日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「叙勲」を公務員改革に活かせないものか?

2011-11-07 | ニュース雑感
この季節になると毎年メディアをにぎわす秋の「叙勲」のニュース。私は以前から「叙勲」の存在意義に疑問を呈しています。その趣旨は、そもそも武官への表彰手段であった“戦争の英雄表彰的”「叙勲」が今の時代に本当に必要なのか。一歩譲って仮に必要としても、有名・無名を問わない公平な「叙勲」基準など存在しえないのであり、その価値そのものに疑問がある。さらに一歩譲って「叙勲」をなくせないのなら、そのあるべき活用法を考えるべきと思うわけです。

まず「叙勲」とはなにか、です。国家が勲位・勲章を授けることを指し、「勲章」とは国家や公共に功労のある人物や文化発展に功績がある人物に、国から授ける記章のこと、とのことです。「国家や公共に功労のある人物や文化発展に功績がある人物」ということろがけっこうなクセものでして、普通は民間企業だけで活躍した人はどんなに素晴らしいサービスをはじめ国民生活の向上に役立ったとしても、営利団体のリーダーのままではここの部分ではじかれてしまうそうです。ですから民間人が「叙勲」を受けるためには、業界団体の仕事に一定期間従事するとかの経歴がモノを言うらしいです。2003年に勲等の数字表記(例えば「勲一等」とか「勲二等」とかいうヤツ)が廃止されましたが、実際には呼び名が変わっただけでその序列は歴然と残っています。そんな訳ですから、より高い勲章をいただこうと考えるなら名のある業界団体の長を務める必要がある訳です。

「勲章」とか「叙勲」とかいうもの、ちっぽけな我々如き民間人には全く無縁のものである訳ですが、これが国家官僚の世界になると全然話が違うようです。私が以前勤めていた地方銀行は、そのトップのイスを代々事務次官経験者が務めていたのですが、彼らのような超大物官僚が何故に一地方銀行のトップに“天下る”のかと言えばその頭取の座が欲しいわけでは全くなく、業界団体の長である「全国地方銀行協会会長」という肩書きが欲しい、単純にそんな理由のようです。私は若い頃にそんな話を知って、ずいぶんと驚かされたものです。

事務次官経験者と言えば、国家官僚の頂点に立つ言わば“最高地位”を極めた人物であり、その後は“天下り”の“谷渡り”なんぞもし放題で何度となく高額の退職金を得て富の面でも満足に足る処遇を受け、あと欲しいのは「名誉」という感じなのでしょうか。私が垣間見た、「叙勲」に対する彼らの執念はただただ「異様」の一言でありました。国家公務員の価値観として「名誉」は、「地位」「富」とともに、我々一介の民間人では理解しえない“三種の神器”であるのかもしれません。

「叙勲」が官僚はじめ公務員にとってそれほどまでにも大きな意義を持つのであるなら、いっそのこと文化勲章を除いた「叙勲」対象を公務員に限定をしてはどうでしょう。公務員住宅廃止の議論や、公務員給与引き下げの議論が白熱するたびに、ネット上などで公務員擁護派が必ず口にするのが「国を支える優秀な人材の確保」に向けたモチベーション維持の観点で問題ありという意見です。ならば、公務員になりたいなどとこの人生において一度たりとも思ったことのない私には知る由もありませんが、「叙勲」が彼らのモチベーション維持や向上に資するのであるなら、これを使えばいいのではないかと。要するに、「給与は安いしその他の既得権的恩恵は廃止になるけど、民間では手に入れられない「名誉」が手に入るよ」という施策です。

具体的な「叙勲」が歳をとるまで待てないこともあるでしょうから、毎年実績に応じて「勲位」を上げていってあげれば、金もかからずに公務員のモチベーションを維持する施策となりうるのではないでしょうか。“国民の代表”という「名誉」が欲しいだけで政治家を志す人間がいるように、天皇から授かる「国や公共への貢献者」という公務員しか得られない「名誉」があれば、きっと公務員志望の優秀な人材確保にもなるのかなと。私には理解できませんが、あの異様な「執着心」には“人種の違い”をつくづく感じさせられましたから。

国は「叙勲」でもなんでも使えるものは徹底的に使って、危機的な国家財政における支出の大幅削減に向けた“支出垂れ流し官僚既得権”の全廃をまずい急ぐべきと思いますが、いかがでしょう。

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5 コメント

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うわっ (通りすがり)
2011-11-07 22:23:10
人の心が分かっていない人の意見ですね。お里が知れます。
そんな機械的なシステムでモチベーションが上がる可能性はないでしょうし、そもそも昭和じゃあるまいし今時の公務員が叙勲を欲しがるとも思えませんし、一方で、公務以外での長年の地道な仕事で叙勲を受けた方々を愚弄しています。
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あの~ (公務員ですが…)
2011-11-08 05:06:12
叙勲なんかいらないです。
一握りの欲しがってしょうがない人を語るのに、「公務員」という言葉で括らないでほしい。
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幹部官僚確保? (Unknown)
2011-11-08 08:17:27
大半の公務員がそんなものいらないっていうのは確かに道理。バカな政治家に好きな様にさせない一握りの優秀な“人種の違う”人材がしっかり官僚をめざしてくれる材料になってくれればイイってこと言ってんのかなと読んだ。その他大勢には関係ない話ですね。
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要資格オークション (Unknown)
2011-11-08 11:44:38
叙勲に価値を見出す人に、競い合って高値で買ってもらえばよいでしょう。等級ごとに一定以上の経歴があれば、入札出来るようにするのです。意外と金を出してまで欲しくない、という人が多いのではないかと。
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平安時代からです (さすらい日乗)
2011-12-02 05:52:47
叙位叙勲、つまり位を買い、売るのは、平安時代の貴族の特権、仕事だったわけで、それが今も続いているのです。
「叙勲の一番の近道は、その選挙区の参議院議員に頼むこと」と言われていました、自民党時代のことです。
こんなものをどうして、と思うでしょうが、欲しい人は沢山います。民間企業の創業者で、3K企業を立派な会社にした人などです。そのことで十分に立派だと思いますが、やはり社会的に認めてもらいたいのでしょう。

物欲、食欲、名誉欲が人間の3欲ですが、この内、死んでも残るのが名誉欲で、「叙勲は、墓に彫れる」のだからだそうです。
実にバカらしいことなのですが。
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