日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

キンドル電子書籍を出してみた~書き手のメリットを考える

2012-11-22 | ビジネス
Kindle Paperwhiteの発売により、19日いよいよ本格スタートとなったアマゾン・ジャパンのKindleストア。新時代に乗り遅れてなるものか、というわけでもなかったのですが、小職著作をこのタイミングでKindleストア電子書籍として上梓したしました。
「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51(エレファントブックス刊/450円)」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00AA6CJYE/

なぜ電子書籍なのか、今回の経験を踏まえてここでは書き手の立場から少しお話してみようと思います。私が電子書籍で著作を出すことにした理由分かりやすく説明するために、本書の概要をごく簡単にかいつまんでおこうと思います。

本書は、私の長年にわたるバンカー、新聞記者、業界団体、中央官庁折衝担当、起業家、街おこし仕掛人等の様々な職歴を通じて「できる人」たちから学びつつ取得し、現在の企業コンサルティングや執筆業務に役立てさせてもらっているノウハウを、思考、コミュニケーション、会議、営業等のジャンルごとに区分けしてお見せし、読者の皆様のお役に立てていただこうというもの。言ってみればマイ「道具箱」の公開です。

このビジネス「道具箱」というのが実は厄介な存在で、その都度使い方のポイントが多少変わったり、流行りの使い方があったり、付随して新しい道具が登場したり等々、手入れを入念にしておかないとすぐに陳腐化する恐れもあるのです。そう言った意味では、このあたりを紙ベースの書籍で取り扱うのはけっこう辛い。似たようなビジネス書が次々と出されては消えていっているのも、こう言った事情による宿命でもあるのです。

そこで私は電子書籍なら補完して余りあると考えました。何よりも書き手にとって大きなメリットは、第一版をリリースした直後を含めていつ何時でも改訂版のリリースが可能であると言う点に尽きると思っています。何か企業不祥事が起きたから書き足したいとか、書き変えたいとか、あるいはまるごと1章を差し替えたいとかでも、何の気兼ねもなく簡単にできるのです。

紙の書籍ではそうはいきません。内容の改訂は必ず増刷という多額のコストがかかる作業とセットであり、初版にしてもそれなりのコストをかけて刷りあげている以上、ある程度の部数がはけない限りは多少の改訂であろうともままならないのです。小説とか、エッセイとかの類ではさほどこのメリットは感じないでしょうが、ことビジネス書についてはこの自由改訂機能は素晴らしく革命的な出来事であると思っています。

今回企画した本書においても、定期的な中身の補修と共にあらたな章建ての追加などにも前向きに取り組み、中身をどんどん充実させていくことが可能であろうと考え、そのつもりで第一版をリリースしております。読者へのバージョンアップ・サービスこそが、電子書籍において読者にもメリットを供与できる書き手サイドからの最大の利点なのではないかと思うからです。この読者に対する著作側からのアフターフォローを各書き手がしっかりとおこなっていくならば、低迷久しい出版業界にあって、ビジネス書一冊あたりの販売寿命、販売部数は大きく伸びていくのではないでしょうか。

ちょっと売れると似たような著作を粗製乱造する書き手がよくいますが、それはいたずらに著者の書き手としての価値を下げることに他なりません。一冊一冊の著作を大切にし、その一冊を通じて書き手が成長していくということもビジネス書の書き手に期待されるところではないのかと思っています。さらにビジネスの観点から言えば、ビジネス書はビジネスのあり方を問いかける分野でもあり、IT技術を駆使した電子書籍化の流れによる変化を他のジャンルと同じように受動的に待つのではなく、積極的に変化を投げかけることも望まれるのではないかと思うのです。

もうひとつ別の観点で書き手側の利点をあげるなら、やはり価格面のメリットでしょう。現在ビジネス書の主流であるソフトカバーが1,300~1,700円。新書版でも800~1,000円程度はします。一方今回の著作で言えば発行形態を電子出版に限定したことで、それらと同等の約6万字を越える文字数収録でありながら450円でのリリースが可能になっています。今時、コーヒー1杯より安い。たばこ一箱レベルです。紙代、印刷代がかからないというのは本当に大きいです。購入検討に際して、簡単に手を伸ばしていただける金額であると言う点で、書き手に大いにメリットありと思います。

電子書籍販売運用上の問題点、課題点は、やはり買う前に読者がものを手にとって目次を見ながらパラパラと好きな部分を空けて見てみという、自由な“立ち読み”がしにくいと言う点に尽きるでしょう。この点に関しては、書店の利点でもある“立ち読み”機能の中に盛り込むのがいいのではないでしょうか。すなわち、電子書店来店者は手に取った本を例えば1回5分間までという時間制限付きで中身をすべてめくることができるという機能を持たせるのです。本が好きな人間にとっては、“立ち読み”の楽しさも書店に足を運ぶ立派な誘引材料ですから、それのあるなしが電子書籍の発展に大きく関わってくるように思います。

いずれにしましても今回の電子書籍出版を通じて感じたことは、電子書籍がいきなり紙媒体にとって代わることはないにしても、ビジネス書分野においては送り手側の工夫ひとつで、紙とは有効性の違う新たな媒体として大きく発展していく可能性が十分あるといったところです。

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