温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ニセコ東山温泉 ヒルトンニセコビレッジ

2016年08月15日 | 北海道
 
前々回記事まで続いていた、半年ほど前の冬の北海道シリーズに戻ります。ニセコの山々や羊蹄山を眺めてニセコ地区をドライブするうちに…


 
次なる目的地である「ヒルトンニセコビレッジ」(以下ニセコヒルトン)に到着しました。いまやニセコの名は世界中に轟いておりますが、この日もニセコヒルトンはとてもインターナショナル。明らかに日本語より他国の言語の方が多く飛び交っていました。


 
私がこちらを訪れたのは、別にセレブな気分になりたかった訳ではなく、当然ながら温泉入浴が目的です。日頃から行儀が悪い私のような下賤の民には分不相応の高級リゾートですが、ニセコヒルトンでは1,000円で日帰り入浴を受け付けており、私のような人間でも門前払いされることなく、快く受け入れてくれるのです。料金は、北海道にしては高額かもしれませんが、箱根や伊豆でしたら比較的よく見られる相場ですから、東京からのお客さんなら抵抗なく利用できるかもしれません。いや、それでも高いとお考えの方におすすめしたいのが「ニセコ湯めぐりパス」です。1,440円で加盟温泉施設のうち3ヶ所に入ることができ、このニセコヒルトンでも利用が可能なのです。このため、当地で温泉をハシゴしたい場合は、このパスを購入した方が絶対にお得ですよ。私もこのパスを購入した上でこちらを訪れました。

余談ですが、先日新宿にあるヒルトン東京のラウンジで海外からやってきた知人と待ち合わせをした際、注文したコーヒー1杯の値段はゼロが3つの4桁でした。同じヒルトンでも、北海道では温泉入浴できる金額が、東京ではコーヒー1杯にも満たないのですから、貨幣価値というものは国内でも地域によって全然違うんだなと痛感させられます。



諸外国後が飛び交うロビーは、中央に設けられた巨大な暖炉がとても印象的で、ラグジュアリ感たっぷりです。フロントで「ニセコ湯めぐりパス」を提示すると、スタッフの方は快く対応し、洗練された動きで浴場入場用のカードキー、そして無料貸出のバスタオルとフェイスタオルを1枚ずつ私に手渡してから、お風呂の位置を案内してくださいました。


 
フロントの先に浴場入口がありますので、カードキーを読み取り部分にかざして開錠し、浴場へと入ります。


 
さすがヒルトンだけあって、脱衣室は広くて清潔感にあふれています。
カゴや洗面台の数も他のホテルとは比べ物にならないほど多く、他客との干渉も無縁であり、もちろん使い勝手も抜群です。


 
 
外国人客の利用が多いホテルですから、日本語の他、英語・中国語(繁体字)・韓国語で注意喚起されており、壁に固定されれいるプレートの他、モニターでも図示を用いてわかりやすく説明されていました。


 
 
浴室に入った瞬間、温泉から放たれるアブラ臭が鼻を突いてきました。山形県の寒河江や大江村界隈に湧く温泉に近い匂いなのですが、まさかこんなところでアブラ臭を嗅げるとは予想だにせず、その匂いに興奮して、ついつい鼻をクンクンと鳴らしてしまいました。
内湯は浴槽に面した大きな曲線窓は特徴的であり、そのパノラミックウィンドウからは羊蹄山を一望できます。浴槽は大変広く、槽内投入されているお湯は、やや緑色掛かった暗めの山吹色に弱く濁っており、湯中には黄土色の湯の華が大量に舞っています。そして湯船に湛えられた温泉は、両サイドの排水溝へ絶え間なくオーバーフローしていました。


 
洗い場はひとつひとつのブースがゆとりをもって確保されており、しかも袖板でセパレートされているため、隣との干渉を全く気にせず利用することができます。各ブースには檜の桶と腰掛けが備え付けられており、現代的な建築様式である浴室内に、日本的なテイストを醸し出していました。なおブースの数は計14ヶ所。国際的な施設ゆえに13を避けたのかもしれませんが、ちょっと勘ぐりすぎでしょうか。


 
ドアを開けてステップを下ると露天風呂です。このステップには冬季でも足元が冷えないようお湯が流されていました。こうした配慮もまた一流ホテルならではの心配りですね。内湯の直下に設けられた露天風呂は、内湯の躯体を屋根代わりにしており、内湯と同等かそれ以上の広さを有しています。一般的な浴槽よりも若干浅い造りなのですが、これは後述する入浴方法にとっては最適なのです。また、熱いお風呂が苦手な外国人客でも入れるよう、且つ日本人でもじっくりと長湯を楽しむことができるよう、湯加減はぬるめに設定されていました。


 
この露天浴槽は仕切り一枚を隔てて人工池と接しており、湯船に浸かると、まるで池と温泉が一体化しているかのような感覚になります。そして池の向こうには羊蹄山が泰然と聳えており、入浴客はみなさん池との仕切りに顎をのせ、体を伸ばして湯に浸かりながら、この雄大な景色を眺めていらっしゃいました。浅い湯船はこの姿勢で入浴するのにもってこい。ちゃんと考えて設計されているわけですね。なおお湯のオーバーフローは、その池へと流れ落ちていました。


 
露天の湯口から落とされるお湯は直接触れないほど熱く、内湯以上に濃く濁っていたのですが、それに関連して湯の華も非常に多く、特に湯口周辺の底部で大量に沈殿しており、お湯を動かすとボワっと一気に舞い上がって、湯浴みしている体が湯の華まみれになってしまいました。湯の華好きな温泉マニアの御仁にはたまらない現象かもしれません。
お湯を口に含んでみますと、塩辛いと表現したくなるほど明らかな塩味があり、弱い金気も伴い、内湯浴室に漂っていたようなアブラ臭もはっきりと嗅ぎとれました。そして食塩泉らしいツルスベの滑らかな浴感が得られました。濁り方や色、湯の華の現れ方、味、そして匂いなど、山形県朝日町の「りんご温泉」を彷彿とさせるのですが、「りんご温泉」もこのニセコ東山温泉(ニセコヒルトン)も、おそらくはグリーンタフ型の温泉なのでしょう。北陸〜東北〜北海道にかけての日本海側にはグリーンタフ(緑色凝灰岩)が地中に帯状に分布しており、これに伴って黒鉱・石油・天然ガス・温泉などの鉱物資源も点在しています。グリーンタフ型の温泉に関しては、しょっぱい黄土色の濁り湯だったり、アブラ臭のお湯だったり、無色透明の硫酸塩泉だったりと、場所によって現れ方が異なりますが、山形県朝日町やニセコ東山の地下には地質的特徴に何らかの共通点があって、似たような知覚的特徴の温泉が湧出するのかもしれません(とっても大雑把な推論なので、間違っていたらゴメンナサイ)。

細かな能書きはともかく、ロケーションといい、細かいところに手が届く造りといい、お湯の質といい、全てにおいてマーベラスな温泉浴場でした。料金とお湯の良さは反比例することが多いのですが、こちらはその公式を見事に覆してくれました。こちらを訪れる外国人旅行者の方々は、きっと日本の温泉の良さを満喫してくださることでしょう。


ニセコビレッジ源泉
ナトリウム-塩化物温泉 72.1℃ pH6.8 419L/min(動力揚湯) 溶存物質7.245g/kg 成分総計7.413g/kg
Na+:2037mg(81.21mval%), Mg++:99.0mg(7.47mval%), Ca++:148.2mg(6.78mval%), Fe++:5.6mg,
Cl-:3403mg(84.05mval%), SO4--:161.2mg, HCO3-:902.2mg(12.95mval%),
H2SiO3:268.2mg, HBO2:42.6mg, CO2:168.2mg,
(平成20年5月26日)
湯張り時のみ加水実施(源泉の温度が高いため)
加温循環ろ過なし

北海道虻田郡ニセコ町東山温泉  地図
0136-44-1111
ホームページ

日帰り入浴13:00〜21:00 通年営業
1,000円(ニセコ湯めぐりパス利用可能)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする