日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ipadとキンドルの“呉越同舟”は、「オープン・ソース」のなせる技

2010-04-05 | マーケティング
話題のipad関連の記事で気になるものを見つけましたので少々。

今朝の日経新聞の囲み記事で「アマゾン・アップル「ライバル」奇妙な共存」という見出しのモノがそれ。その記事によれば、電子書籍拡販でしのぎを削る両社、取り扱い電子書籍の数ではアマゾンの端末キンドルが45万冊に対してipadは6万冊と、アマゾン圧倒的優位の関係にあります。それでありながらアマゾンはipadでキンドルの書籍を読むためのソフトを無料配布しているとのこと。もちろんアップル側がソフトの搭載を認めていればこその事実なのですが、この協力関係は日本の常識ではちょっと不思議な感じがするかもしれません。

優位に立つアマゾンが積極的にこの動きに出ているのは当然、自社の書籍を端末がどこのものであれ多く読んでもらいたいとの狙いあればこその策。一方のアップルのipadは単なる読書端末ではなく、映画鑑賞やゲーム端末としての機能も併せ持っており、その多様性で勝るが故の端末販売促進が狙いであるという訳です。たまたま、同じ読書端末であっても売りたいものが違っていたから成立する話といってしまえばそれまでですが、日本企業同士の場合にこううまくいくのかと言えば、なかなか難しいのではないかと思ってしまいます。

このライバル“提携”を根底で可能にしているものは何かと言えば、アップルの「オープンソース化戦略」に他なりません。アップルは、ipod、iphoneにおいてもいち早くそのOSをオープンソース化し開かれたプラットフォームとすることで、誰もが自由にアプリケーションを作成できる環境を提供し「iphoneには欲しいアプリがそろっている」というCM通りの状況を作り出して大成功を納めているのです。この「オープンソース化戦略」は、昨年あちらでベストセラーになった「FREE」の世界でもあります。アマゾンがipad上でキンドルの書籍を読むためのソフトを開発できたのは、まさしくアップルの「オープン・ソース化戦略」あればこそでありますが、遠慮構わずアマゾン利用者の利便性優先でipadとの“相乗り”戦略を決断したアマゾンも、負けず劣らずなかなかデキた企業であると言っていいと思います。

それに比べて我が国のIT産業のケツの穴小さいこと小さいこと。そうです、先週取り上げた携帯電話キャリア各社が「既得権ビジネス」を守らんがために、「iモード」に代表される利用者の利便性を後回しにするような“クローズド・ソース戦略”には、心底ガッカリさせられます。欧米のことわざ「Sometimes the best gain is to lose. 」にあたるものが、日本にも「損して得取れ」という言い回しであるハズなのですが…。官僚文化の下ではそもそも「損」はその辞書にはないようで…。今ある権益を守ろう守ろうとするのは“島国根性”のようにも思われますが、携帯業界ばかりでなく我が国のビジネスそのものが“ガラパゴス化”しないか少々心配になってしまいます。

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