日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ56 ~「見える化」基軸の新人教育

2009-03-19 | 経営
今年も新人研修の季節がやってまいりました。弊社が新人研修を実施する際のポイントを少々お話します。

基本は、ここでも「見える化」です。もちろんそんな難しい話をする訳ではありません。簡単に言うと、何も見えていない状態で入社してくる新人くんたちに、弊社に与えられた時間内で、できる限りの「見える化」をしてあげる訳です。「何も見えていない状態」は「暗闇」を想像すれば分かると思いますが、誰でも不安です。ですから、そこに少し明かりを灯してあげれば多少は安心して入っていけると言う訳です。

新社会人として歩き始めた彼らは、まさに「暗闇」に放り出された状態です。そんな彼らの「暗闇」で、まず照らしてあげるのは「行先」です。研修で私は一番はじめに「働くということ」というお話をして、一人ひとり「働く理由」を話させます。はじめに「自分は何のために働くのか」ということを意識してもらうためです。これは一般のコンサルティングに置き換えれば「目的の見える化」にあたります。どんなプロジェクトでもそうですが、「目的」が見えないことには、自分が今何に向かっているのかが分からずメンバーのモチベーションはあがらないのです。

「生活のため」「親離れして自分の欲しいものを思いっきり買いたい」「ブランドものを買っておしやれがしたい」「海外旅行に行きたい」「将来自分のお店を持ちたい」・・・。仕事に就いたとたん環境変化への対応で精神的に忙殺され、不安感と緊張感の中で忘れがちな、心の奥底にあるそんな「働く目的」たちを呼び覚ましてあげるのです。

「目的地」を照らしたら、次に照らすのは「今いる場所の周囲の風景」です。これは「会社って何?」というお話です。一般コンサル的には「環境の見える化」にあたりますね。自分が今入った会社というところはどういう場所なのか、なぜ会社という形で存在するのか、会社は何をするために存在しているのか、その中で働く社員は何をすべきなのか・・・。そんな話の中から「会社の目的」をぼんやりとでも理解させる訳です。

「目的地」と「周囲の風景」が分かったら、後は「行き方の見える化」をしてあげます。「行き方」とは、組織や顧客との関係の中で上手に前にすすんでいくための「方法」や「知恵」の伝授です。すなわち、「行き方」=「コミュニケーションの基本」を教えてあげるわけです。「自分の思ったことを伝えることの大切さ」「相手の話をよく聞くことの大切さ」「報・連・相の重要性」などのお話がそれにあたります。

新社会人導入研修で覚えられることはこの程度が精一杯です。

自前で新人教育をされている会社では、「自分の目的を確認すること」「会社の目的を知ること」「コミュニケーションを大切にした行動をすること」、この3点をぜひ分かりやすく話してあげてください。それともう一点忘れずに、困ったとき、悩んだときの相談窓口(担当)を必ずつくってあげてください。相談相手がいれば辞めずに済んだのにと言うケースは、精神的にモロい今の新人くんたちには意外に多いのです。