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No188「博士の愛した数式」小泉堯史監督

~他者に受け継がれるこころ~

昨日になってしまいましたが、
2月20日は、この作品に登場する家政婦(深津絵里)さんの誕生日です。
博士(寺尾聡)は、この誕生日の220という数字と
博士の時計に刻まれた数字284とが、
友愛数(220の約数の和は284。284の約数の和は220。)だと語ります。
博士の優しい説明を聞いていると、
数字が身近で優しくおもしろいものにみえてきます。

原作にある美しい言葉の数々が、
役者たちの体をろ過して、話し言葉となって、心に流れこんできます。
映画が終わってすぐには気づかなかったけれど、
映画館を出て、家に帰り、一人になったときに、はじめて
感動が静かに心の中にひろがってくる気がしました。
とてもおだやかで、多くを語らない、それだけに味わい深い作品です。

家政婦とその息子ルート(齋藤隆成)は、博士に出会いますが、
博士の姉の未亡人(浅丘ルリ子)の誤解で、彼女は解雇され、
博士に会えなくなります。
それでもめげずに、数字を楽しみながら働く彼女のけなげさ。
「思い続ける心」の美しさ。
肩ひじ張らず、自然体でいて、なお、いさぎよい彼女佇まい。
この邪心のない、まっすぐな「いさぎよさ」が博士の心を動かす。
彼女が未亡人に「直線がこころの中にあるんです」と言って、
胸に手をあてたときのりんとした表情はすばらしかった。

劇的なことは何も起こらない。博士の記憶がもどるわけでもなく、
家政婦と博士とルートが過ごした時間が静かに流れてゆくだけ。
でも、この時間こそ大切な時間。
こんな映像で伝えにくいテーマが、ちゃんと伝わるから映画はすごい。
これも、柔らかにみえて芯のある、古木のような寺尾の存在感と
小泉監督の丁寧な演出と人間をとらえる目線の優しさゆえでしょう。

成長して学校の先生になったルート(吉岡秀隆)が話す
「時は流れず」とは、なんてみごとな言葉でしょう。
時は流れるけど、流れないのです。
博士の心、ありようは、しっかりと、ルートの中に刻みつけられ、消えることはない。
博士の記憶は80分で消えても、ルートの中にしっかりと受け継がれている。

自分にはできなくても、他者に伝えていくことはできる、
そんな生の尊さに強く心うたれた作品でした。

満足度 ★★★★(星5個で満点)
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コメント
 
 
 
[数の言葉の量化]と[言葉の量化] (本歌取りシリーズ)
2024-08-22 10:23:18
 ≪…「直線がこころの中にあるんです」…≫や≪…「時は流れず」とは、なんてみごとな言葉でしょう。時は流れるけど、流れないのです。…≫を、≪…ルートの中に刻みつけられ…≫で、数の言葉ヒフミヨ(1234)を『ヒフミヨ矩形』(√n×1)『ヒフミヨ放射』(√(n+1)などを連想して・・・

  π(〇)と一(▢)なぞりアイにてお友達

 を昭和歌謡の本歌取りで・・・

 「北空港」の本歌取り[円周率] 

   円周率

〇の一 □に逢えて
カオスな一に 灯りがともる
〇と▢は一緒だよ もう引っ付いている
なぞり逢おうよ
カオスを捨てて 時間さえ捨てて
i(アイ)が飛び立つ 一のi(アイ)

〇の一 □に惚れて
ヒフミヨ渦に πが見える
信じてもいいですね ヒフミヨ放射だけ
数え尽くすわ 
カオスを捨てて 時間さえ捨てて
i(アイ)が飛び立つ 一のi(アイ)

〇の一 舞い散る数も
ヒ(〇・π)とヨ(□・i⁴)で 咲く花になる
どこまでも一緒だよ もう離れずに
夢(√・平面)を探そう
カオスを捨てて 時間さえ捨てて
i(アイ)が飛び立つ 一のi(アイ)
 
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