知り合いに以前貰った蕎麦の正体が判明した。
手打ち蕎麦だったのだが、腰が一般的手打ち蕎麦のと
は微妙に違い、しかも香りもちょっと違っていて、一
体どういう蕎麦なのかと疑問に思っていたのだ。
その香りの違いはどういうものかというと、蕎麦の実
の香りが強いということではなく、それ以外の独特な
香りがあったということで、乾麺の風味に近いものを
感じたのだった。
というと、蕎麦としては美味いとは言いがたいのでは
ないかと思われるが、はっきり言ってそうだった。
もしこれが本当に手打ちであるなら、変わり蕎麦の一
種で出すにはいいのかも知れない、とは思った。
そして、先日、その知り合いに確認する機会があり聞
いてみて正体が判明したのだ。
確かに手打ちではあった。
それで、香りが独特だったと言うと、蕎麦の実を晒し
たやつだからと言った。
「寒晒し蕎麦」というもので、江戸時代にその保存性
を高めるために行った、蕎麦の実を冬に冷たい川で晒
すという工程を経た蕎麦の実だったのだ。
そしてそれを幕府に献上したらしい。
一手間かけた、由緒正しき蕎麦だったのだ。
それで納得した。
どこか乾麺風の風味、それは晒したことによる生じた
ものだったのだ。
唯、問題は、手間をかけたから美味くなったとは必ず
しも言えないところだ。
しかし、世の中には、そういう手間をかけた珍しいも
のをありがたがる人も多い。
ブランド化すればそれなりの需要はあるだろう。
それに、世の中受けているもので、個人的にも良いと
思うもののほうが圧倒的に少ないことを考えると、む
しろこの「寒晒しそば」、行けるのかも知れない。