日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「独立」で失敗しないための3つのこと

2013-04-19 | ビジネス
これもアベノミクス効果であるのか、最近「独立」に向けた相談によく受けますので、その際にお話しいていることを少しまとめておきます。

「独立」というからには、「一人で立つ」ことです。「一人で立つ」とは何かですが、これは「支えるモノなく立つ」ということで、その意味からすると何か公的な「資格」を取ってそれを支えにして「立つ」場合や、親会社の庇護のもと別会社として「立つ」場合は、この場合の「独立」ではありません。

もちろん「資格」を取っただけでは商売にならないというものもありますので、「資格系独立」全部が全部これにあたるわけではありませんが、基本的には何の「資格的裏付」や「親の庇護」なしに「一人で立つ」ことを、ここでは「独立」の定義とさせていただきます。

一般的には「サラリーマン生活」からの独立というのが一番多いパターンです。この場合に「独立」すると何が一番変わるのかをまずしっかりと認識する必要があります。一番の違いは「時間」を基準として働くか否かです。サラリーマンは基本的にはどこまでいっても「時給いくら」の世界であり、給与が上がるのはすなわち、自分の働きが認められて「時給があがる」だけのことなのです。

その昔、植木等が「♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ!二日酔いでも寝ぼけていても、タイムカードをガチャっと押せばちょっくらちょいとパーにはなりゃしねえ」と歌っていたように、極端に言えば会社に行っていさえすれば仕事をしていようがしていまいがおカネになる、それがサラリーマンであるわけです。仮に自己の怠慢でクビを言い渡されたとしても、ある程度は法が守ってくれる部分もあるのです。

「独立」は全く違います。「時間」は関係ない。どんなに働きづめでいようが、どんなに長時間努力をしようが、稼げるか否か全てはそこにかかっているのです。言い換えれば「結果」がすべて。1日1時間労働でも、食べていけるだけのモノが稼げるならそれでOKですし、どんなに汗水たらして努力をしても稼げないのなら、仮に誰か傍の人が「がんばってますねぇ」と評価してくれたところで、それは何の意味も持たないのです。

ですから、「休みと仕事の区分けがない」それが「独立」です。仮にバカンスを楽しんでいても、ビジネスになりそうなモノに出くわしたなら、すぐにビジネスモードに切り替えてビジネスチャンスを逃してはいけませんし、無駄な仕事をするぐらいだったらビジネスを思いつくまで遊んでいようということもアリなのです。

よく人から、「サラリーマンと違って、時間が自由になってうらやましいですね」などと言われることがありますが、これは「リスク」とバーターで「自由」を手に入れているだけにすぎないわけで、全然うらやむようなものではないのです。「サラリーマンだって、会社倒産のリスクがある」とおっしゃる方がいますが、そんな「リスク」と「独立」のリスクは比較にならないです。勤務先の倒産リスクは事前把握をして、「転職」という手で逃げることが可能です。「独立」は事業主ですから逃げることができませんし、またいつどんな裏切りによってどん底に突き落とされるのか、常に見えない「リスク」に四方八方を囲まれているも同然なのです。蛇足ですが、サラリーマンにある万が一の時の「失業補償」は、「独立者」「経営者」にありません。

では、自分の「独立」の可否を決めるポイントは何か、です。3点あげます。
一点目は、上記に書いたとおりの当たり前のことではありますが、「独立」の正しい意味を理解できているかどうかということです。ここを履き違えて、「独立」をしてはみたもののすぐにビジネス破綻しサラリーマンに戻った人を数多く見てきました。このケースは、一言で言うなら「考えが甘い」ということになるのでしょう。

二点目は、会社の看板で仕事ができなくなるので、自分がもといた会社をのぞいて、2年間食いっぱぐれのないと思えるだけの豊富な「人脈」があるか否か。とにかく「独立」のキーは「人」です。そして、その「人脈」はオーナー系経営者をはじめとするサラリーマン以外の同じ「独立者人脈」である必要があります。サラリーマンは所詮はサラリーマン感覚でしかビジネスを考えられないので、本人の意にかかわらず思わぬ“裏切り”に会うこともこともしばしばです。イザと言うとき頼りになる、同じ「独立者」目線でビジネスを共有できる「人脈」の豊富さこそが有効であるのです。

2年間と申し上げたのは、仮に何かに失敗をしても2年間なんとかかんとか食べていけるなら、その時間で自己のビジネスを再生・再構築したり、新たなビジネスを立ち上げたりを可能にする十分な長さであると思われるからです。逆に2年間で立ち直れないのならば、残念ながらその人は「独立」には不向きであるという結論にならざるを得ないでしょう。ちなみに「人脈」の代わりに「資金」があると言うのでもOKです。良いか悪いかは別にして、おカネのあるとろには人が群がりますから、「人脈」はカネでつくることができるとは言えるでしょうから。

三点目。これが一番重要ですが、何事も自ら動く積極性を持っているか否か。言い換えれば、「何かが起きることを待たすに、自分で起こすこと」ができるかです。組織生活に慣れ親しんでしまうと、意外にこの点が弱くなるものです。運営が安定した組織であればあるほど、対処療法的な動きが身についてしまい、自分から動く・動かすということから疎遠になってしまうのです。

「よく仕事が切れることなく来てますね」と言われることもありますが、そもそも自分から何も動くことなく、あちらから仕事が舞い込んで来る、黙っていてそういう状態になることは普通あり得ません。私自身のあらゆる仕事も、露骨な売り込みではないにしても、積極的な自分からの働き掛けやアプローチ、仕掛けや仕込み等々さまざまな自発的かつ前向きな努力の積み重ねがあっての結果に他なりません。嫌な思い辛い思いもたくさんしています。「努力のないところに成果なし」です。自分から働きかけることなく、待ちの姿勢で「楽」をして稼ごうなんて、そんなにうまい話はありません。

新しいビジネスモデルを考えつけば出資者を集めてそれで一攫千金だ、と思い込んでいる若い人たちも最近はよく見かけますが、そんな幻想は捨てたほうがいい。何事にも例外は存在しますが、例外は目標にはなり得ません。下手な成功本に踊らされて、自分にもできそうだと一攫千金を夢見ることは勝手ではありますが、愚かでもあります。本に書かれていないところにこそ、「楽」とかかけ離れた成功の秘密があることを忘れてはならないと思います。

「楽」をしたいならサラリーマンであり続けること。相談に来られた方には最後にそうお答えしています。

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