温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

日本海ふるびら温泉 しおかぜ

2016年08月23日 | 北海道
 
引き続き積丹半島の温泉を巡ってまいります。今回取り上げるのは古平町の「日本海ふるびら温泉 しおかぜ」です。こちらは以前、廃校となった高校の校舎を活用した「一望館」という温泉施設でしたが、老朽化のために取り壊され、平成23年3月に漁師の番屋をイメージした現在の形でリニューアルされました。


 
古平の街や港を見下ろす丘の上に位置しており、見晴らし良好です。丘の下に温泉の排湯と思しきオレンジ色の液体がプールされている貯水槽を見つけたのですが、これはおそらく排湯処理施設なのでしょう。


 
受付斜め前には眺めの良い大広間が設けられており、お風呂から上がったお客さんたちが、テレビを見たり談笑しながらのんびりと寛いでいらっしゃいました。


 
大広間を左に見ながら廊下を進んで浴場へと向かいます。その廊下には古平の昔の街並みを記録した写真が展示されているほか、当温泉の旧施設である「一望館」時代のパネルも掲示されていました。


 
廊下の突き当たりが浴場です。お風呂には男女別浴室のほかに家族風呂もあるのですが、今回家族風呂は利用しておりません。
脱衣室はやや狭さを感じますが、白基調の室内は明るく綺麗で使い勝手もまずまずです。



タイル張りの浴室も明るくて清潔感があり、海に向かって窓が設けられているので、屋内空間でありながら開放感も得られます。浴室の窓に面して温泉浴槽が設置されている一方、手前の脱衣室側には洗い場が配置され、計7基のシャワー付きカランが取り付けられていました。


 
浴槽はメインである温泉槽のほか、真湯槽、水風呂、そしてサウナが並んでおり、他地域の温浴施設と同様、こちらでもサウナが人気を博していました。


 
窓の外側には露天風呂もあるのですが、私が訪れた冬季はクローズされており、利用することはできませんでした。温泉分析書によれば湧出量は毎分50リットルですから、冬に冷たい海風が直撃する場所で入浴に適した湯加減を維持できるだけの湯量が賄えきれないのかもしれませんし、何しろそのような立地ゆえ、冬季は吹雪や足元の凍結などで利用客が凍えちゃいますから、冬季クローズはやむを得ない措置なのでしょう。なおこの露天風呂は5月から10月の間で利用が可能なんだそうです。露天にお湯が張られていたら、港を眺めながら入浴することができたんでしょうね。


 
温泉槽は(目測で)5m×3m弱といったサイズ。大きな窓からは露天にも引けを取らない景色を望めます。湯口から注がれるお湯は濃いオレンジ色で、透明度は15cm前後しかないほど強く濁っています。石造りの湯口から吐出されるお湯はかなり熱く、その周りは焼けただれたような色に染まっていました。また、温泉に含まれる石灰が凸凹と瘤状にこびりついていました。湯船のお湯も結構熱いため、長湯するお客さんはおらず、皆さん烏の行水でサッサと上がっていきました。なお湯使いに関して、館内備え付けのパンフレットによれば100%源泉かけ流しとのことですが、おそらく多少の加水は行われているかと推測されます。ただ、私の訪問時はお湯の投入量が若干絞り気味でしたので、湯量を調整することによって極力加水を控えているのかもしれません。

お湯を口に含んでみますと、しょっぱさと赤錆味、そして少々の苦汁味が感じられ、弱い赤錆臭と土類系の匂いが嗅ぎとれました。湯中では食塩泉的なツルスベと塩化土類泉的なギシギシが混在しているものの、私の体感では6:4でツルスベの方が勝っているようでした。とはいえ、しょっぱくて熱いお湯ですから、湯浴みしているとすぐに火照ってしまい、長く浸かることができません。また湯上がりも汗が止まらず、いつまでもホコホコし続けました。
北海道の厳しい冬には心強い熱の湯と言えそうです。


ナトリウム-塩化物温泉 53.3℃ pH7.0 50L/min(動力揚湯) 溶存物質12.81g/kg 成分総計12.87g/kg
Na+:3710mg(75.98mval%), Mg++:250.6mg(9.71mval%), Ca++:570.6mg(13.40mval%), Fe++:15.6mg,
Cl-:6392mg(83.57mval%), SO4--:1488mg(14.36mval%), HCO3-:267.6mg(2.03mval%),
H2SiO3:55.7mg, HAsO2:3.1mg, CO2:51.4mg,
(平成22年1月5日)

北海道古平郡古平町大字新地町90番地1  地図
0135-42-2290
紹介ページ(古平町公式サイト内)

10:00〜21:00 第1・3木曜定休(祝日は営業)
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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神恵内温泉 リフレッシュプラザ998

2016年08月21日 | 北海道
 
前回記事では北海道後志の岩内町に湧く塩辛い温泉を取り上げましたが、今回は満を持して、強塩泉の真打ちが登場します。
温泉ファンの間では非常に塩辛い温泉として有名な、積丹半島神恵内村の「リフレッシュプラザ998」です。場所としては、海岸沿いの村中心部から古平方面へ向かって道道998号線を2kmほど山へちょっと入ったところにあり、茶色い外観の老人福祉施設が隣接しているのですが、温泉施設は小ぢんまりとしているため、どちらかといえば、老人福祉施設の方が目立っているかもしれません。名称の998とは、施設が面している道道の番号に因んでいるのでしょう。
館内に入って受付に設置されている券売機で料金を支払い、券をカウンターに差し出して、浴場へと向かいます。受付の前にはソファーが置かれたロビーがあるほか、24〜5畳はありそうな小上がり(座敷)もその隣に設けられていました。後ほどお湯から上がってから、ゆっくり休ませてもらいましょう。


 
浴室には後述するように計4つの浴槽が設けられていますが、温泉が用いられているのは最奧の1つのみで、残る3つは真湯または真水を張った浴槽です。この他サウナも用意されています。洗い場にはシャワー付きカランが計9基取り付けられていました。


 
浴室中央に据え付けられた円形の浴槽はジェットバスで、5〜6人は入れそうなサイズがあります。その隣には寝湯と水風呂が隣り合って設置されています。いずれも真湯(または真水)です。普段の私なら真湯の浴槽には大して興味を示さないのですが、この時ばかりは真湯の浴槽のありがたさを知ることになります。その理由は後ほど。


 
一番奧の温泉槽はタンクのように高くなっており、ステップで上がって湯船に入ることになります。湯船のお湯はオニオンスープのような色を呈しながら強く濁り、透明度は15〜20cm程度しかないため、私が初めて入浴した時には、手摺りをしっかり握って、足元を確認しながら慎重に入りました。
ネット上で見かけた数年前の画像を拝見しますと、以前の湯口は浴槽の最奧にあったようですが、私の訪問時には以前の湯口位置から新しく木樋が伸びており、浴槽の中ほどでお湯を吐出させていました。スケールが発生しやすいお湯であることは明らかですから、既存の湯口が詰まってしまったため、このように新たに配管を延ばして対応したのかと思われます。


  
浴槽の躯体には元々の素材がまったくわからないほど温泉成分が分厚くこびりついており、まるで大理石のようなマーブル模様で覆われていました。泉質名としてはナトリウム-塩化物強塩泉ですが、カルシウムイオンが547.4mg、炭酸水素イオンが4457mgも含まれているので(他の一般的な温泉だったら、「炭酸水素塩」が泉質名に含まれていても不思議ではないほどの量です)、これらによって炭酸カルシウムが生成されちゃうのでしょう。言わずもがな上述のスケールもこの炭酸カルシウムのしわざです。


 
内湯からグリーン一色の長い通路を進んでゆくと・・・


 
施設の屋上に設けられている露天風呂に出られました。テラスのような広いスペースの4分の1に楕円形の岩風呂が据えられています。四方は塀で囲まれていますが、頭上を覆う屋根などはなく、湯船に浸かると塀越しに周囲の山々を眺めることができました。


 
真っ黒い溶岩質の岩の中から、交換したばかりと思しき新しい塩ビ管が突き出ており、そこから温泉が吐出されていました。やはりスケールですぐに詰まってしまうのでしょう。それを裏付けるように、この温泉投入口付近は黒い岩をクリーム色に染めるほど炭酸カルシウムで覆われており、また浴槽の湯面ライン上にもサルノコシカケみたいな庇状の析出が発生していました。そして底には鼈甲色の破片もたくさん沈んでいました。

こちらの湯船にも内湯の温泉槽と同じく鼈甲色に強く濁った温泉が張られており、厳冬の外気に冷却されるおかげで、長湯したくなるような湯加減が維持されていました。でも、ここで迂闊に長湯をすることはあまりおすすめしません。と申しますのも、この神恵内温泉は日本屈指の強塩泉であり、海水の1.3倍にも及ぶ濃厚な塩分は、身体に半端じゃないパワーをもたらすからです。特に火照り方が非常に強烈であり、お湯に浸かり続けていると体が参ってヘロヘロになり、脱水症状に陥りかねません。温まりが強い温泉は、一般的にはボディーブローのように効いて徐々に逆上せてくるものですが、ここの温泉はジャブを繰り返された後にストレートがバーンと飛んでくるようにガッツリ火照るのです。しかも強い塩分のため、お湯へ入る瞬間には肌がピリピリと滲みてきます。とにかくノーガードでボコボコに殴られている感じなのです。このため、温泉槽でお湯のパワーを全身で受けた後に内湯の真湯槽へ入ると、真湯の優しさにホッと安堵し、真湯ってありがたいんだなと実感したのでした。

試しにお湯を口に含んでみたのですが、あまりの塩辛さに頬がキュッと修練し、すぐ吐き出したくなっちゃいました。おそらく鹹味の他にもあらゆる味覚が含まれているものと推測されるのですが、塩辛すぎて他の味はよくわかりません。一方、匂いに関しては、土類系や磯の香り、そして刺激を伴うようなヨードや臭素の匂いが嗅ぎとれましたが、いずれもさほど強くはなかったように記憶しています。湯中では食塩泉らしいツルツルと塩化土類泉的なギシギシが6:4で混在しており(あくまで私の実感)、ツルとギシが拮抗しつつも滑らかさの方が勝っているような感覚でした。


 
上述のように強烈に火照るお湯ですから、湯上がりには長い時間にわたって汗が引かず、まるで体内に熱源が埋め込まれたかのような状態になって、厳冬だというのに暫くはTシャツ1枚で過ごしました。そして受付前の座敷でグッタリしながら、館内で販売されていたソフトクリームを口にして体をクールダウンさせたのでした。


 
湯屋の裏手には廃湯がプールされていたのですが、これはおそらく排湯処理のための施設なのでしょう。あんな塩辛くてスケールが発生しやすいお湯をそのまま河川へ排水したら、周辺環境にエライ影響を及ぼしちゃうことは明らかですからね。
とにもかくにも、凶暴を超越したクレイジーな温まり方をする、非常に個性的で面白いお湯でした。


神恵内村4号井
ナトリウム-塩化物強塩泉 58.2℃ pH6.8 158L/min(自噴) 溶存物質45.53g/kg 成分総計45.93g/kg
Na+:15690mg(92.03mval%), NH4+:2.2mg, Mg++:251.1mg(2.79mval%), Ca++:547.4mg(3.68mval%), Fe++:3.0mg,
Cl-:22200mg(85.60mval%), S2O3--:0.2mg, SO4--:1513mg(4.31mval%), HCO3-:4457mg(9.99mval%), Br-:36.5mg, I-:1.7mg,
H2SiO3:65.3mg, HBO2:315.3mg, HAsO2:9.2mg, CO2:398.4mg, H2S:0.2mg,
(平成26年12月10日)
加水あり(源泉温度が高いため)

北海道古宇郡神恵内村大字神恵内村字大川116-1  地図
0135-76-5100
紹介ページ(神恵内村公式サイト内)

4月~10月→11:00~21:00(受付20:30まで)、11月~3月→12:30~20:30(受付は20:00まで) 火曜定休(祝日の場合は翌日)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤー

私の好み:★★★
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岩内温泉 ホテルグリーンパークいわない

2016年08月19日 | 北海道
 
引き続き北海道後志エリアの温泉を巡ります。前回記事のニセコ湯本温泉からニセコ連峰をぐるっとまわって、山の裏側の日本海側へとやってまいりました。まずは岩内町の「ホテルグリーンパークいわない」から伺うことにしましょう。こちらのホテルは岩内の街を見下ろす丘の上(円山地区)に立地しており、館内に擁するかけながしの温泉浴場では、積極的に日帰り入浴を受け入れています。


 
フロントで料金を直接支払い、ロビーの奥へと続く通路を進んで浴場へと向かいます。


 
廊下の途中には下足場があるのですが、上がり框と視認できるような段差が低いため、不注意な人は下足のまま進んでしまうかもしれません。そんな廊下をどんどん進んでステップを上がった先にかかる暖簾をくぐって脱衣室へ。インストルメンタルのBGMが流れる脱衣室は、きれいにメンテナンスされており、使い勝手良好です。


 
海側に大きな窓が広がっている浴室はとても明るく、広々していて開放的です。厳冬期に訪れたため室内には湯気が立ち籠めていましたが、湯気とともに湯の香も充満しており、その匂いを嗅ぐと一気にお湯への期待が膨らみました。窓と反対側には洗い場が配置されており、シャワー付きカランが計14基と立って使うシャワー1基が並んでいます。


 
窓下の眺めが良い場所に浴槽が設けられており、温度によって2つに分かれています。手前側の小さな浴槽は3.5m四方サイズで、熱め(44℃前後)にセッティングされたお湯が張られていました。


 
一方、奥の大きな浴槽はqの字を横にしたような形状をしており、一番長い辺で7.5m×3.5m。こちらは万人受けする41〜2℃の湯加減となっています。
両浴槽を隔てる仕切りの上に温泉の投入口が設置されており、双方に向かってお湯がドバドバとふんだんに供給されていました。そして湯船のお湯は窓下の溝へと溢水していました。オーバーフローの多くはその溝へと流れ落ちるのですが、多少は洗い場にも溢れ出るため、床のタイルは温泉成分の付着によって茶色く染まっています。


 
露天風呂からは丘の麓に広がる岩内の街、積丹の山稜、そして日本海が一望でき、またお風呂の周りにも玉砂利を敷くなど日本庭園風の装飾が施されているので、和の雰囲気を感じながら、素晴らしい景色を眺めて湯浴みすることができました。露天浴槽の上には屋根が掛かっているので、多少の雨や雪なら凌げそうです。


 
石積みの湯口からは配管が湯船の下へと伸びており、お湯が槽内投入されていました。そして浴槽縁からしっかりと溢れ出ていました。湯加減はちょっと熱めの43℃前後でしたが、海から冷たい風が吹くので、このくらい熱い方が良いのかもしれません。

お湯はオリーブの実を思わせるウグイス色を帯びた黄土色に強く濁っています。溶存物質28.45g/kgのナトリウム-塩化物強塩温泉という点からも明らかなように、お湯を口に含んでみると非常に塩辛く、苦汁味や弱金気味、そして土類感が感じられます。また、鼻腔をツーンと刺激するようなハロゲン系の匂い、臭素臭、磯の香り、そして弱金気臭が嗅ぎとれます。館内表示によれば各浴槽とも放流式の湯使いであるものの、加水および塩素系薬剤の投入が行われていますが、多少の加水でも揺るがないほど塩辛さは強烈であり、また消毒臭に関しても気になりませんでした(いや、温泉が持つ匂いが強いため、消毒臭なんてかき消されちゃっていたのかも)。内湯も露天も投入量が多いためにお湯の鮮度感が良く、特に露天は眺めが大変素晴らしいため、気持ち良くていつまでも湯浴みしていたくなるような気分になりました・・・。が、塩辛い温泉ということは、力強く火照るわけで、たとえ寒風吹きすさぶ厳冬の日本海に面した露天風呂であっても、数分浸かるだけで徐々に逆上せ始め、やがて我慢できなくなって湯船から這い出ることになります。その温浴パワーは力強いという表現を超えて凶暴の域に達しており、氷点下にもかかわらず湯上がりにはしばらく汗が引きませんでした。入浴中に他のお客さんの入浴行動を観察していると、皆さん湯船には烏の行水で、むしろ湯船から上がった後にシャワーで丹念に温泉のお湯を漱ぎ落としていました。それゆえ、お客さんの回転が早く、私のように長く居続けている方はいませんでした。常連の方はここのお湯の特徴をよくご存知なのですね。
日本海側では、男鹿半島・新潟県下越地方・富山県氷見周辺などでも、似たようなタイプのお湯が点在していますが、この岩内の温泉もこれらと同じ系統だと考えて良いのかもしれません。お湯に癒されるというよりも格闘すると表現した方が良いかもしれませんが、そんな体験ができるのも本物の温泉だからこそ。眺めは素晴らしいですし、お湯も個性的ですので、訪れる価値は十分にあるかと思います。今回記事は紹介できませんが、この露天からは夜景が綺麗なんだそうですから、泊まるのも良いですね。


いわない温泉8号井
ナトリウム-塩化物強塩温泉 58.8℃ pH6.7 410L/min(動力揚湯) 溶存物質28.45g/kg 成分総計28.52g/kg 
Na+:8482mg(76.09mval%), NH4+:8.6mg, Mg++:820.7mg(13.93mval%), Ca++:705.0mg(7.26mval%), Fe++:8.5mg,
Cl-:16000mg(92.96mval%), SO4--:1399mg(6.00mval%), HCO3-:278.7mg(0.94mval%), I-:1.5mg, Br-:34.0mg,
H2SiO3:197.8mg, HBO2:25.6mg, CO2:73.5mg,
(平成21年10月9日)
加水あり(源泉温度が高いため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を投入)
加温循環なし

北海道岩内郡岩内町宇野束500  地図
0135-62-8841
ホームページ

日帰り入浴8:00〜20:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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ニセコ湯本温泉 湯ごもりの宿 アダージョ

2016年08月17日 | 北海道
 
前回取り上げたニセコ湯本温泉の「雪秩父」はリニューアルオープンに伴い宿泊営業をやめて日帰り入浴専門施設となりましたので、当地で宿泊するならば別の施設へ移動しなければなりません。そこで今回はニセコ湯本の別荘地の中にあるお宿「湯ごもりの宿 アダージョ」で一晩お世話になることにしました。道道66号線から路地を入った最奥のわかりにくい場所にあるため、一発で現地へたどり着くのは難しいかもしれません。私は冬の夜に宿へ向かったのですが、周囲は真っ暗で看板など見当たらず(雪に埋もれていたのか?)、レンタカーもカーナビもあてにならず、現地へ行き着くまで軽く辺りを右往左往してしまいました。


 
旅館というよりペンションといった風情のお宿ですが、館内は本館と新館に分かれており、客室タイプも和室と洋室の両方が用意されています。分かれているのはお部屋のタイプのみならず、お風呂に関しても本館と新館で異なり、本館の部屋に泊まる場合は露天岩風呂と展望風呂を貸切利用するのですが、新館の場合は各客室に付帯しているお風呂をいつでも自由に利用できるかわり、本館のお風呂は利用できません。
私は和室よりベッドの方がよく寝られるので、今回は某大手宿泊予約サイトを通じて、新館の洋室を予約することにしました。広くて明るいフローリングのツインルームには、大きなテレビとDVDプレーヤー、ソファーなどが備え付けられ、Wifiもしっかり飛んでいて、ゆったり快適に過ごすことができました。なお後述するお風呂から漏れてくる温泉の硫黄で機器が故障しやすいため、冷蔵庫だけは室内に設置されておらず、廊下に置かれている共用のものを使うことになります(実際に翌朝の室内には硫黄の匂いがほんのりと漂っていましたので、機器へのダメージは大きいものと思われます)。



室内には洗面台やトイレも付いていますから、使い勝手はとても良好です。


 

フロントまわりにはDVDがたくさん並んでおり、宿泊中は自由に借りられますから、好みの映画を見ながら部屋でゆっくりしても良いですね。廊下にはお茶のサービスが用意されているほか、ソフトドリンクやビールの自販機も設置されていました。ここが山奥だとは思えないほど便利です。



こちらのお宿は限られた人員で運営しているらしく、私が泊まった日はたまたま夕食不可だったため、事前に麓の街にあるセイコーマート(北海道のローカルコンビニ)でお弁当などを買い込んで、お宿の方にお願いして電子レンジで温めてもらいました。このように飲食品類の持ち込みは自由とのことです。余談ですが、セイコーマートのお弁当は安くて美味しいですよね。


 
朝食は食堂でいただきます。和洋折衷でボリュームたっぷり。とても美味しい朝ごはんのおかげで、この日も元気に旅することができました。


 
さて、拙ブログの趣旨である温泉のお風呂について述べてまいりましょう。先ほども申し上げましたように、新館には全室に温泉のお風呂が付帯しており、宿泊中はいつでも自由に温泉に入ることができます。客室によってお風呂のつくりも異なるようですが、今回泊まったお部屋のお風呂は完全内湯タイプでした。木のぬくもりが感じられる浴室は、1〜2人で使うにちょうど良いコンパクトな空間となっており、足元はスノコ敷きで、洗い場にはシャワーが1基設けられていました。


 
完全な内湯とはいえ、窓の外には雪景色が広がっており、窓を開ければ半露天状態になりますので、硫黄の湯に浸かりながら雪見風呂を楽しむことができました。


 
浴槽も1〜2人サイズで、槽内はコンクリですが縁には木材が用いられており、小さいながらもそこはかとなく温泉風情を醸し出しています。壁から2本のフレキ管が突き出ており、それぞれ上部にバルブが取り付けられています。言わずもがなこの2本は水と温泉の配管であり、チェックイン前にあらかじめ宿の方が入浴に適した湯加減となるように投入量を調整してくださっているのですが、自分でバルブを開け締めして投入量を加減することも可能です。バルブを締めない限り、配管からは常時お湯が注がれており、縁から絶え間なく溢れ出ています。誰の肌にも触れていないフレッシュなお湯であり、且つ私のためだけに張られたお湯です。なんて贅沢なバスタイムなのでしょう。

こちらは大湯沼のお湯を引いており、基本的には前回記事で取り上げた「雪秩父」の硫黄泉と同じフィーリングで、グレー色の濃い濁りを呈し、強い硫化水素臭を放ち、弱酸味と苦味、そして口腔に残る痺れやえぐみが感じられます。そして湯に浸かるとクリーミー且つパウダリーな浴感が得られます。しかしながら、数百メートル引湯される間にお湯がこなれてくるのか、「雪秩父」で確認できたようなツーンとくる刺激臭やドロドロ感、硫化鉄による黒いこびりつきなどは抑えられており、マイルドで入りやすい状態になっていました。冬季ゆえに加水することなく源泉のままで適温が保たれ、且つ窓を全開にすることによって長湯仕様のぬる湯になってくれるため、宿泊中には何度もお風呂に入って、大湯沼の温泉を存分に満喫させてもらいました。

お部屋はきれいですし、お宿の方も親切で優しく、何よりも大湯沼の硫黄泉を独占できちゃうことが素晴らしい。
泊まって良かったと実感したお宿でした。


湯元温泉(大湯沼)
単純硫黄温泉(硫化水素型) 48.8℃ pH3.6 62L/min(引湯量) 溶存物質0.140g/kg 成分総計0.165g/kg 
H+:0.3mg(21.43mval%), Na+:6.7mg(20.71mval%), Mg++:3.6mg(21.43mval%), Ca++:6.6mg(23.57mval%), Al+++:0.6mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:13.6mg(26.21mval%), S2O3--:0.4mg, SO4--:50.3mg(72.41mval%),
H2SiO3:51.7mg, CO2:15.5mg, H2S:9.0mg,
(平成16年11月19日)
加温加水循環消毒なし

北海道磯谷郡蘭越町字日出554-52  地図
0136-58-3331

宿泊のみ(日帰り入浴不可)

私の好み:★★★
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ニセコ東山温泉 ヒルトンニセコビレッジ

2016年08月15日 | 北海道
 
前々回記事まで続いていた、半年ほど前の冬の北海道シリーズに戻ります。ニセコの山々や羊蹄山を眺めてニセコ地区をドライブするうちに…


 
次なる目的地である「ヒルトンニセコビレッジ」(以下ニセコヒルトン)に到着しました。いまやニセコの名は世界中に轟いておりますが、この日もニセコヒルトンはとてもインターナショナル。明らかに日本語より他国の言語の方が多く飛び交っていました。


 
私がこちらを訪れたのは、別にセレブな気分になりたかった訳ではなく、当然ながら温泉入浴が目的です。日頃から行儀が悪い私のような下賤の民には分不相応の高級リゾートですが、ニセコヒルトンでは1,000円で日帰り入浴を受け付けており、私のような人間でも門前払いされることなく、快く受け入れてくれるのです。料金は、北海道にしては高額かもしれませんが、箱根や伊豆でしたら比較的よく見られる相場ですから、東京からのお客さんなら抵抗なく利用できるかもしれません。いや、それでも高いとお考えの方におすすめしたいのが「ニセコ湯めぐりパス」です。1,440円で加盟温泉施設のうち3ヶ所に入ることができ、このニセコヒルトンでも利用が可能なのです。このため、当地で温泉をハシゴしたい場合は、このパスを購入した方が絶対にお得ですよ。私もこのパスを購入した上でこちらを訪れました。

余談ですが、先日新宿にあるヒルトン東京のラウンジで海外からやってきた知人と待ち合わせをした際、注文したコーヒー1杯の値段はゼロが3つの4桁でした。同じヒルトンでも、北海道では温泉入浴できる金額が、東京ではコーヒー1杯にも満たないのですから、貨幣価値というものは国内でも地域によって全然違うんだなと痛感させられます。



諸外国後が飛び交うロビーは、中央に設けられた巨大な暖炉がとても印象的で、ラグジュアリ感たっぷりです。フロントで「ニセコ湯めぐりパス」を提示すると、スタッフの方は快く対応し、洗練された動きで浴場入場用のカードキー、そして無料貸出のバスタオルとフェイスタオルを1枚ずつ私に手渡してから、お風呂の位置を案内してくださいました。


 
フロントの先に浴場入口がありますので、カードキーを読み取り部分にかざして開錠し、浴場へと入ります。


 
さすがヒルトンだけあって、脱衣室は広くて清潔感にあふれています。
カゴや洗面台の数も他のホテルとは比べ物にならないほど多く、他客との干渉も無縁であり、もちろん使い勝手も抜群です。


 
 
外国人客の利用が多いホテルですから、日本語の他、英語・中国語(繁体字)・韓国語で注意喚起されており、壁に固定されれいるプレートの他、モニターでも図示を用いてわかりやすく説明されていました。


 
 
浴室に入った瞬間、温泉から放たれるアブラ臭が鼻を突いてきました。山形県の寒河江や大江村界隈に湧く温泉に近い匂いなのですが、まさかこんなところでアブラ臭を嗅げるとは予想だにせず、その匂いに興奮して、ついつい鼻をクンクンと鳴らしてしまいました。
内湯は浴槽に面した大きな曲線窓は特徴的であり、そのパノラミックウィンドウからは羊蹄山を一望できます。浴槽は大変広く、槽内投入されているお湯は、やや緑色掛かった暗めの山吹色に弱く濁っており、湯中には黄土色の湯の華が大量に舞っています。そして湯船に湛えられた温泉は、両サイドの排水溝へ絶え間なくオーバーフローしていました。


 
洗い場はひとつひとつのブースがゆとりをもって確保されており、しかも袖板でセパレートされているため、隣との干渉を全く気にせず利用することができます。各ブースには檜の桶と腰掛けが備え付けられており、現代的な建築様式である浴室内に、日本的なテイストを醸し出していました。なおブースの数は計14ヶ所。国際的な施設ゆえに13を避けたのかもしれませんが、ちょっと勘ぐりすぎでしょうか。


 
ドアを開けてステップを下ると露天風呂です。このステップには冬季でも足元が冷えないようお湯が流されていました。こうした配慮もまた一流ホテルならではの心配りですね。内湯の直下に設けられた露天風呂は、内湯の躯体を屋根代わりにしており、内湯と同等かそれ以上の広さを有しています。一般的な浴槽よりも若干浅い造りなのですが、これは後述する入浴方法にとっては最適なのです。また、熱いお風呂が苦手な外国人客でも入れるよう、且つ日本人でもじっくりと長湯を楽しむことができるよう、湯加減はぬるめに設定されていました。


 
この露天浴槽は仕切り一枚を隔てて人工池と接しており、湯船に浸かると、まるで池と温泉が一体化しているかのような感覚になります。そして池の向こうには羊蹄山が泰然と聳えており、入浴客はみなさん池との仕切りに顎をのせ、体を伸ばして湯に浸かりながら、この雄大な景色を眺めていらっしゃいました。浅い湯船はこの姿勢で入浴するのにもってこい。ちゃんと考えて設計されているわけですね。なおお湯のオーバーフローは、その池へと流れ落ちていました。


 
露天の湯口から落とされるお湯は直接触れないほど熱く、内湯以上に濃く濁っていたのですが、それに関連して湯の華も非常に多く、特に湯口周辺の底部で大量に沈殿しており、お湯を動かすとボワっと一気に舞い上がって、湯浴みしている体が湯の華まみれになってしまいました。湯の華好きな温泉マニアの御仁にはたまらない現象かもしれません。
お湯を口に含んでみますと、塩辛いと表現したくなるほど明らかな塩味があり、弱い金気も伴い、内湯浴室に漂っていたようなアブラ臭もはっきりと嗅ぎとれました。そして食塩泉らしいツルスベの滑らかな浴感が得られました。濁り方や色、湯の華の現れ方、味、そして匂いなど、山形県朝日町の「りんご温泉」を彷彿とさせるのですが、「りんご温泉」もこのニセコ東山温泉(ニセコヒルトン)も、おそらくはグリーンタフ型の温泉なのでしょう。北陸〜東北〜北海道にかけての日本海側にはグリーンタフ(緑色凝灰岩)が地中に帯状に分布しており、これに伴って黒鉱・石油・天然ガス・温泉などの鉱物資源も点在しています。グリーンタフ型の温泉に関しては、しょっぱい黄土色の濁り湯だったり、アブラ臭のお湯だったり、無色透明の硫酸塩泉だったりと、場所によって現れ方が異なりますが、山形県朝日町やニセコ東山の地下には地質的特徴に何らかの共通点があって、似たような知覚的特徴の温泉が湧出するのかもしれません(とっても大雑把な推論なので、間違っていたらゴメンナサイ)。

細かな能書きはともかく、ロケーションといい、細かいところに手が届く造りといい、お湯の質といい、全てにおいてマーベラスな温泉浴場でした。料金とお湯の良さは反比例することが多いのですが、こちらはその公式を見事に覆してくれました。こちらを訪れる外国人旅行者の方々は、きっと日本の温泉の良さを満喫してくださることでしょう。


ニセコビレッジ源泉
ナトリウム-塩化物温泉 72.1℃ pH6.8 419L/min(動力揚湯) 溶存物質7.245g/kg 成分総計7.413g/kg
Na+:2037mg(81.21mval%), Mg++:99.0mg(7.47mval%), Ca++:148.2mg(6.78mval%), Fe++:5.6mg,
Cl-:3403mg(84.05mval%), SO4--:161.2mg, HCO3-:902.2mg(12.95mval%),
H2SiO3:268.2mg, HBO2:42.6mg, CO2:168.2mg,
(平成20年5月26日)
湯張り時のみ加水実施(源泉の温度が高いため)
加温循環ろ過なし

北海道虻田郡ニセコ町東山温泉  地図
0136-44-1111
ホームページ

日帰り入浴13:00〜21:00 通年営業
1,000円(ニセコ湯めぐりパス利用可能)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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