扶桑往来記

神社仏閣、城跡などの訪問記

空也の寺、六波羅蜜寺の踊念仏

2006年12月21日 | 世界遺産・国宝・重文

東寺を後にし、堀川通りの「天下一品」で”こってり”を食べ、荷物をホテルに置いた後、六波羅蜜寺を拝観。
ここは私の記憶では学生時代以来、ほぼ20年ぶり。

場所は東大路と大和大路の間、四条と五条の間、建仁寺の南にある。
間近にお気に入りスポットがないためになかなか行く機会がなかったが、淡交社から出ている「新版古寺巡礼京都」の5が「六波羅蜜寺」であったこともあり、思い立った。

六波羅蜜寺は、天暦5年(951)、醍醐天皇の皇子(諸説有り)の空也上人が開創になる天台別院で西国第十七番の札所。
六波羅という地名は源平の頃に歴史に登場する。
「平氏にあらずんば人にあらず」の頃、平清盛は「六波羅殿」と呼称された。平氏の根拠地が六波羅にあったためである。
1183年、源義仲に倶利伽羅峠から敗走した平家は都落ちする。
政権を奪取した源氏は京都守護を置くが、後鳥羽上皇の承久の乱の後、「六波羅探題」と改組する。

そして六波羅蜜のいわれは六つの「波羅蜜」の修行、波羅蜜とは彼岸(悟りの世界)に至ることである。

六波羅蜜寺のウェブサイトより六波羅密を勉強してみると・・・


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六波羅蜜
布 施
見返りを求めない応分の施しをさせていただく事をいいます。貪欲の気持ちを抑えて、完全な恵みを施すことです。布施行は物質だけではありません。

持 戒
道徳・法律等は人が作り現在はますます複雑になっています。私たちは高度な常識を持ち、瞬時瞬時に自らを戒める事が肝要です。

忍 辱
如何なる辱めを受けても、堪え忍ぶことが出来れば苦痛の多い現代社会において、自らが他の存在に生かされていることがわかり、全ての人の心を我が心とする仏様の慈悲に通じることとなります。

精 進
不断の努力をいいます。我々人の生命は限りがあります。ひとときも無駄にすることなく日々誠心誠意尽くすことです。

禅 定
冷静に第三者の立場で自分自身を見つめることをいいます。

智 慧
我々は本来仏様の智慧を頂戴してこの世に生をうけております。しかし、貪りや怒り愚痴によってその大切な智慧を曇らせてしまいがちです。
布施・持戒・忍辱・精進・禅定の修行を実践しどちらにもかたよらない中道を歩み、此の岸から彼に岸へ・・・。
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さて六波羅蜜寺にある像は次のとおり。
秘仏である十一面観音の他は、宝物館で観ることができる。

●十一面観音立像(国宝) 藤原時代
※辰年に開帳、次の開帳は2012年
●薬師如来坐像(重文)
●地蔵菩薩立像(重文)
※左手に頭髪をお持ちであるので「鬘掛地蔵」ともいう。
●多聞天立像 (重文)、広目天立像 (重文)、持国天立像 (重文)
以上、平安(藤原)期
●増長天立像 (重文)
※ここの四天王は増長天のみが鎌倉期、平安期の三体と見比べることができる。サイズや装飾・造型など似せてはあるものの、腰のひねりを大きくしてしまっている
●地蔵菩薩坐像(重文)
※別名「夢見地蔵」運慶作
●吉祥天女像 (重文)
※ここの吉祥天は浄瑠璃寺のそれよりずいぶん「おばはん」にみえる。
●閻魔大王像 (重文)
※脇侍っぽい司命・司録を従えている、また三途の川で亡者の衣服を剥ぐ奪衣婆像もあり、地獄セットとなっている
●弘法大師像 (重文)
※空海、例の法具をお持ち、玉眼、快慶の弟子、長快の作
●空也上人像 (重文)
※私はあまり好きではないが、おそらく日本で最も知名度が高い像のひとつ。

口から六体の阿弥陀仏が現れている例の像、薄暗い館内ではわかりにくいが玉眼、運慶四男、康勝の作
●平清盛坐像 (重文)
※この像も我々世代は教科書でおなじみであろう、慶派仏師の作であるらしい、この像も玉眼
●運慶坐像 (重文)
※有名な仏師、東大寺金剛力士像、興福寺無著像、世親像などの作者であるがビリケンさん様式のアタマである、玉眼
●湛慶坐像 (重文)
※運慶の長男、三十三間堂の千手観音はこのひとの作、自作であるそうだが玉眼はここの像中で眼力(めぢから)最強
以上、鎌倉期

宝物館には誰もいなくなってしまった。そうすると係の方が声をかけてくれた。
「これから踊念仏を行うのでご覧になりませんか」とのこと。
全く気づいていなかったのであるが、年末12/13~除夜まで重要無形民族文化財である「空也踊躍念仏」が本堂において夕暮れに催され、誰でも参加できる。
薄暗い中、空也像と同じく胸に金鼓をつけた層によるライブの踊念仏は趣深い。空也上人時代そのまま保存され続けているそうだ。
また、念仏が迫害を受けていた時代の名残で「南無阿弥陀仏」を「モーダナンマイトー」「ノーボーオミトー」と発音なされる。
得難い経験であった。

参考
【六波羅蜜寺年中行事】
正月     初詣 皇服茶授与
1/17     初観音
8/8.9.10   萬灯会厳修
9/11     開山忌
12/13~除夜  空也踊躍念仏厳修



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