日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日本郵政“再国有化人事”の裏にある、開けてはいけない「パンドラの匣」

2009-10-29 | ニュース雑感
昨日発表された日本郵政の新役員人事。斎藤次郎・元大蔵事務次官の社長は既報の通りでありますが、副社長に坂篤郎・前内閣官房副長官補、足立盛二郎・元郵政事業庁長官の両氏を起用し、まさに「再国有化」を宣言したかのような新経営体制となりました。三事業のユニバーサル・サービス化による組織管理の緩慢化や、それにともなう“第二の日航化”による将来的な国民負担の可能性はすでに当ブログで取り上げたとおりですが、今回は金融・財政の分離の観点から「再国有化」の問題点を考えてみたいと思います。

今回の鳩山内閣による来年度予算策定における概算要求ベースでの予算規模は実に90兆円以上にものぼっています。これは各方面でバラマキ公約のツケ払い予算としてかなり問題視されていますが、最大の問題点は税収との収支バランスの問題です。予想される来年度の税収は引き続きの景気の低迷もあって、40兆円を下回るのではないかと言われており、50兆円以上の赤字予算の足りない分は借金でまかなわなければならないことは、子供でも分かるような状況にあるわけです。

国家の借金とはイコール国債発行です。すなわち来年度の国債発行額は50兆円を超える規模になるということなのです。これは大変なことです。現在我が国の国債発行残高は08年末時点で850兆円に迫ろうかという状況にあり、さらに来年度50兆円が上乗せされようというわけですから、事態はかなり深刻な状況なのです。何が深刻な状況かと言いますと、すなわち国債の発行高すなわち国の借金が増え続けしかも来年度空前の50兆円越えという発行増は、国の信用を著しく下げることになるわけで、そうなると国債の金利が急騰し円暴落とインフレを引き起こしそれがまた国債が売られる悪循環を招き国債市場が崩壊するという懸念があるのです。

国の信用が落ちるとなぜ国債の金利が上昇するかですが、要は国の信用力が落ちるとその債権の引き受け手がなくなり、利回りを上げないと引き受け手がつかなくなるわけで、危ない債権や貸出ほど金利が高くなる原理と同じことなのです。さぁここで登場が予想されるのが、「再国営化郵政」なのです。すなわち、国債増発で引き受け手がみあたらなくなるであろう国債を日本郵政の貯金&簡保預かり金で買い支え、金利上昇を防いで国債市場の崩壊を防ごうという腹黒い戦略が、今回の「再国営化」の裏にはあるのではないかと思われるのです。“脱官僚”を掲げる鳩山首相が、今回の人事をいとも簡単に了承した陰にはそんな狙いがあるのではないかと…。

国債の増発を政府が日銀に買い支えさせることは、財政・金融分離の原則に反する国家的金融操作であり、ある意味戦時体制をほうふつとさせる強権政治の復活でもあって国家信用を著しく下げ、金融パニックに陥れられる危険が大いにあるのです。では日銀ではなく郵貯ならいいのか、です。それとて、実質的には一巨大国営金融機関の資金運用を政治的支配下に置き、国債を買い支えることは財政・金融分離の原則からみれば明らかにおかしなことであり、この状態が長期化するならば早晩マーケットは国家財政の破たん状態を見抜き、「国債暴落→ハイパーインフレ勃発」による金融資産の半減等の価値暴落をも引き起こしかねないのです。

このように財政と金融の分離原則は本当に重要なことであり、もし政府による今回の日本郵政の「再国有化」の狙いがそこにあるのだとすれば、大変恐ろしいことなのです。“バラマキ公約”履行のためにこの「パンドラの匣」は決して開けてはならないのであり、最終的に国民の資産を半減させいわば“タコあし”を食べるかのような“バラマキ予算”であるのならキッパリと見送るべきであると、マスメディアも世論も今回の日本郵政人事策の異常さを察知し監視の目を光らせなくてはいけないと思うのです。

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1 コメント

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民主党の渡り人事 (道草)
2009-10-29 19:51:37
鳩山由紀夫がいかにごまかしの言い訳をしても、斎藤次郎は明らかに天下り・渡りである。
天下り・渡りを問題にしてきた民主党が自ら天下り・渡りをさせるわけであるから、鳩山由紀夫は責任を取るべきである。
民主党政権は異様な特異体質であり、亀井静香や千葉景子などの炎症を起こしたアキレス腱が多い。
鳩山・亀井・斉藤の社会主義国営の郵便局は決して使わず、
その代わりにコンビニ、ヤマト運輸、銀行、保険会社及び証券会社等を利用しよう。
そして、官営郵政を完全に衰退させて、預金等が国債の購入に使われないようにしたい。
国債の利払いは約10兆円になっており、税収の2割を超えている。
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