ワシントンD.C.に来た理由、その最大の目的がエノラ・ゲイ。
日本人にとって特別な記憶をもつB29である。
私にとっても実に複雑な思いを想起する何ともやっかいな機体といえる。
B-29はいうまでもなく我が国を焦土と化した仇敵、私の親世代はこいつに家を焼かれ、護衛のP-51に機銃掃射を受けて逃げ回った。
太平洋戦争の記録フィルムに材をとった動画をみるとB29が大量の焼夷弾を落とす様が出てくる。
これを何度となく見せられて私は育った。
哀しいことに一軍用機マニアの目から見るとこれがどうしようもなく「美しい」のである。
ぴかぴかに輝くアルミの機体、長大な主翼、爬虫類のような機体先端、巨大な垂直尾翼、それらがひとつとなって実に禍々しくも調和のとれた芸術品のようにみえてしまう。
松本零士は少年の時、愛媛で空襲に向かうこのB29の大群をみてマンガ家になることを思い立ったらしい。
故郷を焼いたB29、そして広島に原爆を落としたエノラ・ゲイをどうしてもみたかった。
日本を完膚なまでに叩きのめした米軍機、地獄のような欧州戦場で破壊の限りを尽くしたドイツ・ソ連の戦車をみて喜んでいる不肖の子である私はその業への償いとしてここに来なければならないような気がしていたのである。
エノラ・ゲイは広大なハンガーの一番いいところに羽根休めしていた。
思っていたよりも大きい。
機体はところどころ補修の後があるものの、紛うことなきアタマの中のみにあったあのぴかぴかのB29である。
機体先端のガラスで中が丸見えの操縦席もリモコン機銃座も4発のレシプロエンジンも目の前にある。
「ようやくこいつに会えた」。
長年追い続けた仇敵を追い詰めた気がした。
機体の周辺には直援機にP47-サンダーボルト、P38-ライトニングを従え、迎撃に来た紫電改に月光、晴嵐、桜花を睥睨している。
紫電改は松山の航空隊でそこそこ活躍し、松本零士氏にとっても思い入れの多い機体。
桜花をここに展示されてしまうと涙なしにこれをみられない。
B29を隅から隅まで眺め、最後にもう一周してこの宝箱を後にした。
日本人全てのお墓参りをした気になった。
この気持ちと共に残りの人生を凄そうと思ったりした。
P38-ライトニング
P47-サンダーボルト
紫電改
月光
晴嵐
特攻機、桜花
ドイツ空軍の雄、Fw190。私の好きな機体。
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