日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ55~“考課の季節”近し…「評価エラー」に要注意!

2009-03-05 | 経営
年度末も近づいて、やがて人事考課の季節を迎えます。人が人を評価することの難しさは永遠の課題でもありますが、極力「主観」を排することは管理者として当然の務めです。そのためによく知られる「陥りやすい評価エラー」はしっかり押さえておくべきモノ。ごくごく一般的な「評価エラー」を、まとめて紹介しておきます。

「ハロー効果」
心理学用語です。「被評価者のある面が優れていたり、劣っていたりするとその印象にひっぱられて他の面まで同じように評価してしまうこと」です。初歩の管理者にありがちです。小学校の先生とかでもよくありますよね。勉強のできる子は体育も実際以上にできるように思ってしまうとか。会社では、出身大学の印象に引っ張られたり、過去に大きなミスがあった部下をいつまでもそれにひきづられ評価してしまうとかです。

「自己投影効果」
「自分と考え行動が似ている部下を高く評価し、そうでない部下を低く評価する傾向のこと」です。これは中小企業の経営者などに多くみられます。まぁ、オーナー企業であれば、ある程度は社長の考え方に近い考えで動いているかどうかが評価基準になることはやむを得ない部分ではありますが、それが著しく一般社会的考え方とかい離があるなら要注意です。優秀な人材が流出する原因にもなりかねません。自分の言うことを聞く部下ばかり評価を良くして「裸の王様」にならないよう要注意です。

「対比誤差」
「自分との対比でものを評価し、客観性に欠ける傾向。自分強い分野には辛く、弱い分野には甘くなること」です。これは「自己投影」とある意味逆の傾向と言える部分もあります。自分が苦手な分野をスイスイこなす部下を「優秀」としたり、自分でもできる程度のことは成果であっても評価しないとか、著しく公平性を欠く評価です。

「中心化傾向」
「被評価者の大多数を「普通」と評価し、優劣の幅がつかない傾向」のことです。評価者が自己の評価に自信がない場合が大半ですね。評価に反映すべき明確な実績数字等がない場合は、日頃の部下指導や教育ができていないと必ずと言っていいほどこの傾向が出ます。すなわち、管理部門等定性評価が中心とならざるを得ない部門では要注意傾向です。

「寛大化効果」
「皆から“憎まれたくない”との意識が働くことによる全体的に甘く評価しがちな傾向のこと」です。サラリーマンの中間管理職にありがちです。「好まれる」「嫌われる」は評価者の評価基準にとって最大のタブーです。肝に銘じなくてはいけません。「誰からも嫌われたくない」と皆同様にいい評価をつけるならまだ救いがあるかもれませんが、嫌いな部下にはストレートな評価をしておきながら、そうでない部下だけ「嫌われたくないから」と甘い評価になると、不公平も甚だしい人事評価になります。

この他、「寛大化傾向」の逆で、「上に立つ優位性を意識するあまり厳しく評価しがちになる」という「厳格化効果」というものありますが、最近の若手管理職は押し並べて“優しく”、これは減少傾向と思います。むしろ、「自信がない」「嫌われたくない」という気持ちが先に立ち、「中心化傾向」「寛大化効果」が出がちなのではないでしょうか。

最後に一言。中小企業では経営者は最大の「評価者」です。どんなにワンマン経営であっても、「評価」は公平でなくては人は逃げていきます。これらの「陥りやすい評価エラー」は、まずはトップが務めて陥らぬようぜひとも意識して欲しいと思います。