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No443 夏の終わりに~ヤスミン・アハマド監督逝く~

ヤスミン・アフマド監督が、7月25日に亡くなられた。
享年51歳。あまりに早すぎる。

2007年11月のアジアン映画祭で、
『ムクシン』を観て、家族を見つめる眼の細やかさ、深さ、
言葉少なく、詩情豊かで、音楽にあふれた世界、
すっかり大ファンになった。
『細い目』『ラブン』『グブラ』と
大阪Planet +1で特集上映が行われ毎日通った。
ブログにも書いた。
『グブラ』の悲しい運命を描く冷徹な眼に圧倒された。

今年3月のアジアン映画祭で
『ムアラフ-改心』を観た。
家族の描き方で、ひっかかったところがあった。
なぜ?
映画仲間たちといっぱい語った。
普段話すのが苦手な私も一生懸命聞いてしゃべった。
ふいに氷がことりと音をたてて溶けるように、
わだかまりが溶けた瞬間の熱さは
今でもリアルに残っている。

ああ、ヤスミンさんはこんなに深かったんだ。
家族の心の傷を描いたシーンでも、
観客によって受け止めようは違う。
自分がひっかかっているわけがわかった。
私には読み解けなかったなと気付くと同時に
ラストシーンがあらためて熱く胸によみがえってきた。

心の傷をどう描くか。
そして、母と息子の和解の描き方。
熱く語り合ったというより、語りを聞いた感激。

また観たい、また新作を観たい、
ずっと観続けたい、と思った。

・・・そして訃報である。
岡本喜八監督特集にどっぷり浸り・・
きちんと受け止める勇気がなかった知らせ。
ずっと同時代で追い続けたい女性だった。
これから何度でも繰り返し観たいと思う。

『ムクシン』のラスト、
ヤスミン監督ご本人と監督の両親だけでなく、
キャストやスタッフたちが皆湧き出るように次々と出てきて、
オルガンの周りで、監督と一緒に皆、楽しそうに歌ったり、
しゃべったりしていた。
そんなふうに
きっと向こう側の世界でも、監督が歌っている姿を思い描こう。
日本のマキノ雅弘監督や岡本喜八監督や、
そしてジョン・フォード監督だって
(あの『静かなる男』の牧歌的な村人たちの世界はどこか通じるような)
その周りにいて、
きっとビールなんか片手にもちながら、
みんなで楽しく歌っているといいなあ、なんて想像してみる。

本当に心からご冥福をお祈りいたします。
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