歌川国芳の絵にスカイツリーが描かれている(すでに予言していた)というのは、夙に有名である(極極一部の間では)。その謎を解くというドキュメンタリーを、以前BS(更にその前NHKでも)で放映していたのでちょっと見たが、例によってタレントが案内役となり謎を探るという構成で、案の定内容は薄いものだった。歴史物でもよくこの手法は使う。実は何々は何々だった、という風に。基本的に歴史は物語(それを浪漫という)なので、いくらでも勝手に作られる。その材料には事欠かない。重要なのは史料で、その信頼度によって説得力を持つかどうかが決まるわけだが、想像の入り込む余地は大きく、その点が多くの人を惹きつけるのだろう。しかし、個人的にはあまり興味はない。
で、今回の国芳では、史料がそのカイツリーが描かれている浮世絵である。確かに一見すると、形はスカイツリー風である。が、その素材はどう見ても木で、それで組んだ櫓のようにしか見えない。しかも建ってる場所がスカイツリーとは川を挟んだ反対側、つまり、何も不思議ではないのだ。大した知識がなくても多分井戸の櫓だろうことくらいは分かるのだ。唯、通常の大きさよりは大分高い。これも、そもそも浮世絵というのはスーパーリアリズムではなく、デフォルメだらけの幻想絵画の要素が多いものということを考えれば納得がいく。国芳なんか、幻想絵画的浮世絵の代表だろう。その場の感覚で、ちょっと高い方が良い感じ、などと思うのは普通なのではと思う。例え、そこに存在してなくても、ちょっと面白いから描いてみよう、と思ったのかもしれないし、要するにそもそもが大した謎ではないのだ。
というわけで、スカイツリーが完成してこの国芳の浮世絵が注目され、国芳を知る良いきっかけとなったわけだから(この番組も一種の便乗商売?)、国芳もさぞお喜びであろう、という話であった。