日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

銀座・有楽町~老舗デパート苦し紛れの迷走劇?

2011-10-25 | ビジネス
15日に有楽町マリオンの阪急百貨店がリニューアルオープン。28日には同じマリオンの西武百貨店の後釜である有楽町ルミネがグランドオープンします。一方ボーナス商戦を控えた有楽町百貨店の活性化に呼応して、銀座の百貨店も動きがあわただしくなってきました。長年のライバル松屋銀座と銀座三越が19日、初の共同イベント「ギンザファッションウィーク」をスタートさせ、不況下で締まり気味になっている消費者の財布のヒモをなんとかゆるめようと熱い戦いの火ぶたが切って落とされた、そんな印象です。

そもそもの流れはこうです。不況にあえぐ銀座界隈に外資を含めた低価格アパレル販売の進出が相次ぎ、隣接地域の有楽町まで巻き込んでの業界地図塗り替えが始まったのがここ4~5年の流れ。有楽町マリオンの西武デパートは防衛策として女性特化の戦略を打ち出したものの、隣接地域への丸井イトシアの新規出店もあり、敢え無く撤退の憂き目に。銀座松坂屋はメインテナントに外資系低価格ファッションブランド「フォーエバー21」を迎えると言う“禁じ手”に出て、テナント貸しへの転換ともとれる言わば“開店休業”状態に陥りました。松屋、三越、阪急は老舗名門のプライドに賭けて思いきった戦略の転換を図ってきた、そんな現状であるようです。

まず、阪急。西武とのマリオン対決の時代から黒字は確保しつつも、どこか中途半端で古臭い一般百貨店を続けてきました。イトシアの出店で赤字転落を余儀なくされ、起死回生策として打って出たのが高級紳士物に特化した「阪急MEN'S TOKYO」へのリニューアルでした。これは大阪梅田でのメンズ館の成功に味をしめての計画であるようです。同店では、「ここには世界中からビジネスマンや観光客が集まるが、これまで見合う規模のメンズ業態はなく十分成立する」と自信をみせているようですが、果たしてどうでしょうか。

個人的には難しいとみています。まず第一に梅田メンズ館の成功は、大阪と言う土地における阪急ブランドのなせる技であったという点。親会社の阪急電鉄沿線には芦屋をはじめ日本でも指折りの高級住宅地が軒を連ね、長年にわたって阪急沿線のハイソなブランドイメージが阪急電鉄グループのブランド作りに大きく貢献しています。それがあってはじめて高級紳士物メインのメンズ館は成り立つ訳ですし、また沿線高級住宅地の高所得者の層の暑さもこれを支える裏付けとなっているのです。一方関東で紳士物で成功している百貨店は唯一伊勢丹のみと言ってもいいほど難しい領域です。これとて長年にわたる企業のブランド戦略と有能なバイヤーの努力の賜物であり、阪急百貨店に対する確固たるイメージすらおぼつかない関東圏での冒険戦略は、先行きかなり険しいと言わざるを得ないように思います。

松屋、三越の共同戦線にはさらに「?」が付きます。「ギンザファッションウィーク」では、共通ブランドの開発や紙袋の共用化などで、銀座ブランドを“復権”させると鼻息は荒いようですが、所詮はプロダクトアウト的な送り手メインの戦略にすぎないように思えます。もう20年以上も前から消費の世界はマーケットイン主流の時代に移っているにもかかわらず、「古き良き銀座」の復興に向けてやり方まで昭和元禄を思わせる送り手メインに逆行するとは、新興勢力に追われて苦しまぎれに手を結んだ老舗デパート連合の迷える姿そのものであるかのようです。もちろんこの提携戦略がこの先どのように実のあるマーケットインの流れに移行していくのか、結論はそれからではあるとは思いますが・・・。

このような中、マリオンのルミネが28日にオープンする訳ですが、ルミネといえば20~30代をメインにした流行最先端をいくファッション・スペースです。H&Mやフォーエバー21がなぜ銀座界隈を変えつつあるのかを考えれば、低価格戦略でなくともルミネの有楽町進出は至って納得性の高いものであると思えます。そう考えると、個人的には“富裕層”や“復興”で呼び戻しを狙う老舗百貨店の、何とはなしに感じさせる時代感覚の“ズレ”が実に悩ましい気分にさせられたりもしますが、皆さんはどうお感じになりますか?

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