日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

“ドコモiPhone決定”と今後の注目点

2013-09-06 | ビジネス
「当社がアップル社の「iPhone」を発売する旨の報道がありましたが、当社が発表したものではございません。また、現時点において、開示すべき決定した事実はございません。」

NTTドコモが、本日未明の報道各社による「ドコモがiPhone取り扱い」報道を受けて発表したコメントです。報道各社のニュースソースは「関係者」。最初の報道は午前2時の日経のようですから、恐らく“裏取り”の必要ない限りなくトップに近い人物への、夜討ち取材で引き出したコメントを元にしたものかと思われます。新聞各社とも関係者取材により「どこかが書けば」という“確信”状態にあったのは間違いなく、日経の一報を見て一斉報道になった模様です。

ドコモ広報のコメント見てもお分かりの通り、どう読んでも「決定」と言っているようなものです。もし違うのなら、「事実と異なる」「事実はなく」の如き表現で否定するはずであり、「当社が発表したものではございません」は、あきらかにアップルに怒られないための言い訳であるのがアリアリ。しかも「現時点において、開示すべき決定した事実はございません」は、「決定した事実が仮にあっても、現時点で開示すべきものはない」と言っているに過ぎず、これも10日にアップルから正式発表された時に周囲から「嘘つき」呼ばわりされないための、予防線的発言にしか見えません。

これで、通信キャリア3社の競争条件が整って、三者のMNP合戦はいよいよ新局面に入ります。もちろん、ソフトもauも契約の縛りがあり「ドコモiPhone取り扱い→即MNP」とはならないので、当面はドコモからの契約者の流出ストップと契約縛り満了利用者の流入に留まり、さほど大きな動きにはならないでしょう。しかし、ソフト、au陣営が強力な引き留め策を講じないなら、規模の利益でジリジリとドコモ陣営に顧客を奪われることになるのではないでしょうか。ソフト、au陣営がいかなる次の一手を打ってくるのか、楽しみではあります。

ドコモ側とていいことばかりではありません。iPhoneはご存じのように、ドコモ独自のサービスが相乗りできずコンテンツビジネスを新たな柱に据える同社にとっては極めて不都合な商品であります。コンテンツビジネス収入までを見込んだ1台あたりの収益を考えるに、恐らく他社端末に比べて約半分程度になるのではないかと言う話を以前関係者から聞いたことがあります。今回の両社間での販売ノルマの合意点は、これまでの報道から恐らく販売台数の4割程度と想像できます。4割が即座に全契約の4割になるわけではありませんが、国内におけるiPhone人気が続くならば、ドコモにとっては収益率の面でボディーブロー的に効いてくるハズです。

この問題はどこに影響が出るのかと言えば、一番は販売店運営でしょう。これまで2社に比べて圧倒的だったドコモの販売店支援費の面で少なからず影響は出るはずですし、この先機種変更やNMP効果でiPhoneのシェアが高まれば高まるほど支援費への影響は避けられない状況になるでしょう。販売店にとってはiPhoneを扱えるのはありがたいものの、あまり売れすぎても収益性の面で自分を苦しめることになる、手放しでは喜べない状況にあるのです。

ドコモはこれまでも、仮に扱うとしてもiPhoneはあくまで「品ぞろえ」としての位置づけを強調してきていますが、販売台数の4割のシェアを持ち徐々に全契約数におけるシェアも高まっていくのならそれはもはや「品ぞろえ」では済まず、まさしく“ドカン屋”への道をまっしぐらになりかねないわけです。iPhone取り扱いスタート後こそが今後の日本の携帯ビジネスのあり様を左右する本当の正念場になるように思います。ドコモのiPhone取り扱いによって注目すべきは通信キャリア3社の顧客争いばかりでなく、国内携帯電話の約5割を占めるドコモのiPhone後戦略こそ大注目ポイントではないのかと思っています。

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