日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

祝優勝サムライJAPAN「リベンジの悪魔」星野に勝った「若大将」原

2009-03-24 | ニュース雑感
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、原辰徳監督率いる日本チーム「サムライJAPAN」が、2大会連続での世界一に輝きました。おめでとう!

北京オリンピックで惨敗し、銅メダルすら獲得できなかった「星野JAPAN」。WBCの代表監督選びでは、星野氏の色気ムンムンの中モメにモメ、ようやく原辰徳巨人軍監督を指名し大会に望んだのでした。星野JAPANと原=サムライJAPANのそれぞれを率いた2人のリーダー、星野仙一、原辰徳の成否を分けたものは何だったのでしょう。

二人のリーダーとしての成否を分けた鍵は、野球人としての生い立ちに起因する「宿命」にあるように思います。星野仙一は法政三羽ガラスと同期で明治大学のエースとして活躍。ドラフト会議で巨人からの1位指名を約束されるも反故にされ、中日ドラゴンズに入団します。このときの怒りが彼のその後プロ野球生活の原動力であり、巨人への復讐に燃えた“リベンジ・エネルギー”が彼を支え続けてきたのでした。

一方の原辰徳は、甲子園の大スターから東海大学の4番として活躍し、ドラフトの超目玉として4球団から1位指名を受けるも、強運に支えられ1/4の抽選をくぐり抜けて希望通り巨人軍に入団。さわやかイメージ“の若大将”として、生涯巨人軍をまっすぐにリードする役割を果たしてきたのでした。最初の巨人軍監督をクビになった後も、リベンジに燃えるのではなくじっとまっすぐに「復活」を信じて、ただただ待っていたのです。そして監督復帰と昨年の日本一。あまりにも好対照と言える二人なのです。

星野氏は引退後も“リベンジ・エネルギー”でポスト長嶋の座を勝ち取り、北京の日本チームを率いたものの惨敗。WBCの監督の座を狙って再び“リベンジ・エネルギー”を燃やしていました。そこに鋭い一言を投げつけたのがイチローです。「北京のリベンジとか言っている人は願い下げ」であると。あの一言の重みが今日ハッキリしたと感じました。“リベンジ・エネルギー”は所詮「復讐の炎」であり、不純なエネルギーを発するリーダーには、おのずと限界があるのです。まっすぐ前向きな気持ちの原監督には、皆が素直な気持ちでついていくるのだということを、まざまざと見せつけてくれました。

原監督の気持ちがいいほどまっすぐなリーダーぶりは、今日の試合で9回裏あと1アウトで勝利の場面を追いつかれた時の、「しかたがない」という笑顔に現れています。あの笑顔が延長10回快心の勝ち越し劇を呼び込んだのです。北京の星野氏は、こんな場面で必ずや「鬼の形相」をしていたものです。それを見るたび、歪んだ“リベンジ・エネルギー”が裏目に出た時、“悪魔”を呼び込む魔力に転換したように思えました。

星野氏とは好対照な原監督のさわやか指揮の下、本日決勝戦で延長の最後の最後に試合を決めたのはやはり宿命の人イチローでした。“リベンジ・エネルギー”での大会参加を批判した彼が、ここ一番でやってくれたのです。執念の勝ち越し2点タイムリー。役者が違います。「神が降りた」とその瞬間を、イチロー本人が祝勝会でマイクを向けられそう言いました。まさに「神」が“リベンジの悪魔”に勝った瞬間でした。

マイナス・エネルギーでのリーダー・シップは、決して真の力にはなり得ない。プラス・エネルギーのリーダー・シップには決してかなわない。「復讐=リベンジ」を原動力にしたリーダー・シップは要注意!改めて学ばせていただいたWBCでした。