前回記事の秋田県から矢立峠の県境を越えて、青森県へとやってまいりました。今回取り上げますのは、平川市の旧碇ヶ関村古懸地区にある「古懸コミュニティ浴場 」です。文字通り古懸地区の中心部に位置しており、入浴を通じた地元住民の交流を目的としている施設ですが、私のような他県からの外来者も利用することができます。
下足場に設置された券売機で料金を支払い、内部の番台にいるおじちゃんに券を渡して浴室へと向かいます。番台がある建物中央部のホールには休憩用の応接セットが置かれている他、その奥には座敷もあり、風呂上がりにゆっくり寛げる空間が確保されていました。実際に私が訪れた時には、このお座敷でお婆ちゃん達が談笑に花を咲かせており、施設名の通りコミュニティの場として立派に機能しているようでした。
浴室は実用的なタイル張りで、中小規模の銭湯といったその佇まいから温泉風情は感じられません。室内の中央に浴槽が据えられ、その左右両側に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付きカランが計13基取り付けられているのですが、その中の数基は故障しており、実際に使えるのは10基未満でした。
浴槽は中央に据えられたひとつのみで、目測で2m×4mの長方形。10人は同時に入れそうな容量があります。浴槽の手前半分では泡風呂が稼働しており、この手の設備があまり好みでない私にとってはちょっと騒々しかったのですが、このお風呂を愛するお年寄りのみなさんにとっては、きっと欠かせない必須設備なのでしょう。
窓側にある木組みの湯口よりお湯が注がれており、浴槽縁から洗い場へ静々と溢れ出ていました。放流式の湯使いかと思われるのですが、浴槽の大きさに対して投入量が少ないように思われます。番台の奥に掲示されていたホワイトボードには、2ヶ月前の記録として53リットル(もしくは58リットル)と書かれていたのですが、この数値が毎分の温泉湧出量だとすると、入浴施設の源泉としては決して多い量ではありません。
お湯は無色透明で僅かに塩味と重曹のしわざと思しきほろ苦みが感じられます。浴室内には弱いながらも消毒臭と思しき臭いが漂っていたのですが、おそらくこの浴場では塩素系薬剤による消毒が行われているのでしょう。味や匂いの面ではこれといった特徴は得られないのですが、含重曹食塩泉を名乗っているだけあって、その泉質らしいツルスベ浴感はしっかりと感じられ、少々のトロミもあり、入浴後の肌はしっとり滑らかになりました。
風呂上がりに番台のおじさんとお喋りしたのですが、曰くここの源泉は建物裏10メートル先にあり、650mボーリングして掘り当てたんだそうです。また、私が訪れたのは2015年秋の夕方4時頃でしたが、当地はちょうどリンゴの収穫で大忙しの時期であり、そのシーズンに限ってこのお風呂は遅い時間ほど混む傾向にあるんだそうです。一般的に地方の公衆浴場は夕方から夕食前の時間帯が最も混む傾向にありますが、所変われば品変わるで、そうした一般論を覆すお風呂もあるんですね。おじさんとコミュニケーションすることによって、リンゴ栽培が盛んな地域の生活文化の一面を知ることができました。
古懸温泉(代替)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 47.1℃ pH未記載 溶存物質および成分総計未記載
Na+:296.1mg,
Cl-:253.4mg, HCO3-:261.8mg,
H2SiO3:100.5mg, 他のデータ不明
(平成18年1月11日)
青森県平川市古懸門前屋岸10-2 地図
0172-45-2300
12:30〜21:30 火曜定休
250円
備品類なし
私の好み:★★