときは丁寧に断ろう。そして、断った人が見ているところで、ほかの人のすすめるお茶を飲んではいけない。
「俺のは飲めなくて、あいつのは飲めるとはどういう了見だ!」
お茶に限ったことではない。お食事の招待を受けるときも注意が必要だ。連日招待の嵐になることがあるからだ。もっとも、これが楽しめるようになったら、アラブから抜けることはできない。いい人ばかりではないので、声高にオススメはできないが、チャンスがあれば経験してもらいたいと思う。
アラブ人がお茶を入れているのを見たことがあるだろうか?
「煮出して入れることくらい知っているわよ」
フッフッフ。確かに間違ってはいない。正式にはそうだ。しかし、その辺でおじさんが入れてくれるお茶や、家庭で入れるときは、そんなことはしないのだ。
ある日のこと、私は友達の家の台所にいた。しゅんしゅんに沸いたお湯と、グラスを目の前に、友人は「スプーン何杯?」と聞くではないか!「砂糖は入れないよ」と返事したら「茶葉だよ!茶葉!」と言うではないか。そして、子どものグラスには少なめ。おばあさんは濃いめと、それぞれのグラスに茶葉を入れていくではないか!
あとはお湯を注ぐだけ。ポットがなくてもお茶が入れられるのだと、妙に関心した。
さて、次は正式なお茶の入れ方。
小さなグラスから4、50cmも離した高いところから注ぐのだ。そうすると、グラスの中に泡が立つ。泡が立ったお茶が良いお茶。あれ?なんだか、御点前のようですな。なぜかと言えば、生活の知恵。アラブ諸国は砂漠が多い。砂漠ではほこりが立ちやすい。泡で舞い込んだごみをすくい取ってしまおうというわけだ。
アラブでお茶と言えば紅茶が主流であるが、モロッコでは緑茶である。ただ共通している飲み方は、ミントと砂糖をたっぷりと入れること。どのくらい入れるかといえば、とけきらなかった砂糖が沈殿するほどだ。初めて飲んだ日本人は、たいてい衝撃を受ける。頭がキーンとしてしまう人もいる。
灼熱のアラブ世界では、糖分と塩分の摂取は欠かせない。塩分は料理でカバーできる。しかし煮豆など、料理に砂糖を使う習慣のないアラブ人は、お菓子かお茶類で摂取するよりない。一番手軽に取れるのがお茶なのだ。
こんなにも甘いお茶を飲んでいるから、アラブ人は太っているのだ!と思う人がいるかもしれない。エジプト人に聞いたところ、1日に5杯ぐらいが適当だそうだ。それ以下でもそれ以上でも体に悪いとの事。「私は毎日2リットル」と答えたら「飲みすぎよ!」と驚いていた。(この話は翌日、村中に知れ渡っていた。)
写真の説明をしよう。
右上はスペインではまってから常備しているレモン入緑茶。
エジプトでも健康ブームで緑茶がはやっている。10年前は「砂糖を入れて飲めるお茶は日本にないのか?」と聞かれ、お抹茶を行くたびに点てていたのがウソのようだ。今や「砂糖を入れずに飲める緑茶は最高」と、同じ人のセリフとも思えない。
上、真ん中はトワイニング。エジプト人はリプトン・イエローラベルが大好き。5星ホテルでもリプトン。煮出した紅茶よりも、ティバックの方が高級扱いである。煮出した紅茶が好きな私は「シャイ・マスリー、ミンファドラク」(エジプト式紅茶をください)と言って、いつも聞き返される。「エ!?リプトンのほうがおいしいですよ」…とんでもない話である。
左上の一番大きい箱は、エジプトで一番有名な紅茶。「シャーイ・イル・アルーサ」(花嫁紅茶)花嫁の絵が目印。たくさん買うとティーカップやスプーン、スティックシュガー150個がおまけについてくることもある。
下段はハーブティ。ここにはないが一番有名なのは、カルカデという、ハイビスカスの花茶。市場に行くと、赤い花が山盛りになっている。
真ん中と右のものは「スキム」という健康飲料メーカーのお茶。いろんな症状にあったブレンドがある。中でもダイエットティのおまけには、ダイヤル式の理想体重が一目でわかる理想体重グラフがついている。日本のものよりも、標準体重が幅広いのは気のせいだろうか?
このままだとどこまで続くかわかりませんので、この辺で…これぞ茶のみ話。ご一緒に「砂糖」の記事もお楽しみください。[a]
ほっと一息、その前に↓ミンファドラク
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