日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

続 東電の家庭向け料金値上げを、絶対に許してはいけない理由

2012-01-24 | ニュース雑感
東電の家庭向け料金値上げ関連のエントリーに、たくさんの反響をいただきありがとうございます。まだまだ言い足りない部分もありますので、前回の不足を少々付け加えます。

東京電力の料金は簡単に言うと「基本料+使用料+調整金」という構成で作られていますが、これはあくまで利用者向けの料金構成の見せ方であり、そもそも電気料金自体の見直し云々の根拠となっているものは「総括原価方式」というやり方で算出されるいわゆる「製造原価」の昇降を基準として決められています。ただこの部分、これまで少なくとも利用者にはしっかりとした形で開示されておらず、ブラックボックス的に扱われてもきました。この問題については、昨年11月から経産省の「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」というものが立ちあげられ、現在その中身の是非について議論がされるに至っています。

これまでの会議の議事録や資料を見る限り、原価計算上組み込まれている宣伝広告費やら寄付金やら、あるいは人件費をどこまで織り込むべきか等々、従来のやり方を見直しする方向でかなり建設的な意見が出されていることが確認できます。このような消費者に転嫁される電力の製造原価のあるべきあり方が議論されている最中に、このような動きとは全く別の世界であるかのように、「家庭向け電気料金も5~10%の値上げを行い、収益体質の改善をはかる」などという再建計画案「総合特別事業計画」が東京電力と政府が出資する原子力損害賠償支援機構との間で作成が進められているということ自体がおかしなものを感じざるを得ません。

言ってみれば、「経産省が取りまとめる有識者の意見はあくまで意見。一応形式的に聞く耳は用意しますが再建はそれとは別に我々は我々の考えでやらせていただく」、とでも言っているかのような態度に見えはしないでしょうか。少なくとも「総合特別事業計画」が、この有識者会議で出されている「オール電化関連向け宣広費、寄付金、団体費等は原価に含めるべきではない」等の意見を踏まえたものとは到底思えません。もし仮に東電が消費者向け料金の値上げを正式に申し出るのなら、「火力シフトによる燃料費の増加」などどいう理由に終始するのではなく、最低限この有識者提言をどう織り込み「製造原価」構成をいかに見直ししたのかのかはしっかりと明示する義務があると思います。

さらに言えば、世の企業どこでも原価が上がるから即値上げなどいう短絡的なものの考え方で動くような組織はほとんどありません。東電の即値上げ戦術はまさに市場独占企業の思い上がり以外の何者でもないでしょう。彼らがまず真っ先にすべきは、その「製造原価」の個々の項目についての削減目標を作り、それにしたがって新たな「製造原価」の下いかにして事業運営を継続していくかの努力であるはずです。その観点から申し上げるなら、有識者会議に提示されている「総括原価方式」にある役員人件費を含めた個々の内訳費目について、具体的な削減努力をまず認可求める政府および一般利用者宛明示すべきでしょう。その中身を見た上で、東電の経営努力をもってしてそれでもなお値上げは致し方ないとなるのか否か、です。

恐らく、先の「製造原価」からの一部費目除外と個々の費目別削減努力を目一杯実施をするなら、法人向けも含めた電気料金の値上げなどしなくとも再建計画として成り立つ形になるのではないかと思うのです。要するに現状は、努力もせず「権利」と言って憚らない安易な値上げに逃げているだけのことです。橋下大阪市長が大阪府知事に就任した際に、「あなた方は倒産企業の社員であるという認識をまず持て」と言い、職員の意識改革を求めることで改革への取り組みを強くリードし財政再建に実績をあげました。今の東電にも全く同じことが言えるでしょう。国がリーダーシップをもって、第三者による“独裁者”的運営で意識改革を徹底させること、それが見えない限り料金値上げなど1円たりとも認めるべきではないでしょう。

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