日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・12号

2009-03-12 | ブックレビュー
★「いま、社長にしかできない60の仕事/内藤和美
                           (インデックス・コミュニケーションズ:1500円)」

大不況対策本です。この手の本の売れ行きはタイトルが勝負を決するケースが多いです。その意味では、まずまずの衝撃度。中小企業の経営者にはタイトルに引きつけられて、「多少でもヒントになれば」と購入する向きもあるのでしょう。そこそこ売れているようです。ただ、タイトルの呼びかけ相手を「社長」に限定したことは、読者層を狭めてしまうかもしれません。内容的には必ずしも社長だけが対象と言ういうようなものではなく、広く中小企業管理者全般を対象としていると思えます。

基本は見開きでワンテーマごと、60個のテーマを解説しています。明日香出版社のヒット企画「ルール」シリーズ中の「社長のルール」とも似た印象です。見開きワンテーマ方式の良さは、好きなところからその時の気分や関心事に合わせて“抜き出し”読みが可能なことですが、半面全60のテーマのうちどこがより重要なのかが分かりにくくなってしまい、取り組む優先順位がつけにくいという難点もあります。

内容的には、中小企業診断士的コンサルタントが不況の時代に限らず、中小企業経営者に指導的立場でよくお話をするような内容と言って良いかと思います。すなわち、タイトルの割にはかなりオーソドックスである訳です。それもそのはず、著者は経営コンサルタント業歴45年超という、大ベテラン。各見出しは「明確な目標を設定する」とか「人材育成は続けてこそ成果を生む」など、かなり古典的な匂いのするものが多いのですが、どの項目も書かれていることは著者自身の経験にもとづくことが中心であり。通り一辺の机上論的内容ではなく、説得力はあるように思います。

その分“目から鱗(ウロコ)”的話には乏しく、新進気鋭の経営コンサルタントが書いたマネジメント本を多数読んでいる人には、やや物足りなさを感じると思います。他方で、過去にコンサルタントの世話になったことがない、ビジネス書はほとんど読んだことがない、という経営者には入門書的に教えられることが多いかもしれません。

“吹っかけ”的に誇張された記述が一切ない点には好感が持てますが、切り口がやや古臭くもう少しMBA的観点も欲しかったかなと少々物足りなさを感じさせるので、10点満点で5点。本書は著者の以前の著作の焼き直し作であるようで、価格面も含めて文庫版として出版するのが妥当だったかなと思えます。まあ拾い読みには向くので、社長の机上に置いて時間のある時に力を抜いてパラパラ読むにはいいでしょう。