※残念ながら閉館しました。
鹿児島県・新川渓谷温泉郷のひとつに属する安楽温泉は、天降川が大きくS字を描く谷に沿って小規模の湯治宿が肩を寄せ合う鄙びた温泉地。上画像の右側(川の左岸)に国道223号が川と並行しており、その道に沿って民家や湯治宿が櫛比しています。
某日にあてもなく当地へ車を走らせていたとき、なんとなく惹かれて訪ってみたのが今回取り上げる「佐藤温泉」さんです。谷沿いの狭い土地に集落が形成されている安楽温泉は活用できる土地が少なく、このためどのお宿も駐車場が狭いのが悲しいところ。この「佐藤温泉」もその典型例ですが、運よく軒下の駐車場が空いていたので、そこを利用させてもらいました。画像に写っているシルバーの軽自動車は私が借りたレンタカーです。
玄関は旅館然としておらず、むしろ完全に民家のそれ。ここで良いのかと不安を抱きながら戸を開けて「ごめんください」と立ち寄り入浴を乞うと、おばあちゃんが出てきて「上は300円、下は200円」とのこと。上下とは何のことか分からず小首を傾げていたら、下は小さな内湯、上は大浴場のことを指しているんだそうです。デッカイことは良いことだ、といいますから、今回は大浴場をチョイスし、上り框越しにおばあちゃんへ300円を支払いました。
でもせっかくなので、小さな浴場(内湯)もちょこっと拝見させてもらいました。お宿というよりもジモ専と表現したくなるこじんまりとした木造の湯屋です。いい雰囲気ではありませんか。この外観だけでも十分に興奮できます。
男女別の浴室は脱衣所と浴室が一体型となっている構造で、外観とは打って変わり、内部は床も浴槽も悉くモルタル造で、タイルなどによる装飾は無い至って地味なもの。D字のような形の浴槽は1~2人サイズで、当然ながら湯使いは掛け流し。浴槽の斜め奥にはシャワー付き混合栓が1基設けられています。
驚くべきは、こんな小さな浴室なのに打たせ湯が備えられていること。新川渓谷温泉郷の各温泉施設には、まるで当地の常識であるかのように打たせ湯がどこでも標準装備されている傾向にあるようですが、こちらもご多分に漏れず用意されていました。
湯屋の裏手にまわると大浴場の入口。その傍では籠に入ってポカポカな陽気を浴びながらニャンコがうたた寝をしていたのですが、私の気配を察知して起きてしまいました。ごめんよ。
大浴場は混浴ですので脱衣所もひとつ。三和土が狭いので靴は下足棚に収めます。湯治の客室へ上がる階段があり、その下に脱衣棚が取り付けられていました。装飾が全くない湯治宿らしい室内ですね。
浴室の戸を開けた時、思わず"Brilliant!!"と声を出してしまいました。狭い駐車場、宿とは思えない古風な民家そのものの玄関、ジモ専のような小さな湯屋、実用本位で飾り気の無い脱衣所…、そうした諸々の光景が、この宿が地味で小規模であるという印象を私に植えつけていたので、大浴場といってもせいぜい小浴場に毛が生えた程度のものだろうと勝手に想像していたのですが、まさか扉の向こうにこんな大きく立派な浴室が待っていたとは考えが及びませんでした。ビジネスホテルの「大浴場」なんて目じゃありません。これぞ「大浴場」であります。感動要素は大きさのみならず…
浴槽の真ん中から音を辺りに轟かせながらお湯を噴出させている富士山のような湯口にも心を奪われました。いや、ここは鹿児島県ですから開聞岳と表現しておくべきでしょうか。析出がコテコテに付着していながらも均整がとれているこの形状と、そこから噴き上がるお湯の量には、ここを訪れた人の誰しもが驚くのではないでしょうか。
宿のご主人曰く、湯口と源泉の間には3ヶ所ほどバルブがあり、それを全部開けると、お湯が天井まで届くほどの圧力を有しているんだそうです。しかも自噴なんですから凄いじゃありませんか。
浴槽の左側は浅い寝湯となっており、モルタルの枕の個数から判断するに3人用なのでしょう。更に浴槽奥には自分でバルブを開閉する打たせ湯が取り付けられており、試しに開けてみると、打たせ湯というより滝行みたいな強い勢いで太いパイプからお湯がドバドバ落ちてきました。山の湯口やこの打たせ湯など、このお風呂の湯量には圧倒されてしまいます。
洗い場はシャワー付混合栓が1基と湯&水の蛇口のセットが1組ずつ。桶や腰掛には温泉成分がその表面をコーティングしていました。
お湯は薄いベージュと薄い緑色を混ぜたような色に笹濁っており、口に含むと重炭酸土類泉ならではの土気+石灰味+炭酸味とほろ苦さ、そして微かな甘味が舌に伝わってきます。また塩味はありませんが薄い出汁味のような味覚があったような気がします。おこげのような香ばしい匂いと土気の香りが感じられます。トロトロのお湯でギシギシと引っかかる浴感、やや熱めの湯加減で、特に寝湯付近は熱かったようです。
湯上がりに表へ出ると、おじいさんが湯屋の屋根に大根を干していました。畑の土が硬くて先が曲がったり二又に割れちゃったものを切って切干にしているんだそうです。
昔ながらの山間の湯治宿らしい長閑な「静」的な側面に対し、そこで出会える圧倒的な湯量は宿の佇まいと対照的な「動」的な光景であり、その明確なコントラストが実に面白く、通りすがりで感じたインスピレーションに導かれてここを訪ってよかったと心から思えました。
安楽1号
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉 51.8℃ pH6.3 溶存物質1882mg/kg, 成分総計2623mg/kg
Na:206.6mg(35.55mval%), Mg:69.5mg(25.16mval%), Ca:140.3mg(30.80mval%), Cl:127.9mg(16.45mval%), HCO3:1028mg(76.80mval%), 遊離CO2:741.0mg
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田4151 地図
0995-77-2230
※残念ながら閉館しました。
日帰り入浴受付時間不明
小浴場200円
大浴場300円
備品類なし
私の好み:★★★
鹿児島県・新川渓谷温泉郷のひとつに属する安楽温泉は、天降川が大きくS字を描く谷に沿って小規模の湯治宿が肩を寄せ合う鄙びた温泉地。上画像の右側(川の左岸)に国道223号が川と並行しており、その道に沿って民家や湯治宿が櫛比しています。
某日にあてもなく当地へ車を走らせていたとき、なんとなく惹かれて訪ってみたのが今回取り上げる「佐藤温泉」さんです。谷沿いの狭い土地に集落が形成されている安楽温泉は活用できる土地が少なく、このためどのお宿も駐車場が狭いのが悲しいところ。この「佐藤温泉」もその典型例ですが、運よく軒下の駐車場が空いていたので、そこを利用させてもらいました。画像に写っているシルバーの軽自動車は私が借りたレンタカーです。
玄関は旅館然としておらず、むしろ完全に民家のそれ。ここで良いのかと不安を抱きながら戸を開けて「ごめんください」と立ち寄り入浴を乞うと、おばあちゃんが出てきて「上は300円、下は200円」とのこと。上下とは何のことか分からず小首を傾げていたら、下は小さな内湯、上は大浴場のことを指しているんだそうです。デッカイことは良いことだ、といいますから、今回は大浴場をチョイスし、上り框越しにおばあちゃんへ300円を支払いました。
でもせっかくなので、小さな浴場(内湯)もちょこっと拝見させてもらいました。お宿というよりもジモ専と表現したくなるこじんまりとした木造の湯屋です。いい雰囲気ではありませんか。この外観だけでも十分に興奮できます。
男女別の浴室は脱衣所と浴室が一体型となっている構造で、外観とは打って変わり、内部は床も浴槽も悉くモルタル造で、タイルなどによる装飾は無い至って地味なもの。D字のような形の浴槽は1~2人サイズで、当然ながら湯使いは掛け流し。浴槽の斜め奥にはシャワー付き混合栓が1基設けられています。
驚くべきは、こんな小さな浴室なのに打たせ湯が備えられていること。新川渓谷温泉郷の各温泉施設には、まるで当地の常識であるかのように打たせ湯がどこでも標準装備されている傾向にあるようですが、こちらもご多分に漏れず用意されていました。
湯屋の裏手にまわると大浴場の入口。その傍では籠に入ってポカポカな陽気を浴びながらニャンコがうたた寝をしていたのですが、私の気配を察知して起きてしまいました。ごめんよ。
大浴場は混浴ですので脱衣所もひとつ。三和土が狭いので靴は下足棚に収めます。湯治の客室へ上がる階段があり、その下に脱衣棚が取り付けられていました。装飾が全くない湯治宿らしい室内ですね。
浴室の戸を開けた時、思わず"Brilliant!!"と声を出してしまいました。狭い駐車場、宿とは思えない古風な民家そのものの玄関、ジモ専のような小さな湯屋、実用本位で飾り気の無い脱衣所…、そうした諸々の光景が、この宿が地味で小規模であるという印象を私に植えつけていたので、大浴場といってもせいぜい小浴場に毛が生えた程度のものだろうと勝手に想像していたのですが、まさか扉の向こうにこんな大きく立派な浴室が待っていたとは考えが及びませんでした。ビジネスホテルの「大浴場」なんて目じゃありません。これぞ「大浴場」であります。感動要素は大きさのみならず…
浴槽の真ん中から音を辺りに轟かせながらお湯を噴出させている富士山のような湯口にも心を奪われました。いや、ここは鹿児島県ですから開聞岳と表現しておくべきでしょうか。析出がコテコテに付着していながらも均整がとれているこの形状と、そこから噴き上がるお湯の量には、ここを訪れた人の誰しもが驚くのではないでしょうか。
宿のご主人曰く、湯口と源泉の間には3ヶ所ほどバルブがあり、それを全部開けると、お湯が天井まで届くほどの圧力を有しているんだそうです。しかも自噴なんですから凄いじゃありませんか。
浴槽の左側は浅い寝湯となっており、モルタルの枕の個数から判断するに3人用なのでしょう。更に浴槽奥には自分でバルブを開閉する打たせ湯が取り付けられており、試しに開けてみると、打たせ湯というより滝行みたいな強い勢いで太いパイプからお湯がドバドバ落ちてきました。山の湯口やこの打たせ湯など、このお風呂の湯量には圧倒されてしまいます。
洗い場はシャワー付混合栓が1基と湯&水の蛇口のセットが1組ずつ。桶や腰掛には温泉成分がその表面をコーティングしていました。
お湯は薄いベージュと薄い緑色を混ぜたような色に笹濁っており、口に含むと重炭酸土類泉ならではの土気+石灰味+炭酸味とほろ苦さ、そして微かな甘味が舌に伝わってきます。また塩味はありませんが薄い出汁味のような味覚があったような気がします。おこげのような香ばしい匂いと土気の香りが感じられます。トロトロのお湯でギシギシと引っかかる浴感、やや熱めの湯加減で、特に寝湯付近は熱かったようです。
湯上がりに表へ出ると、おじいさんが湯屋の屋根に大根を干していました。畑の土が硬くて先が曲がったり二又に割れちゃったものを切って切干にしているんだそうです。
昔ながらの山間の湯治宿らしい長閑な「静」的な側面に対し、そこで出会える圧倒的な湯量は宿の佇まいと対照的な「動」的な光景であり、その明確なコントラストが実に面白く、通りすがりで感じたインスピレーションに導かれてここを訪ってよかったと心から思えました。
安楽1号
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉 51.8℃ pH6.3 溶存物質1882mg/kg, 成分総計2623mg/kg
Na:206.6mg(35.55mval%), Mg:69.5mg(25.16mval%), Ca:140.3mg(30.80mval%), Cl:127.9mg(16.45mval%), HCO3:1028mg(76.80mval%), 遊離CO2:741.0mg
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田4151 地図
0995-77-2230
※残念ながら閉館しました。
日帰り入浴受付時間不明
小浴場200円
大浴場300円
備品類なし
私の好み:★★★